統合報告書

統合報告書発行企業調査

先日、ESG投資と統合報告書に関するセミナーに参加してきましたのでまとめます。

統合報告書発行企業調査2016レポート(中間発表版、PDF、株式会社ディスクロージャー&IR総合研究所) 

2010年にISO26000の発行で世界のCSRの共通概念が確立され、以降さまざまなガイドラインやイニシアティブが勃興し、世界の勢力図が大きく変化している昨今です。そんな中、CSRコミュニケーションの起点となるべく、統合報告書が注目されています。で、当たり前ですが、僕も非常に興味がありセミナーに参加させていただきました。

今回のセミナーは、ESG投資を含めた統合思考の話と、統合報告書の調査データ発表がメインでした。有料のセミナーだったので詳細の解説については(できる限り)控えますが、いくつかポイントだけまとめておきます。

発行企業数

宝印刷の調べによると2016年末時点での発行社数は約320社と1年前より4割強増える見通しだ。社会貢献や企業統治などを重視する「ESG投資」が欧州やアジアで広がり、海外投資家を意識して9割の企業が英語版も発行する。
統合報告書、発行企業4割増 宝印刷調べ 9割が英語版も

日経新聞も取材で来てたんですね。確かにこんなような話でした。ある程度の規模の上場企業は海外を意識した開示戦略にシフトしている、ということでしょうか。

あと講演では統合報告書はどこまで発行企業数が伸びるか、という話もありました。これは僕の感覚値とほぼ同じでしたので、満足です。細かい数字は言えませんが、CSR報告書を発行している企業のすべてが統合報告にリプレースするわけでありませんし、上場会社なのにそもそもCSR/ESGに全く興味がない(情報収集ばかりで行動しない)企業もいるので、500〜600社くらいいったん頭打ちになるでしょうね 。

ボリューム

あとは法定開示書類関係でも非財務情報領域の開示が進んでいる、という話もありました。統合報告書のページ数調査もあり、40〜80ページがボリュームゾーンだったようです。

持論としては、IIRCの「簡潔性の原則」も考慮して、ページ数は40ページ以下でもいいと思ってます。特に深い理由はありません。ただでさえ“斜め読み”のメディアなので、内容を濃くダイジェストでいいでしょう。

来年度はぜひ、想定する主要読者に聞いてみてください。冊子のボリュームは適切ですか?って。きっと100ページ以上が適切です!っていう人は少数派だと思うぞ。(ただ読むのが疲れるからページ数は少なくしてほしい、だいたいの人はそこまでのボリュームを求めてないと思うぞ!と感じているのは内緒の話)

CSRでも統合でもステークホルダーエンゲージメントの基本は「ステークホルダー・ファースト」(利害関係者至上主義)です。ステークホルダーの視点が見えなくなった時点で負けですから。

報告書の予算感

あと、面白いデータが紹介されていたのですが、「IR活動の実態調査」(日本IR協議会、2016)で、「アニュアルレポート・統合報告書の作成に1年間でかけている費用」という項目があるそうで、「500〜1,000万円」(29.9%)「1,000〜2,000万円」(19.4%)「300〜500万円」(14.2%)という回答があったとのこと。

アニュアルレポートはわかりませんが、統合報告書では300〜1,000万円がボリュームゾーンかとおもいきや、「300〜500万円」より「1,000〜2,000万円」の割合のほうが多いという…まじかよ…。国内の1兆円を超える売り上げの大企業ともなれば「1,000万円でできるんですね、安くていいですね」という発言をする担当者の方がいるのは知ってますが…合掌。

大企業の方って、実は関連会社に発注してたりして相場を知らない人も多いんですよね。まぁ、予算があれば使えばいいですけど。風の噂では、毎年CSR報告書/統合報告書の制作費用を値切りまくる企業もあるようで、価格勝負のコンペには参加したくないでやんす。僕ではもう勝てません。あ、最近は、そもそも制作コンペにはほとんど参加してなかったや。

まとめ

まとめると「統合報告に固執しすぎない統合報告書」が、今後は求められるということなのかもしれません。

2017年こそは、日本が“ESG投資元年”となり方々で実務的な動きがでると複数の関係者筋が聞いていますので、CSR支援をさせていただいている僕にもやっと追い風な流れがきたのかと、ほくそえんでいる今日のこの頃です。(もちろん、知識を磨き日々精進し、支援先企業の企業価値最大化に向けて邁進する所存です)

関連記事
統合報告書/IIRCに関する意識調査2事例(2016)
CSR報告書/統合報告書のスイッチングコストの妥当性
統合報告書アワード受賞企業19社(2016)
統合思考も進んできている!? 環境省「第19回環境コミュニケーション大賞」(2016)
日本企業トップクラスの統合報告書30事例(2016)