消費者意識調査とISO26000の消費者課題
CSRにおける課題とは、必ずしも企業側だけの問題とは限りません。
今回はCSRの国際規格でもあるISO26000にもある「消費者課題」についてまとめます。いくつか消費者動向(消費者意識調査)を振り返りながら、CSRにおけるステークホルダーとの関わり方を考察してみましょう。
僕が思うに、CSRにおける消費者課題って「CSRの機会・リスク」、「攻めのCSR・守りのCSR」といった分け方でいえば、実は両方に入るのかなと。
消費者課題は通常はリスク項目なのかもしれませんが、逆にリスクを適切に解決できれば、ビジネスチャンス(機会・攻めのCSR)にもなりうるのではないでしょうか。ただし、ちまたにある「守りのCSRから攻めのCSRへ」は流石におかしいかなと。「CSRからCSVへ」理論と同じで、本来はどちらが欠けてもよろしくないわけですよね。
世界では消費者は企業とどう関わっているのでしょうか?
ブランドとCSRと消費者
消費者の新たなニーズ「ソサエタル・ニーズ」の出現
上記に加え、本調査結果により、消費者の新たなニーズとしてソサエタル・ニーズがあることが分かりました。ソサエタル・ニーズとは、単なるCSRの領域を超えたものです。ブランドは社会的使命をまっとうする信念を消費者とシェアしなければなりません。このソサエタル・ニーズを満たすことで、消費者が個人情報やブランドのコンテンツをシェアする可能性が高まることが明らかになっています。
世界の消費者の9割がブランドとの関係に満足していない
他にも『消費者の78%が、ブランドが「消費者の懸念や不満に迅速に対応する」ことは重要であると考えている』という結果もあり、企業(ブランド)のCSR情報開示の姿勢が求められていると言えます。
まぁ、社会的意義“も”ある企業と、そうでない企業と、ほぼ同じ商品なのであれば、社会性の高い企業の商品を買いますよね。「あなたは社会貢献に賛成ですか?反対ですか?」って聞いて、反対する人は基本いません。社会が良くなれば、あなたも幸せの恩恵を受けられるんですからってね。
消費者意識基本調査2014|消費者庁
2014年1月調査の『消費者意識基本調査』(消費者庁)によれば、商品・サービスを選ぶ時に59.4%が「経営方針や理念、社会貢献活動」を意識するという回答をしています。
中でも「常に意識する(3.8%)」、「よく意識する(14.6%)」という、エシカル消費的な消費概念をもつ人が18.4%もいるという事実。僕のなかでは10%くらいが社会的な指標を購買活動に持っていると思っていたので、日本でこのレベルは結構驚きでした。
6割近くが商品・サービスそのものではなく、運営・販売する企業姿勢を評価するということは、CSR関係者は特に知っておくべきでしょう。商品・サービスの前にその会社って信頼できるか?が問われるとなると、まさにCSR視点による企業評価とも言えます。BtoC企業は特に注意です。
ISO26000における消費者課題
で、消費者がCSRを意識するのと同時に、企業側もより消費者を意識するようにISO26000では求められています。
該当項目の「消費者課題」というのはISO26000の7つの中核主題の一つでもあり、CSR活動の指針ともなる項目です。ISO26000では以下の7つの課題があげられています。
1、公正なマーケティング、事実に即した偏りのない情報、および公正な契約慣行
2、消費者の安全衛生の保護
3、持続可能な消費
4、消費者に対するサービス、支援、ならびに苦情および紛争の解決
5、消費者データ保護およびプライバシー
6、必要不可欠なサービスへのアクセス
7、教育および意識向上
倫理観をもって販売活動をしましょう、ということなのですが7つ目の「教育および意識向上」は、事業活動ではなく、消費者教育というフィランソロピー的なイメージのものもあります。適切な商品・サービスの情報開示が基本になると思いますが、実際はちゃんとCSR活動の設計しないと、なんとなくで終わってしまう気もします。
CSR報告書や統合報告でもISO26000対照表を使っている企業も多いので、CSRにおける消費者課題まわりの情報も、きちんとチェックしておきましょう。
まとめ
消費者は事業活動のプロセスまで含めて、企業の商品・サービスを選んでいます。
CSRにおけるマーケティングなどは、プロセスではなくプロダクトを中心に考えがちですが、消費者の視点でいくと、CSR活動が差別化になるのではなく、購買基準の土俵にあがるためのもである、ということ。差別化はそこからさらに一歩先の話です。
マーケティングにおけるCSR活動とは、差別化戦略ではなく、もはや「やって当たり前」の時代に突入しているのかもしれません。
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