今年注目の統合報告書
2016年の主要な統合報告書もほぼ出揃いましたので、統合報告書の“人気”についてまとめます。
本記事では、グーグル検索([Yahoo!JAPAN検索]含む)で「統合報告書+会社名」と検索されるトップ企業群の企業名をピックアップしました。統合報告書を発行している、もしくはこれから発行するという企業担当者は、とりあえず紹介したすべての企業の統合報告書をダウンロードしてチェックしましょう。
google先生がこれらの企業はよく検索されてまっせ!といっているので、検索で人気ということです。総合的に評価が高い企業とは限りませんが、ほぼすべての企業は“評価が高い”と僕も良く聞く企業ではあります。
どこかの統合報告書セミナーで優良事例として紹介されたり、各業界のトップ企業だったり、アワード受賞などの結果、PDFのダウンロードをするために、社名でウェブ検索をしていると予想されます。そうでないと「統合報告書+事例」みたいな検索ワードになるからです。
(調査:2016年11月22日)
今注目の統合報告書46社
味の素
ANA
アイシン
伊藤忠
エーザイ
オムロン
川崎重工業
キリン
サトー
資生堂
住友商事
ソニー
ソフトバンク
武田薬品
中部電力
中外製薬
トヨタ
TOTO
東芝
日本郵船
ニチコン
ネスレ
NEC
ノボノルディスク
日立製作所
ファミリーマート
富士通
HOYA
堀場製作所
三菱商事
みずほ
三井住友
三菱重工
三井物産
三菱ケミカル
村田製作所
ワコール
ローソン
リコー
BASF
第一三共
JT
キリン
パナソニック
LIXIL
JAL
統合報告書のデメリットと弱点
ちなみに『統合報告の現在地とは!? 宝印刷「統合報告書発行企業調査」(2016)』という記事でも書いたのですが、宝印刷の調査によれば、2016年は300社近くの企業がいわゆる統合報告書を発行しているらしいので、これらの企業はその300社の中の“評価が高い企業”たちでしょう。
ただご注意いただいたいですが、検索で人気なだけで、専門家の評価が必ずしも高くなかったり、そもそも統合報告書を発行していなかったりします。
この中でもさらに注目の企業はどこですか?なんて言われそうですけど、過去も含めて評価の高い企業を伝えたところで、それなりに予算と時間をかけて作っているし、ほとんどの企業の場合は真似できませんよ。「あの会社だからできるんだよね。ウチでは…」ってなるから逆に聞かない方が精神衛生上よかったりします。
今年、僕が気になったのは「ポジション」ですね。統合報告書を発行している企業はアニュアルレポートやCSR報告書を廃止しているところもあり、ステークホルダー・コミュニケーションおよびエンゲージメントの“訴求力の低下”が落ちている可能性を危惧しています。
上場企業が投資サイドからのプレッシャーに負けて統合報告書に情報を寄せすぎると、CSR関連情報を求めている、それ以外のステークホルダーの「CSR/ESG情報難民」が生まれる危険性があるんですよ。CSR関連情報がまとまってどこに書いてあるかわからなくっちゃう、という。こうなると、投資家以外、誰も幸せになれないメディア展開となります。どうすればいいんでしょうか。
というわけで、以下に関連記事をリンクしておきますので興味がある方はチェックしてみてください。
関連記事
・統合報告書/IIRCに関する意識調査2事例(2016)
・CSR報告書/統合報告書のスイッチングコストの妥当性
・統合報告書アワード受賞企業19社(2016)
・日本企業トップクラスの統合報告書30事例(2016)
・統合思考も進んできている!? 環境省「第19回環境コミュニケーション大賞」(2016)
まとめ
CSR報告書でも統合報告書でもいいですけど、ステークホルダーのリアクションが引き出せるならなんでもいいっす。
先日『専門家の評価が高いCSR報告書は“良い報告書”なのか』という記事でも書きましたが、上記の企業の多くは、専門家や評価機関に評価の高い企業のレポートですよね。
もちろん、BtoB企業とBtoC企業の統合報告書は表現が異なって当然です。でもね、統合報告書を発行しているからCSR報告書を発行しないという企業が多くなると、ステークホルダーの数が圧倒的に多いBtoC企業はそれでいいのか、と。
統合報告書のメディア・ポジションが投資家に寄りすぎると、比較的マルチステークホルダーだったCSR報告書の役割をカバーできなくなります。消費者も取引先もNPOも従業員もみんなが統合報告書で情報ニーズを満たせると思わないほうがいいです。
さて、統合報告書の評価“も”高く、ステークホルダー全般の評価“も”高い企業はこの中にあるのでしょうか!?乞うご期待!