成果につながるCSRコンテンツ

CSRデジタルコミュニケーションと言っても、手法は必ずしもテキストだけではありません。“CSRっぽい”動画も、海外を中心に盛り上がっています。

そこで今回は、CSRコンテンツを作るプロセスにおいてどんなことに注意すべきなのか、をまとめます。

前もって言いますと、CSRコミュニケーションが“商業化”し過ぎてしまっている流れもあるように感じる、ということです。

企業のCSR情報を伝えることや、ブランド姿勢を社外のステークホルダーに伝えることは重要なのですが、テクニカルになりすぎているというか、CSRコミュニケーションの指標が目的化しているというか。

CSRコンテンツ調査3事例

社会課題と広告の関係性

社会文化とか時事問題とか個人の習慣とか、そういったものに介入することが、ブランドには許されていると思っているらしい。その結果として、ブランド企業が、自社ブランドとは何の関係もない社会問題を語る「フィルム」が増えてきている。
こうした社会事象広告は、一般的にものすごい再生回数を稼ぐので、これからも同じような広告が増える一方であろう。しかし、ブランドが社会問題に関心を持つのは、売り上げに貢献すれば、の話である。
「社会問題」を語りたがるブランドに、いまこそ喝を!

この記事を読んだ時、グサっときました。この記事を読んだ大手広告会社の人とかどう感じるのでしょうか。

日本の一部のコーズマーケティング(寄付つき商品の販売)では、社会性を“無理矢理”訴求している例があります。なんの関連性があってそうなるの?と首を傾げるようなものも少なくないです。

大手/上場企業を中心に“CSRからCSVへ”みたいに、無理矢理ビジネスに社会性を持たせようという動きもありますが、“CSRを売上に直結させなきゃダメ病”にかかっているようで、かわいそうに思えてしまう企業もあります。逆に引用記事にあるように、売上に貢献しないCSRはしない、みたいになってしまうのも何かおかしい気がします。

昔「音楽は商業化しすぎた」と言われたように、「CSRは商業化しすぎた」と言ってもよいのかもしれません。数字が大切であることは否定しませんが、「指標」と「目標」は違います。CSR活動を通じ、どんな社会を作りたい(貢献したい)のか。この軸をブラしてはいけません。

世界で最もシェアされた動画広告

動画プラットフォームのアンルーリー社の「2015年に世界で最もシェアされた動画広告」によれば、ダイバーシティ&インクルージョンなどのテーマを含めて、いわゆるソーシャルグッド的な動画が複数、上位に入ったそうです。(参照:Google Android’s “Friends Furever” Campaign Is Most Shared Ad of 2015、英語)

国際広告祭のカンヌライオンズの紹介記事「カンヌライオンズのソーシャルグッド・ソーシャルデザイン最新事情とは(2015)」でもまとめましたが、世界ではCSR・社会貢献的なコンテンツのリアクションが大きくなっているそうです。

そりゃ「ウチの商品カッコいいでしょ!? 買って!」よりも、「こういう社会問題もあるけど、みんなどう思う?」みたいなコンテンツのほうがシェアしやすいよね。絶対的に“善”ですからね。

企業のCSR・社会貢献活動のすべては、事業活動である以上最終的に利益(売上)につなげる必要があります。仮に社会問題が解決できても、自分の会社がつぶれてはしょうがないですよね。まぁ、そもそもCSRにはほとんど投資されないので“CSR活動しすぎ倒産”はありえないと思いますけど。

企業コンテンツ事例

CSR活動レポート|リクルートホールディングス

たとえば、リクルートはブログテイストなCSRコンテンツを運営しています。年次開示ではなく適時開示です。プレスリリースよりは、ブログっぽくカジュアルな感じです。

年次報告の形ではなく、適時開示といいますか、活動報告がまとまり次第で開示していく方法も、最近出始めています。「アクセスを集める」ことがKPIなのであれば、もうこの方法しかないでしょう。

1年に1回、CSR報告書発行時にリリースを出しても、数日間はアクセスがあってもそれ以外はほとんど期待できません。

でも適時開示なのであれば、興味がある人は週1回とか月1回とか、最新情報を見にきます。常に最新のCSR関連情報がサイトにあるっていいですよね。CSR担当者の多くはリソース不足を言い訳に、定期的な発信をしませんが絶対やったほうがいいと思います。

もちろん、そのためには運営やリリースの“仕組み”を作る必要があるんですけどね…。

この方法論は、グループ企業(関連会社)が多いホールディングスに特にオススメのCSRコミュニケーションです。子会社がそれぞれCSR報告書を出せばいいのですが、現実的には不可能だと思うので、こういう形でまずは情報開示を行なうって感じですかね。

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まとめ

ステークホルダー視点なくして、CSRコミュニケーションは成立しません。

特にデジタル領域(ウェブ)では、ウェブマーケティング界隈からCSRコミュニケーションのサポートに関わる企業や人が多いものの、本当の成功事例って少ない気がします。ただ、再生回数やアクセス数が多ければいいってもんじゃないよ。

もちろん、僕が日本で一番成果が出せるのかというとそうではないかもしれませんが、それこそ社内外でもっと議論されるべきだとは思っています。

予算や規模の話ではなく、ステークホルダーとどこまでエンゲージメントできるのか。

本記事が、目新しいテクニックに惑わされず、本質的なCSRコミュニケーション議論のきっかけになれば幸いです。