サステナビリティガバナンス

戦略の実効性を高める組織力

「サステナビリティ経営」という考え方がありますけど、実際には経営(事業戦略)と合致しないサステナビリティ推進活動のほうが多いです。それはなぜだろうと考えた時に、単語の定義の話ではなく、また経営戦略的な話でもなく、組織体制や関連する制度が問題なのではないか、と思うわけです。サステナビリティは戦略が問題なのではなく、実装するための組織と制度の問題である可能性が高い、というわけです。

というわけで本記事では、いわゆるコーポレートガバナンスやサステナビリティガバナンスの話もありますが、「組織力強化」という視点でサステナビリティ経営の基礎となる組織づくりの解説をしていきます。なお、組織力強化は、別にサステナビリティ視点だけで行うわけでもないのですが、ESGでいうGにあたるからという前提があります。

コーポレートガバナンスコードの改訂

サステナビリティガバナンスという視点でいえば、今のホットトピックスとして「コーポレートガバナンス・コードの改訂」があります。改訂案は2026年4月に公開され、パブコメを通してまもなく改訂される予定です。今回の改訂に関しては専門家の方々が他でも解説しているので本記事では詳細は省きます。

>>金融庁|コーポレートガバナンス・コード改訂案の公表について(2026/4/10)

良し悪しはあるにせよ、組織のあり方として、サステナビリティガバナンスに関連する考え方も提起されています。以下、原案からの引用です。

原則4-5.取締役会の役割・責務Ⅳ:サステナビリティを巡る取組み
取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべきであり、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定するほか、適切な対応を行うべきである。

解釈指針
サステナビリティ(中長期的な持続可能性)は重要な経営課題であると認識されている。加えて、中長期的な企業価値を判断する上でサステナビリティ情報の重要性が世界的に高まる中、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により国際的な開示基準(ISSB基準)が策定され、各国においてサステナビリティ開示基準の適用に向けた動きが進展している。こうした中、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を進めていくことが重要である。
取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、自然災害等への危機管理、多様性などのサステナビリティに関する課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題について適切な対応を行うべきである。

サステナビリティを「サステナビリティ(中長期的な持続可能性)」と定義するあたり、わりと実践的なニュアンスも反映されています。サステナビリティの良し悪しを、短期の経済合理性だけで決めつけるなよ、ということでしょうか。

サステナビリティの実効性

さて、サステナビリティ推進の重要課題の一つに「実効性」があります。抽象的なサステナビリティ戦略(方針)だけ作って、具体的な活動を進められない企業もある中、ガバナンス強化からの実効性を高めようとする企業も増えています。サステナビリティと事業の統合の前に、サステナビリティとガバナンス(組織力)の統合が必要なのではと考えています。というのも、ESGをEとSから始める企業ほど「手段の目的化」が起きています(当社比)。Gがサステナビリティ推進実務に追いついていないので、しょうがないと思います。先日、『サステナビリティ戦略の実装』というサステナビリティと社内浸透に関する書籍を出版しましたが、組織力強化はサステナビリティの社内浸透にも大きな影響を与えます。

こういう状況であるため、実効性を高めるために、組織力強化は欠かせない要素となります。社長や役員層でサステナビリティ理解がない、という企業では現場がどうがんばっても実効性が高まることはなさそうです。つまり、サステナビリティの実効性が低いのは、サステナビリティ戦略を実行力に変換する「経営の仕組み」が設計されていない、という組織構造の問題が一因であるということです。サステナビリティ推進担当者で、カンファレンス/シンポジウム登壇やメディア露出の多い著名人もいますけど、そういう企業でも(そういう企業だからか)実効性が問題になっている例が多数あります。有名なプレイヤーがいるだけでは組織は変わりませんね。

ですので実効性の問題は、必ずしもサステナビリティ推進担当者個人の能力不足ではないということです。サステナビリティに関連する意思決定の枠組み、管理および権限の定義と設計、改善に組織的に関与する仕組み、などが明確になっていないという経営の構造上の問題です。あと付け加えると、そもそも「変化を望んでいない」というパターンもあって、表面上は構造改革といった考え方をするのですが、心の底から変化しなければならないという危機感もなく、なんとなくで経営をしておられる方がいるのも事実。難しい話です。

組織構造とリーダーシップ

私のこれまでの20年近くのヒアリングを考慮すれば、「サステナビリティ推進に専門部署が必要なので作った」と「サステナビリティ推進は全社的に行うべきなので専門部署は作らない」というどちらの考え方もあります。後者は数は少ないですけど、ある程度浸透した会社ほど行いがちです。で、組織全体の話でいえば、専門部署の有無よりも、取締役を含めた経営層の考えや、その仕組みのほうが成果に影響します。実効性って小手先の話ではないのですよ。

サステナビリティの実効性の話、めちゃくちゃ奥が深いです。なお、取締役会等の会議体では、サステナビリティ関連の議題は後回しになりがちで、実効性以前に議題の確認・承認で手一杯となって議論もされないことが多いとも聞きます。それでいうと、サステナビリティ担当役員(CSO)をはじめ、サステナビリティ推移部門が、経営戦略の策定や経営の意思決定に関与できる場面が少なく、そもそも経営とサステナビリティの統合が困難であるのはしょうがないことなのでしょう。

この実効性の問題は組織構造の課題もあるのですが、本質的な課題としては「リーダーシップ」の問題でもあります。そもそも、サステナビリティを推進するリーダーがいないこと。これが問題です。リーダーがいてもリーダーシップが弱いので、組織構成も最適化されずなかなか実効性が上がらない、と。変化を起こすには力強いコミットメントとリーダーシップが必要です。サステナビリティ関連の学会(複数)でこのリーダーシップの議論をよく聞くようになりましたし、注目しています。

まとめ

本記事では、サステナビリティ推進における実効性の課題についてまとめました。結論、ガバナンスの問題ではあるのですが、その解決は簡単にはできなさそうです。

私はここ3年くらい、サステナビリティと社内浸透の研究をしてきましたが、マネジメントや研修の方法論を議論する前に、そもそも組織力を強化する“気持ち”があるのかを確認した方が良い気もします。

唯一絶対の正解はないにしても、本記事での問題提起はあながち間違ってはいないと思っていますが、みなさまはいかがでしょうか。

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