CSR企業評価

CSR/サステナビリティ評価向上へ

自社のCSR/サステナビリティ企業評価を上げたい。どの企業も望んでいることですよね。しかし、各種ランキング上昇や格付けへの組み入れ、アワード入賞、などは年々難しくなっています。

結論からいえば、ESG投資の浸透により大手上場企業が本気でESG/CSR推進に動き出し、情報開示も積極的に行うようになってきたため、ライバルが増え競争が増えたから、という所です。

数年前までは、ごく一部の企業だけ(数百社程度)が評価向上の施策などをしていましたが、今となっては少なくともその倍以上の“競合数”となり、相対的に頑張った企業よりもより頑張った企業が評価獲得できるという、レッドオーシャンな状況です。詳しくは後述しますが、2020年代のCSR企業評価は「戦国時代」であり「総合格闘技」となるのです。

しかし、何にでも突破口はあるもので、そのあたりの課題や対応策を指摘しながら、本記事ではCSR/サステナビリティ企業評価の最近の動向・潮流・トレンドをまとめたいと思います。(一部評価機関のレーティング視点も含む)

CSRの戦国時代

昨今のCSR評価についてですが、私の見解を加えるなら「CSR評価の環境が変わった」ということなのだと思います。ともかく数年前までは、CSR評価向上に本気で動いている企業の絶対数が少なかったのですが、今や規模も業種も関係なく国内最高レベルの評価獲得を目指し、続々と企業の参戦が続いていると。

このCSR/サステナビリティ評価の群雄割拠なその様子は「CSR企業評価の“戦国時代”」に入ったとも言えます。

グローバルで展開される群雄割拠なランキングやアワードがあり、開示ガイドラインやイニシアティブも数年おきに大きな動きがあり、10年単位でみれば前時代の状況が思い出せないくらいです。2000年代から2010年代前半はまだ平和な時代でした。予算かければそれなりの評価を得られていたのですから。今は予算があっても実績が伴わないと評価されませんよね。

戦国時代なので「下克上」もあります。今まで、ランキング常連企業が上位ランク外に落ち、下から上位ランカーに入ってくる企業がでてきました。今年上位ランクだったから来年も入れるとは思わない方がいいでしょう。(このあたりの評価急上昇企業は調査研究中です)

特にESG投資の文脈もあり、積極的に評価を上げたいと考えている企業の多くは「統合報告書」を出しているわけですが、今では500社前後が発行しており、アワード等に入るのは多くて数十社程度ですので、その大変さがわかっていただけると思います。もちろん、アワード等には統合報告書を出していない有力企業も参戦しますので……もう大変です。

CSRの総合格闘技化

もう一つの視点でいえば「CSR企業評価の“総合格闘技時代”」に入ったとも言えるでしょう。

これまではCSR評価は「1種目の格闘技」でした。環境経営など絞られた専門分野で成果を出せればよかったのでリソースも集中して投下でき、費用対効果もそれなりにありました。しかし時代は変わりました。総合格闘技、つまり、特定分野のテクニックだけではなく、ありとあらゆる手段を使って戦わないと勝てなくなったのです。

今の企業サイドの課題として、CSR評価獲得の投資効率が落ちている現状があります。つまり、例えば年1,000万円の投資で情報開示を充実させ関連企業評価で上位につけていたのが、他社が同等かそれ以上の予算をつけてきているので、年1,000万円の投資では企業評価の上位を維持すらできなくなってきた、というようなことです。

今の状況を維持するのに去年以上のことをしなければなりません。上にいくとなれば相応の努力が求められます。2020年代は、まずは戦いのステージに上がり(ここで多くが脱落)、トップランナーだらけの世界でさらに勝ち上がり、さらにそれを維持しなければなりません。評価や評判の影響は、上がる時より下がる時のほうが大きく動くものですから。

評価向上のための投資

対外的なCSR評価を上げたい。これは、どの企業もそう思っているわけでして、いわゆるレッド・オーシャンな願望です。難易度が5年前にくらべて格段に上がっています。以前は「情報の量」があれば評価されていました。今は「情報の量」は当たり前で「情報の質」が評価の分かれ目になっています。

本気で評価を上げにきている企業は、私のような第三者の専門家からセカンドオピニオンを受けたり、評価向上のためのコンサルティングを受けたりしています。企業評価を上げるには100%自前主義では対応できないことも多いですから。

元も子もない表現で恐縮ですが、経営資源(人・物・金・情報・時間)をCSR活動および情報開示にそれなりに投資しなければ、社会・ステークホルダー・評価機関から評価をもらえない時代に突入したのです。

CSR評価の高い企業の共通点はひとつだけです。評価を上げようと努力し続けている点です。ビジネスでは予想外に話題となり偶然成功してしまうこともありますが、CSRにおいてはやっていないのに評価されることはまずありません。逆に言えば、CSR企業評価は努力によって変えられる、というわけです。実際、評価が上がらないという企業は単に努力が足りないことも多いですね。

では、予算がないと評価は上げられないないのかというと、意外にそうでもないです。例えば、社員が数十人の会社でも、官公庁のアワードを獲得できますし、国際的なイニシアティブに入ることもできます。自治体での相当レベルのCSR評価を獲得することもできます。そういった企業は経営資源は大手上場企業とは桁が何個も違うのに、です。当然、中小企業であれば、網羅的で総合的なCSR活動というのは不可能ですが、今いる世界で一番になることはできる、ということです。

CSRの成果の因果関係

ビジネスにおいては、戦略と結果(実践)に因果関係が成り立たなければなりません。「こういう戦略だから、こういう実践をして、こういう結果がでる」とロジカルにまとめられるか、ということです。ビジネスでは当然のロジックですが、CSRになると“はぎれが悪く”なってしまいがちです。得た成果は偶然の産物であってはならないのです。

結果が出た理由を説明できてこそ評価されます。これが一般的にいう「価値創造ストーリー」とか「価値創造プロセス」の話です。CSRをすべてはないとしてもロジカルに因果関係を説明するために、ビジネスモデルにおける価値創造の枠組みが必要になるのです。そのため、評価機関はその価値創造ストーリーに注目するというわけです。

目的意識のある実践とそのフィードバックが必要なのです。成功した理由がわからなければ次も成功できる保証はなく、失敗した理由がわからなければ次もまた失敗してしまう可能性が高い、というわけです。ですので特に投資家などのステークホルダーは「成長するなら成長できる理由とプロセスを教えてよ、その実現可能性も含めてね」となるのです。

御社のCSR活動が評価に値するものであるならば、その理由と成果(数値)を開示し評価者に問わなければなりません。定性的成果を定量化することとか、社会の変化を数値化すること(インパクト評価)とか、もですね。

評価向上の情報開示

高いCSR評価を受けるには、実践と情報開示の両輪が成立していなければなりません。この開示と実践の両輪がまわってこそ名実ともに評価をしてもらえるというわけです。(どちらかだけで瞬間的な評価獲得くらいはできるのだが)

その中の課題として、伝え方がマクロ的(画一的)であり、様々なステークホルダー、たとえば、CSR/ESG評価機関、NPO、従業員、株主・投資家、顧客、取引先、などが重視する点に絞ったメッセージの発信ができてない、という点もあります。つまり、単純に情報開示が評価をする人たちの情報ニーズに合っていない、という問題です。

また組織体制の問題もあります。CSR推進体制の組織整備とは、CSR/ESG推進の専門部門以外を含めた全社的な取り組みおよび組織を指します。情報開示はテクニックでどうにでもなる部分も多いですが、戦略構築と実践は経営に強くひもずいており、テクニックだけでどうにかなるものではありません。

日本の大企業はそろそろ開示テクニックだけを磨くのをやめて、「どうやったらCSRが社内浸透するか」「どうやったら経済的・社会的な成果を創出できるのか」などを、もっと本気で考え実践すべきです。

まとめ

CSR/サステナビリティの企業評価について、最近の動向や私の課題感をまとめてみました。ややテーマから飛び出した課題指摘もしましたが、昨今のCSR企業評価の課題感については、確かに!と感じてもらえると思います。

情報開示だけではなく、より総合力が問われるCSR評価の時代の幕開けです。2010年代のCSR企業評価が「情報開示の時代」だったのであれば、2020年代は「成果/アウトカムの時代」と言えるかもしれません。CSRにおける成果は時間がかかるものも多く、簡単には生み出せません。だからこそ、アウトカム/インパクトをだしている企業は素晴らしいのですね。

社会やステークホルダーに評価される企業になるためにどんなことが必要なのか。今より一歩上の世界に行くには、このあたりをちゃんと考える必要があるでしょう。難易度は最上級ですが、2020年代の覇者となるため、上を目指して切磋琢磨していきましょう!

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