CSR調達と消費者意識調査

世の中のビジネスには、地域コミュニティを破壊するものと、育むものがあります。

今回はCSR調達の世界の現状と、日本の消費者意識調査の話をまとめます。

結論から言いますと、今こそ企業はCSR調達に取り組むべきで、消費者の何割かもそれを望んでいる、ということです。CSRの成功例・失敗例はここで差がつく、と言っても過言ではありません。

しかもCSR調達は「攻めのCSR・守りのCSR」両面に作用する、とても重要な概念です。以下で詳細を書きますので、しっかり予習・復習をして下さい。

消費者意識調査

「多少高くても、社会のためになる活動をしている企業の商品・サービスを購入したい」という問いには、46.1%が「そう思う」に回答。一方、53.9%が「そう思わない」と回答している。「“社会のためになる企業の利益に繋がる購買”を優先したい」という20代は2人に1人の割合で、「エシカル(倫理的)な消費スタイルの20代も珍しくない」としている。
20代の9割は商品の購入検討時に最安値をチェックする、SMBCコンシューマーファイナンス調査

消費者も企業のCSR調達推進を望んでいます。少なくない人たちが、エシカル購入・倫理的購入・グリーン購入を望んでいるのですから。

先日「消費者意識調査とISO26000/消費者課題からみるCSRの現状」という記事も書きましたが、消費者庁「消費者意識基本調査」でも、商品・サービスを選ぶ時に、「経営方針や理念、社会貢献活動」を意識するという回答を「常に意識する(3.8%)」、「よく意識する(14.6%)」という割合でしていると、レポートしています。

商品・サービスの品質以前に「企業姿勢」が消費者の購買活動に大きな影響を及ぼす様子がうかがえます。つまり、CSRを積極的にしていない企業は、商品がどんなによくても一部(といっても半分くらい)の顧客は買わないという選択をする可能性が高い、と。

世の中には、こういったエシカル消費・倫理的購入の考えを持つ人が何割かいて、なおかつ、国際的なNGOも消費者の気運をあおってグローバル企業のサプライチェーンマネジメントの不備を叩くようになってきています。

まさに、CSR調達はCSRの「機会とリスク」の両方にアプローチする、非常に重要な概念であるとも言えるでしょう。社会的なインパクトもない、よくわからない社会貢献活動はやめて、自社利益・社会利益に投資しましょう。

AppleとユニクロのCSR調達事例

この取材を行うために、BBCは記者をAppleが部品や原材料を調達している企業の工場に潜入させた。中国の部品工場で働いた記者の一人は、休暇を繰り返し訴えたにもかかわらず、18日間連続で働かなければならなかったという。
また、別の記者は最長では1日に16時間働く日もあったと話した。この記者は「いったん寮に戻ると、もう何もしたくなくなった。いくら空腹でも、食べるために起き上がるのが嫌だった。少しでも横になって休みたい。ただそれだけだった。ストレスで、夜は眠れなくなってしまった」と、述べた。
iPhoneのサプライヤーでは子供たちが働いていた Appleの言い分は

記事では、Appleがその一部を認めてみます。サプライチェーンが複雑で、サプライヤーのすべての事業活動を監視できていない、と。もちろん、それも事実ではありますが、だからこそ、調達先のCSR推進状況をチェックできるような仕組みを構築すべきなのでしょう。

残念なことであるが、今回のSACOMによる上記2工場の調査の結果、中国の生産拠点に関して、労働法規への違反が確認され、労働者の権利が深刻に侵害され、安全対策の十分でない劣悪な環境下で労働者が過酷な労働を強いられている状況が確認された。
ユニクロ: 潜入調査で明らかになった中国・下請け工場の過酷な労働環境

こちらの記事はユニクロの事例。Appleと同様に、報道の一部を認めており、今後改善に動くとのこと。アジアは“世界の工場”と呼ばれ、労働問題の多発エリアでもあります。今後の対応に注目が集まります。

サプライヤーに対するCSR調達にかなり気を使っているであろう、世界的な企業の事例。CSRのサプライチェーンマネジメントの不足による不祥事とも言えるかもしれません。CSR調達というと、紛争鉱物を使っていないとか、素材がどうとか、というのもありますが、それらはもちろんのこと、最近は人権・労働慣行の領域の話題が多いように思います。

まとめ

CSR調達活動のガイドライン(チェックシート)を決めてアンケート(調査票配布)しますね、ではダメということでしょう。CSR調達はまさにCSRのリスクマネジメントの要訣であり、CSR調達の意味・意義を考慮し、まっさきに取り組むべき課題でもあります。

CSR調達の基本方針・指針を作って社内外に配布したところで、関わるすべての事業活動の基準が満たされるというわけではありません。CSR調達推進が机上の空論にならぬよう、今一度、現状把握とその必要性を再認識すべきです。

CSR調達の問題はメーカーだけの話ではありません、IT企業でも、医療系でも何でも同じことが言えます。サプライヤーの労働違反は自社の責任でもありますし、ISO26000でも人権・労働に関する項目は非常に多いので、しっかりと対応したい領域です。

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