サステナビリティ・ブランディング

サステナブルブランドの未来

あなたは、サステナビリティ界隈で定期的に話題になる「サステナビリティ・ブランディング(サステナブル・ブランディング)」を知っていますか?

2000年代から2010年代前半では、類義語で「エコ・ブランディング」「CSRブランディング」などとも言われてましたが、基本的な考え方は同じでサステナビリティでブランディングしましょう、というのが主旨です。

上場企業は特にサステナビリティ推進における財務インパクトの説明が求められているわけですが、将来的な財務インパクトが期待できる無形資産ということでブランド(企業および商品)という側面も考慮されていいと思うのです。

というわけで、最近気づいたサステナビリティとブランディングの話を、公開メモ帳的にまとめておきます。

サステナブル ブランズ インデックス

サステナビリティ・ブランディング

JSBI(Japan Sustainable Brands Index)は、消費者視点による企業のサステナビリティ・イメージランキングです。いわゆるESG企業評価では通常上位にこない企業もランクインしています。あくまでも消費者調査なので、ブランドで見るとこんな感じなのかなという顔ぶれになっています。

出所:サステナブル・ブランド ジャパン(2023)「JSBI 2022 Report(速報版)」

ブランドの定義

サステナビリティと同じく「ブランド」は定義が難しいです。おそらく、サステナビリティ関係者だけではなく大多数のビジネスパーソンは、ブランドをすぐには説明できないと思います。もちろん、すぐに説明できる方もいるにはいますが、100人いたら100人違う説明になると思われます。ですので、多くの企業がサステナビリティ・ブランディングをしたくてもほとんどできないのはこの「ブランドを定義しきれない」という問題もあります。

サステナビリティ推進の現場では、しばしばブランディングという言葉が飛び交います。「サステナビリティサイトの目的はブランディングです」「サステナビリティ系の広告成果はブランディングです」などのフレーズを耳にしたことがある人も多いでしょう。しかし多くの場面でブランディングという言葉は曖昧な意味のまま使われ、時にはビジネスに貢献しない仕事を正当化する言い訳にされます。残念ながら、サステナビリティもブランディングも、ビジネス・インパクト(アウトカム)を語らずに言い訳として使われる現実もあります。

ですので「サステナビリティ・ブランディング」という表現を使う人に「定義は何ですか?」「その影響は数値化できますか?」「どんなビジネスインパクトがありますか?」「費用対効果は適切ですか?」などと質問すれば、その場が凍りつくでしょう。(議論を進める上で重要な確認ではあります)

ブランディングが活動目的なら、サステナビリティ推進よりも通常のブランド推進のほうが成果につながります。マーケティングやセールスも同じで、サステナビリティ推進でマーケティング成果を出すよりも、通常のマーケティングを行った方が、直接的で高い成果が期待できます。ですので、目的と成果を明確にすることはとても重要です。

もちろんサステナビリティのブランディング効果は否定しないし、ポジティブな影響を定量評価することもできなくはない。しかし、どこまでいってもサステナビリティ推進の本来の目的はブランディングではなく、文字通り企業として社会的責任を果たしてステークホルダーに貢献することです

サステナブルブランドの歴史

昔は「サステナビリティ推進でブランディングを!」というのはよくあったんですよ。2011年のマーケルポーター教授らのマーケティング色が強い「CSV(共有価値創造)」が登場する前の2000年代後半では、サステナビリティの事業成果を説明することができず(そもそも慈善活動が多かった)、その成果のひとつをブランディングとしていた時代があったのです。2020年代になって、さすがにサステナビリティ推進の目的としてブランディングを掲げている企業は皆無になりましたが。

「サステナビリティ推進でブランディングを!」という論調は、広告・広報などの文脈で今もありますが、以前に比べてとても少なくなった印象です。それこそ、10年前などは「CSR広告」なんて表現もあったのですが、いまや、テレビCMでは大手企業を中心に「サステナビリティ」「サステナブル」という表現が普通にあります。つまり、日本でサステナビリティが普及し始めたのが2003年ごろで「CSR元年」なんて言われることもありますが、2023年でそれから20年となって、広告コミュニケーションにサステナビリティを組み込まないという選択肢のほうが少なくなっています。

あと、ここ15年くらいのサステナビリティ・ブランディングの事例や流れを見ていて思うのは「サステナビリティでブランド価値を高めれば事業が伸びる」のようなアプローチはほぼ失敗する、ということでしょうか。もしくは失敗はしていないけど泣かず飛ばずな状況とか。逆に「商品の社会的価値を高め、その価値を市場に伝えるために、ステークホルダーに対するコミュニケーション施策を設計する」というプロセスは機能しやすい印象です。ブランド価値を高めると社会価値(ステークホルダー価値の創出)が上がる、ではなく社会価値を高めることによってブランド価値が高まる、という順番です。

これは大事な概念で、例えば環境が重要ですという単なるメッセージを発信するよりも、実際に事業活動として気候変動対応を行うなど、その行動こそがブランドを作るということです。アパレルブランドならサステナビリティを訴える広告をするよりも、実際に再生素材を使った服を販売するほうがはるかにサステナブルな企業であることが伝わる、というか。

サステナビリティ・ブランドは目的か結果か

サステナビリティ・ブランディングとは、多くの場合で結果なんですよ。

ところが、経営企画や広報などが、ブランディングとはどうあるべきかというところから考えてしまって、ブランドを無理やり社会課題とつなげようとして、さらにその価値観を顧客に押し付けようとするんです。これを広告やデザインに落としたり、ロゴ変えてみたり色変えて、みたいなことをやる。そういう商品の外側としてのブランドを押し付けるブランディング論が出てきてから“ウォッシュ”が始まったのかなと。

サステナビリティ・ブランディングで、ブランドを起点に語る人はすべてのステークホルダー接点がブランドです!という話になるし、というだけです。それぞれの立場でブランドを語るので、ステークホルダー視点が薄れてしまい、ステークホルダーの役に立たないウォッシュが生まれてしまうのです。

サステナビリティ・ブランディングには、商品の開発段階からサステナビリティの概念を強く組み込む必要があるし、言ってしまえばそもそもの組織のパーパス自体がサステナビリティの視点を反映したものでなければならないので、とても難易度の高い話なのです。だからこそ、サステナビリティ・ブランディングがもしできたとすれば、本当に最強で、確固たるポジションを獲得できるのだと思います

ブランディングの視点

だとすれば、サステナビリティをより組み込んだブランディングとは何か、という話になります。

たとえば、ESG企業評価が低く経営層自身がサステナビリティに興味がないけど「メディア受け(消費者ウケ)するサステナビリティ推進活動を行う企業」というのが日本にもあります。引用したインデックスの中にもそういう企業ありますね。サステナブルブランドと消費者は感じていても、ESG企業評価をする人間のほとんどはそうは思わない企業です。

そういう企業がサステナビリティ・ブランディングをできているかというと、さすがに違うかなとは思います。理由は簡単で、ステークホルダーや社会が長期にわたってそのブランドを必要としないから。理論上は、ブランドに社会的意義を持たせるということで、社会に必要とされるものになれるのですが、実際はなかなか難しい。

特に目的化したサステナブル・ブランドは危ないのが多い印象です。企業がサステナブルかどうかを決めるのはステークホルダーです。自己評価ほど意味のないものはなく、自称したところで…まぁ色々ありますよね。

確かにブランドにストーリーを持たせることは必要だと思いますが、ストーリーのみで物を買う人はほぼいません。いろんな調査みても価格以上の訴求力はないですよね。単純に物がいいかとか自分の欲しいムードに合っているかでしか選んでいません。私もいわゆる“エシカル消費”をしたいのですが、価格が高く購入できない、機能性が求める水準に達していない、などの理由で購入できないものも多いです。

たとえば、めちゃくちゃ界隈では言及される、シューズブランドのオールバーズの株価見たことありますか?という。私は好きなので何足か持っていますし、株価がすべてではありませんが、少なくともブランド価値の高さほど市場は評価していないしESG企業評価も高くない。オールバーズというサステナブル・ブランドでさえこういう状況なので、普通の企業やブランドがサステナブル・ブランドを語ろうなんて…まぁ色々ありますよね。

パーパス・ブランディング

現実的なサステナビリティ・ブランディングって、いわゆる「パーパス・ブランディング」が実務に近い気がします。パーパス・ブランディングは、自社が存在する理由や社会への提供価値をステークホルダーに認識してもらい、共感を得ることによりブランドや企業の持続的な成長を目指す取り組みを指します。

どうしてもサステナビリティというと範囲が広すぎてブランディングには向かない場面も多いです。しかし、パーパス(社会的な存在意義、志)は、その特性上、サステナビリティ的な発想が強く「パーパス・ブランディング ≒ サステナビリティ・ブランディング」となりやすいです。ですので、日本でいうと「企業理念実践経営」がパーパス・ブランディングそのものであり、サステナビリティ・ブランディングにつながっていくと考えています。

また、ブランディングにおいて重要なことは社内の人間がブランドを十分に理解していることです。やはり働いている人たちの意識がブランドを体現しているか否かが一番の肝だと考えます。経営学者のピーター・ドラッカーは「何によって覚えられたいか」と言っています。これをサステナビリティ・ブランディングの枠で解釈すると「ブランディングの基本は焦点を絞り込むことで、見込み客の心の中にただ一つの言葉を覚えてもらうことである」的な話かなと。情報が多すぎると誰も覚えられないし、一言で伝わるくらいの特徴じゃないと記憶に残りにくい。従業員が体現できないパーパスほど意味のないものはありません。

ちなみに、アウトドア・ブランドのパタゴニアのパーパスは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」です。こんなにストレートなパーパスはパタゴニア以外に見たことがありません。で、この理念の実践を通じパタゴニアはサステナブル・ブランドを確立していますよね。ただ、パタゴニアの日本法人も労働問題を抱えていて、ESGすべての側面で完璧な企業はないのですが、それでも実践と継続によって、サステナブル・ブランドを作ることも不可能ではないのです。

まとめ

サステナビリティ・ブランディングについて、最近の気づきをまとめました。異論・反論はあると思います。ただ「ウォッシュではないサステナブル・ブランド」が少ないのは事実であり、この事実を受け止めながら前に進むしかないと思っています。

もちろん私はサステナビリティ・ブランディングの存在や意義を否定するわけではありません。サステナビリティの視点を強力に組み込んだブランドを作ることができるなら、そんなに素晴らしいことはないからです。このあたりはサステナビリティ推進部門よりも、広報・マーケティングなどの部門で議論されることと思いますが、全社的に、なおかつ長期的に取り組み、日本で唯一のブランドを作っていきましょう!

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