統合報告書の調査レポートと良事例

2015年は、統合報告書の本格的な浸透の年になりましたね。

社会的な要因が大きいのですが、ここ数年で、統合報告書のみならずCSR報告書も含めて、とても大きくその方法論が変わってきています。一昨年(2013年)には、こんなに統合報告やGRIが浸透すると思いませんでしたよ。

ということで、本記事では2015年のCSR報告書調査、統合報告アワード受賞企業などの情報をピックアップします。文末の関連記事も統合報告書に関する様々な情報をまとめていますので合わせてごらんください。

2010年のISO26000発表から5年。CSR報告(統合報告)のベスト・プラクティスは、毎年しかも急激に変わってきています。2000年代以上に、激動の2010年代となっています。トレンドを見失わず、なおかつ、本質から乖離しないコミュニケーション・プランニングが2016年も求められるでしょう。

統合報告書の調査レポートと良事例

KPMG|CSR報告書調査

N100企業の56%がアニュアルレポートにおいてCSR情報を記載しています。この割合は、2011年調査(20%)や2013年調査(51%)から増加しており、世界的なトレンドと言えます。また、開示するCSR情報に対して第三者保証を受ける企業の割合も増えており、N100企業の42%、G250企業の63%が第三者保証を受けています。特に世界の大企業(G250企業)においては、第三者保証を受けることは既に一般的な慣行になっているといえます。
KPMGによるCSR報告書調査2015について

このレポートによれば、環境領域の情報開示は進んでいるとのこと。また、アニュアルレポートなどの財務系レポートにCSR情報を掲載する企業が増えているらしい。ただ、世界的な発行企業や報告の品質の圧倒的な伸びというのはなく、証券取引所などを含めた開示義務化などの大きな動きに期待が集まっているということかも。

WICIジャパン|統合報告表彰

■WICI ジャパン統合報告優秀企業賞(4社)
・アサヒグループホールディングス
・伊藤忠商事
・オムロン
・MS&AD インシュアランス グループ ホールディングス
(参照:第3回「WICIジャパン統合報告表彰」の審査結果と表彰式-ニュースリリース:2015年11月)

オムロン、伊藤忠商事は3年連続の受賞ということで他社をよせつけない圧倒的な報告品質を保っております。オムロンは中の人にお話を聞いたこともありますが、結果出している企業なのに慢心することなく勉強熱心でして、来年以降は殿堂入りしてしまうのでしょうか。

とはいえ、統合報告書は、どちらかというと投資サイドの視点が重要で、CSRセクターより、投資サイドやシンクタンク、会計系の方々ばかりが盛り上がっていて、企業のCSR活動の本質と乖離していってしまわないか、やや心配な所はあります。

経済産業省|統合報告書の優良事例

・アサヒグループホールディングス
・中外製薬
・帝人

「環境報告プラザ」のサイト内で2015年の優良事例として3社紹介されてました。アサヒグループホールディングスはさすがですね。個人的にはCSRというより、消費者としてビールやワインでお世話になっているという理由もあり感慨深い結果です。エノテカさんも応援しております。

僕は、リスク開示を「SWOTフレームワーク」で開示してるとこが良いと思いました。今後の統合報告書(CSR報告書)は、リスク開示を「どこまで、どのようにするか」がポイントになってくると考えています。リスクの認識と対策で、だいたいのCSR戦略がわかりますからねぇ。CSRへの本気度が垣間見えるコンテンツです。

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まとめ

最近、投資サイドに近い人たちが統合報告にのめり込んでますね。これ自体は決して悪い事ではなく、むしろ、CSRやESGの重要度を今更ながらでも理解いただけてということは、CSR支援サイドからすれば、良いことです。

でも中には〇〇な人も多くて、この人、CSRのこと本当にわかっているのかな?と思う事もしばしば。統合報告書発行に伴いCSR報告書を廃止するのであれば、なおさら……ねぇ。

「情報網羅性」や「成長性」の開示ばかりをプッシュされ、BtoB企業のCSRの本丸であるリスクマネジメント対応(開示じゃないよ)などが、ないがしろになったしいないことを祈ります。