
コーポレートガバナンス・コード改訂版
先月7月21日に金融庁・東京証券取引所よりコーポレートガバナンス・コード改訂版(以下、本コード)が発表されました。関連資料もたくさん開示されていますので必ずチェックしましょう。

>コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の確定について(2026年7月21日)
金融庁の「コーポレートガバナンス・コードの改訂(2026年)の概要」(7/21)によれば、原則・解釈指針における主な改訂内容は「経営資源の配分」「取締役会の機能強化」「有価証券報告書の定時株主総会前開示」「ステークホルダーとの適切な協働」としています。
実務的には、上場企業であれば2027年7月までに、改訂版に対応したコーポレートガバナンス報告書を提出する必要があるため、まずはこの対応準備でしょう。もちろん本コードを活用したガバナンス改革が本丸ではあります。詳しい解説は、さまざまなコーポレートガバナンスの専門家がコメントしているのでそちらを確認ください。ここでは、サステナビリティ視点で、、私がどう感じたかという視点を共有する記事です。あまり深い解説はないのですが、サステナビリティ視点での学びもあると思いますので、関連資料を含めて情報共有させていただきます。
コーポレートガバナンス・コードの改訂のポイント
上場会社の経営者へのメッセージ
同日に公開された「上場会社の経営者の皆様へ」という資料では以下のように示されています。
本コードは、「攻めのガバナンス」の実現及び会社の「稼ぐ力」の更なる向上に資するため、上場会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることで、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを狙いとしています。本コードが定める各原則は、経営陣にとっての制約と捉えることは適切ではなく、むしろ果断な意思決定やリスクテイクを伴う事業活動を後押しするものです。
このあたりは、まさにサステナビリティ・ESGの本質なのかなと感じました。本コードを何度も確認すると、あらためてサステナビリティ推進にはガバナンスがベースになければならない、と思いました。金融庁が経営者と担当者に直接メッセージを出しているのですが、実効性を考慮してでしょうか。
サステナビリティ経営支援を20年近くさせていただいて、それこそ2000年代後半からずっと言われている課題の一つが「経営トップのサステナビリティの理解とコミットメント」というものです。これって、サステナビリティの問題というかガバナンスの問題なんですよね。極論ですが、上場企業の社長なのであれば、サステナビリティの前にコーポレートガバナンスを理解すべきだと。
ガバナンスがないところにサステナビリティの理解が足りないと言っても、そもそもサステナビリティの本質を理解できずに「サステナビリティはやっても儲からない」という中学生並みの感想を平気で口にするわけです。上場会社の経営陣がですよ?
サステナビリティの社内浸透や組織変革の研究をしていて感じるのは、上場企業の経営層は、サステナビリティの前に、自社の理念やビジネスモデル、経営管理体制などの、事業の前提となる事柄を深く理解すべきなのでは、ということです。我々の調査チームではこれを「自社理解」と定義していますが、自社を知らずに社会を語っている経営層、実は多いのかもしれません。
取締役会の機能強化の取組み
こちらも同日に公開された「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」では以下のように示されています。
■サステナビリティを意識した経営
・サステナビリティを意識した経営について、執行側にサステナビリティを管掌する委員会を設置し、取締役会がその進捗をモニタリングするといった対応を行う事例が見られた。
・サステナビリティを巡る課題について、企業価値の向上の観点から取り組み、経営戦略につながるような形で説明することが重要。
■コーポレートカルチャー、レジリエンス
・コーポレートカルチャーに関しては、トップが明確に変革を表明し、社内で繰り返しコミュニケーションを図ることが重要との意見があった。
・レジリエンスについては、危機時のサプライチェーン維持の重要性等について指摘があった。
■人的資本経営の実践
・持続的な成長の実現に向けた人的資本への投資を推進することで、経営資源の適切な配分を実現していくことが重要であり、独自の指標の設定や、従業員へのエンゲージメントの取組み例が見られる。
・投資家からは、取組みを経営戦略にどのように結びつけて説明するかが重要との指摘があった。
皆さんがご存知の大手企業がヒアリングされまとめられたものですが、感じたのは「ガバナンスって経営とは何かを考える作業」の一つなのだという点です。サステナビリティ経営という表現もありますけど、いわゆるサステナビリティ推進担当者が関与できるガバナンス領域は、実は少なくいわゆるEとSに集中しているのが現状かと思います。かろうじて、CSO(サステナビリティ担当役員)が関与できるかなというレベルが多くの会社かと思います。
たとえば、「人的資本経営の実践」というページでは「機関投資家の目線」というカテゴリで以下のようなコメントを掲載しています。
・企業に対する非財務情報の開示要請があり、人的資本に対する投資の財務的な効果を説明することはハードルが高いが、様々な非財務情報が企業価値向上につながるよう開示や説明をすることが求められる。
・市場価格とその会社の適正価格を考えたときに、財務については、施策が株価に対してすぐに反映される。他方で、非財
務情報は、3~5年は株価に反映するまでに期間を要する。適切に企業開示をしている会社は市場から必ず評価がされる。そのため、ROEが優れている企業は、企業開示も優れており両者の連動性が高い。
・企業が非財務情報として何を開示すればよいかについて、投資家は、公表されている情報が、会社の経営戦略にどれだけ連動し、どれだけ必要か、出している目標値が形骸化されていないかを確認する。
このあたりはガバナンス視点で人的資本開示にされているコメントですが、まさにその通りかと思います。それができれば苦労しないよ、という話は“あるある”なのですが、なんとか目指したいあるべき姿です。
サステナビリティの記述箇所
■【原則4-5.取締役会の役割・責務Ⅳ:サステナビリティを巡る取組み】
取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべきであり、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定するほか、適切な対応を行うべきである。■解釈指針
サステナビリティ(中長期的な持続可能性)は重要な経営課題であると認識されている。加えて、中長期的な企業価値を判断する上でサステナビリティ情報の重要性が世界的に高まる中、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により国際的な開示基準(ISSB基準)が策定され、各国においてサステナビリティ開示基準の適用に向けた動きが進展している。我が国においても、一定のプライム市場上場会社に対し、ISSB基準と整合的な、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)により策定された開示基準に基づく有価証券報告書の作成が義務付けられている。こうした中、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を進めていくことが重要である。
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、自然災害等への危機管理、多様性などのサステナビリティに関する課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題について適切な対応を行うべきである。
「SDGs」「TCFD」「ESG」という固有名詞(ESGは一般名詞かも)は削除されました。以前の改訂は2021年で、当時はこれらが“流行っていた”ので入れたのでしょう。(「SDGs」は2021年に流行語大賞ノミネートされてました)私は「サステナビリティ」というワードが入っているので、特に問題視していませんが指摘していた人もいましたね。細かい規定をしたところで、わりと多くの企業はサステナビリティ推進をしてこなかったわけですから、あまり細かく規定する意味もないというのが結論だと、私は感じています。
まとめ
まだ深く読み込めていませんが、コーポレートガバナンスの素人ながら、速報的にまとめさせていただきました。今後、大手コンサルティング会社やシンクタンク等から詳細の解説レポートがでると思いますのでそちらをご確認ください。
サステナビリティ推進担当者の悩みの種でもあるコーポレートガバナンスですが、組織の経営戦略を考える上で非常に重要なポイントになります。担当者としてはEとSのカテゴリにリソースをとられてしまうことも多いと思いますが、5年ぶりのコーポレートガバナンス・コード改訂をきっかけにして、社内展開をしてみてはいかがでしょうか。
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