コーズマーケティングの効果と可能性
最近、コーズマーケティングについて思う所があったのでまとめます。
よく受ける質問は「コーズマーケティングしたいんですけど、どうしたらいいんですか?」というもの。どうしたらって言われても、答えようがないのですが、最近は「ソーシャルビジネスとして考えればいいんじゃないですか?」と言っています。特にコーズマーケティングで差別化を狙う人たちには。
コーズマーケティングは一時期、社会/NPO/企業がハッピーになれる完璧なマーケティングと思っていたのですが、最近はコーズマーケティングの問題点・課題・失敗例などが浮き彫りになってきています。
3つの理由にまとめましたので、参考になれば幸いです。
ソーシャルビジネスであるべき3つの理由
1、インパクトが小さい
売上の一部を寄付する。これ自体は素晴らしいのですが、コーズマーケティングの問題点・課題として「金額が小さい」というのがあります。
ほぼすべての企業は期間を決めており、単発の企画モノだから集まる金額がそもそも少ないという側面もあるのですが。キャンペーンでしかコーズマーケティングをしないというのは、社会的インパクトの視点からみるとナンセンスです。
また毎年やっているという企業もありますが、実は1年の中で数ヶ月間だけとか、なんか釈然としません。「記号消費」っていうらしいですが、なんとなく事業活動に社会貢献的なラベルを貼っただけで、事業の社会性が高まるわけでも、社会問題の解決にほとんどつながらないですからね。
理想は、その商品・サービスを売れば売るほど社会課題解決につながるビジネスモデルを作れることなんですけどね。
2、マーケティングではない
コーズマーケティングって、そもそもマーケティングなんですかね?という点も挙げられます。
もちろん、コーズマーケティングの可能性・効果を否定するつもりはありませんが、通常のマーケティング活動のほうが売上に貢献できるのが明確ですよね。
これって戦略的に差別化できるほどのものでもないですよね。消費者としては、なんとなくそのコーズブランド、コーズプロダクトを買うより、商品分の金額をそのままNPOに寄付したほうが多くの金額が社会に流れるじゃないですか。その会社が“中抜き”するより、理論上、社会的インパクトから見れば「商品は買わないで、その分を寄付したほうがいい」なんて結果になります。
インパクトという点ではさらに、やってみた人たちはわかったと思います。コーズマーケティングの「マーケティング効果」がなかったって。欧米と違い文化が違うからで片付けられないのですが…。
3、目的がない
ミッション・オリエンテッドではない点もあります。
本来、何かの社会課題解決に貢献するぞ!という所からビジネスがスタートするのが理想だと思うのですが、場当たり的というか、ほとんどの場合、どこかのNPOや公共団体に寄付して終わりです。NPOに寄付するのが目的みたいな。なんかソーシャルグッドなことしちゃう?みたいな。
ただ、最初から社会貢献のために立ち上げたようなパタゴニアみたいな会社のほうが全体からすれば少ないというのはあります。僕も独立当初はCSRとか社会貢献とか一切関係ないビジネスしてましたから。
そういう意味では、ヤマトホールディングス「宅配便一個で10円の寄付」などのコーズマーケティング事例はミッション・オリエンテッドと言えるかもしれません。トップがどこまでコーズマーケティングにコミットメントしているかもポイントなのかもしれません。
マーケティングからビジネスそのものへ
せっかくするなら、売上の一部が社会貢献につながるのではなく、売上がすべてが社会課題解決に貢献する、という形がいいですよね。
つまり、コーズマーケティングのソーシャルビジネス化が、社会的インパクトを考えた時に一番良い形だと思うのです。
例えば、1,000円の商品を10万個売って1億円、1%寄付するとたった100万円…。でも売上1億円がそもそも地域貢献や貧困解決などに貢献するとなれば、利益率も確保できるし社会の課題解決に貢献することもできる。
また、ソーシャルビジネス的にいえば、収益の多くは事業に再投資し、株主などには分配されません。ですので更に売り上げを含めた社会的なインパクトが拡大する、と。
他の方法論でいえば、例えば、コーズマーケティングで稼いだ寄付分の1,000万円を東北のNPOに寄付するのではなく、1,000万円を使って、東北でスモールビジネスを始めるとか。
1,000万円を寄付したら、1,000万円分のインパクトしか出せませんが、1,000万円をソーシャルビジネスに再投資・運用すれば、5年で100倍の10億円の経済効果を生むことだって全然不可能じゃないわけです。
このポイントは結構基本的なことで「短期キャンペーン → 期限のないビジネス」、「CSR部主導 → 全社的な取組み」、「トップマネジメントの理解と推進」ということでしょうね。
仕組みとしてイメージ(成功事例)に比較的近いのはトヨタ「アクア・ソーシャル・フェス」ですかね。売上の一部を寄付ではなく、全体のプロモーションをマーケティングキャンペーンとして行なう、と。そうすることで、システマテックにビジネスとしてまわっていく。この事例は有名なので、ここでの詳細は割愛します。
既存サービスの販促ではなく、新規ビジネスとして考えるくらいの姿勢があれば、本当に社会を変えられる強さを持つ仕組みではあると思います。
ちなみに、寄付そのものがダメということを言いたいのではありません。社会的なインパクトを考えれば、もっとビジネスライクに考えた方がいいんじゃないの?という話です。
まとめ
社会的インパクト最大化を目指した「社会に意義のあるマーケティング」を目指しましょう。
こういった背景もあり、コーズマーケティグの相談をされた時は、単発の企画モノではなく、長期視点のソーシャルビジネス化させるならいいんじゃないですか、みたいなことをアドバイスしています。結果、企画倒れになるので、僕の仕事はなくなるのですが(苦笑)
あなたが今年にコーズマーケティングを企画しているのであれば、今一度、「インプット→アウトプット→アウトカム→インパクト」という成果プロセスを見直しましょう。コーズマーケティングを、共感マーケティング・共創マーケティングという場合もありますが、あくまでもマーケティング効果があってのことですから。
1プログラムでも多く、社会的に意味・意義のあるコーズマーケティグが増えるよう、願ってやみません。
関連記事
・CSRコンサルタントが選ぶ、CSR・コーズマーケティング事例の良記事10選
・AppleのCSR! 世界エイズデーのコーズマーケティング事例
・善意に頼りすぎないコーズマーケティング2事例
・海外のCSR・コーズマーケティング事例集本「グッドワークス!」
・コーズマーケティング成功事例は価格ギャップをなくすこと?