コーズマーケティング

コーズマーケティングの課題と問題点

日本でいうコーズ・マーケティング(コーズリレーテッドマーケティング)とは、「寄付付き商品の販売・キャンペーン」のことを指す例が多いですが、世界的には、文字通りのコーズ(大義)を果たすためのマーケティングという意味で使われることが多いようです。

コーズマーケティングの概念は数年前より確実に広がっていると思われますが、まだまだ課題と問題点はあります。ただし、インパクトとアウトカムが出せないというかと、決してそうでもないと思っています。

本記事は、コーズマーケティングの事例と有用性を、社会貢献関連の意識調査をふまえながらまとめます。

コーズマーケティングの意識調査

ある調査では、シニア層へのコーズマーケティングの有用性は4割、「社会のためになる活動をしている企業の商品・サービスを購入したい」に対して46%がそう思うと回答、「米国人は安全かつ持続可能な形で生産された食料品に対して31%多くを支払ってもよい」というデータ、などなど。

日本を含めた世界中の一定の層で、コーズマーケティングに反応する人たちがいます。だから、決してコーズマーケティングがマーケティング・コンセプトとして限界であるというわけではないと思うのです。でもうまくいっていない(失敗している?)日本企業は多い。なぜなのでしょうか。僕は課題として「価格差」と「内製化」があると考えています。

以下のCSR・社会貢献全般の意識調査まとめ記事も参考にどうぞ。

企業のCSRと社会貢献に関する意識調査5データ
CSR調達と46%の倫理的購入を望むエシカル消費者たち
消費者意識調査とISO26000/消費者課題からみるCSRの現状
日本人はどんどん利他的になっている? 「日本人の国民性調査2014」
CSR・社会貢献領域の世論・意識調査4選

コーズ訴求は価格差をこえられるのか

日本でそこまでコーズと目的に対して議論や論理の棲み分けが行なわれているかと言うと、まだまだな気がします。

あと、これは日本でもそうなのですが、「価格」以上の訴求力をコーズが持てていないのでは?という点。例えば、130円のコーズマーケティング商品のミネラルウォーターと、90円のプライベートブランドのミネラルウォーターがコンビニで並んで売っていた時、あなたはどちらを選びますか?という話です。

もちろん、コンビニのPRポップがそもそもコーズを訴求していないなど、パッケージを含めて、そもそも消費者に伝わっていないというのもあるでしょう。でも多くの場合、ほぼ同じ中身なのであれば、1.5倍近くするものより安いほうを買いませんか?

僕は、コーズや目的を売り場で全てを訴求することはできないと思っており、何か別の仕掛けが必要なのではと考えています。

最近のCSV的なコンセプトでいえば、売上の一部をチャリティにまわすより商品の製造過程(業務プロセス)そのものが、そもそも社会性が高いものであるという「富の再配分」ではなく「事業プロセスの社会化」のほうが社会的なインパクトが大きいのかな、と。

コーズを内製化する

ユニクロはこうした課題の解決に貢献する目的で、本コレクションの収益の一部を活用し「Factory Worker Empowerment Project」を始動。途上国での女性の教育支援に実績のある国際NPOのBSRが提供するプログラムを通して、自社の取引先縫製工場で働く女性を対象に、基本的な栄養学や妊娠・出産時のケアを含む衛生・健康管理、家計管理などのライフスキル習得を促進し、ユニクロの品質を支える人たちの未来を持続的に支援することを目指します。本プロジェクトは、約2万人の働く女性を支援します。
バングラデシュの伝統衣装をモチーフにしたウィメンズ・コレクションを4月20日から全世界の旗艦店・オンラインストアで限定発〜収益の一部をバングラデシュ縫製産業で働く女性の教育支援に活用

ファーストリテイリングの取組みを紹介したいのですが、昨日からスタートしたコーズマーケティングはただの寄付ではないようです。まだスタートしたばかりで今後どういう展開なのかは存じ上げませんが、「Factory Worker Empowerment Project」というプロジェクトを立ち上げ、約2万人の女性支援を行なうとの事。

僕はここにヒントがあると思っていまして、売上を現地のNPOに寄付するというだけではなく、CSR調達およびサプライチェーンマネジメントとして、ビジネスパートナーである取引先の福利厚生的な支援に充てる、という点です。

企業とは全く別のレイヤーであるNPOに寄付をしても、単発的で一方的な支援になってしまう可能性が高いのですが、サプライヤーの企業価値向上を支援するということで、自社にとっても大きなメリットがあります。

サプライヤーに品質と低価格を押し付けるのではなく、一緒にがんばりましょうよ、とする姿勢はまさに理想的なCSR調達です。iPhoneのApple社も、チャリティではないですけど、こういった取組みをしていますよね。この形はどんどん広がって欲しいなぁ。

まとめ

日本のコーズマーケティングも、そろそろ次の段階に進むべき時なのかもしれません。

今のコーズマーケティングの形を否定するつもりではありませんが、キャンペーンという形で行なうのではなく、永続的な取組みとして実施し、どんどん社会的なインパクトを出していくべきだと思っています。

今、コーズマーケティングをまさに企画中という企業の方は、ぜひ「サプライチェーンマネジメント」という概念を意識しながら設計すると、よりよいものになるでしょう。何かのヒントになれば幸いです。

関連記事
コーズマーケティングはソーシャルビジネスであるべき3つの理由
CSRコンサルタントが選ぶ、CSR・コーズマーケティング事例の良記事10選
善意に頼りすぎないコーズマーケティング2事例