ソーシャルグッド

ソーシャルグッドのトレンド

今年のカンヌライオンズもソーシャルグッドの流れが強かったみたいですね。

カンヌライオンズとは、広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中でも世界最大級の規模を誇り、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の略称のことです。以前日本語では「カンヌ国際広告祭」と言われていたそうです。

結論から言うと、今年はここ数年のソーシャルグッドの傾向はそのままにもはや前提ともなりつつある、みたな現地レポートが多かったようです。

僕は、いわゆるクリエイティブやアドバタイジングに関しては専門でもないし、とくにどうこういうことはないのですが、企業のコーポレート・コミュニケーションとして、ステークホルダー重視の世界の流れに注目しております。

「社会(ステークホルダー)に貢献する」という考え方は、時代の潮流に関係のない「普遍性」のある概念です。この流れは、不可逆なんでしょうね。このトレンドによって、企業のコミュニケーション戦略にCSRの概念がどんどん入っていくのでしょう。

ソーシャルグッドの大切さ

ちょっと前まで皆が口をそろえて言っていた「ソーシャルグッドって大事よね」という潮流がどうなったのか、ということ。カンヌ全体を見ると、やや印象が薄まってきたように感じますが、ソーシャルグッドが消えたというよりも、もはや前提として考えておくべき当たり前のことになっている感じがします。
最近のカンヌって、全部が全部PRカテゴリーじゃねーの?

この引用記事は長文ですが、非常にわかりやすく解説されているので、非常に参考になります。しかし、企業が“キャンペーンのためのソーシャルグッド”に取り組むことも多いようで、本業との関連性などがより重要視されるようになってきているようです。CSRが、社会貢献(フィランソロピー)から、本業のプロセスやインパクトに軸が移ってきた流れと同じですね。

今年のゴールド受賞作品では、半数ほどがこういった社会課題にひも付いたアプローチを包含しており、やはり「やっぱそれはいいことだよね」という共感による評価が高かったことがうかがえます。しかし、さまざまな社会問題があるものの、企業活動にダイレクトに結びつくような問題はそうそうありませんし、あまり遠いところから無理やりに関連性をうたってもなんかちょっとね、
最近のカンヌって、全部が全部PRカテゴリーじゃねーの?

冒頭と申し上げた通り、ソーシャルグッドの概念自体は普遍性を持つものであり、多くの人が「それいいね」と思うのは、ある種当然のことです。あとは、どこまで企業活動との整合性を保てるのか、ということなのかもしれません。

社会性と売上への貢献

——贈賞式の結果をどう見たか。
全体としてソーシャルグッドの作品が多い印象を受けた。社会性を意識したものが多く、短期的なプロモーションや売上への貢献にフォーカスしたものよりも、長期的なブランディングを目指したものが主流になっている、と感じた。Dove “choose beautiful” の事例をはじめ、ユニリーバの作品やCMOが登壇したセミナーからは特に、社会課題の解決に対する使命感が感じられた。

——社会性と売上への貢献は両立するか。
マーケターとしてはジレンマだと思う。短期的な投資回収と社会貢献を通じた長期的なブランディングの両立は難しい。しかし受賞作にはビジネスに着地している事例がいくつもあり、生活者はマーケターが思っているよりも、企業の芯の部分を見ているのではないか、と期待も感じられた。下着メーカーとして「For Woman, For Lady」ということも考えていかなければならない、とも感じている。
クライアントが見たカンヌ2015—ソーシャルグッドの潮流に刺激!

ワコール広報・宣伝部の方の簡単なインタビュー記事です。

これはまったくおっしゃる通りで、ソーシャルグッドや社会全体のイノベーションを目指す「ソーシャルデザイン」という概念もそうなのですが、投資フェーズとしては長期の事業プログラムです。

CSRというと、リスクマネジメントがメインで、オポチュニティ(攻めのCSR)となると、どうしても小手先のキャンペーンになりがちということもあります。ただ、僕は社会性と経済性の両方を追うことはできると考えています。

このあたりは企業によってとなりますが、どこまでCSR・社会貢献・環境などの部門がマーケティング部と連携できるか、といういわゆる「統合思考」がそれを可能にするでしょう。統合思考については、また別の機会に詳しく説明したいと思います。

カンヌライオンズ・現地レポート記事

Advertimes(アドタイ)

広告・マーケティング系メディアアドタイで「特集」が組まれているので、興味がある方はどうぞ。ちなみに、僕が気になった記事をいくつかピックアップします。

カンヌライオンズ2015、いよいよスタート!ライオンズヘルスの結果が発表に
ソーシャルグッドに辟易した人こそ、新設「Glass Lion」を見るべき!?
カンヌ6日目—イノベーション部門/クリエイティブデータ部門審査員インタビュー

その他のメディア

アドタイ以外でも広告・マーケティング系の人の現場レポートが上がっています。僕がわかりやすかったのは以下の記事です。

世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」訪問レポート 世界の経営とマーケはここまで進化!
感動、爆笑、しびれるアイデア〜全部見せます。世界中のクリエイターがしのぎを削る「広告」最前線
「1人ができるなら、全人類73億人ができるんだ」〜「個」の力を見つめ、社会を変える最高のCM

まとめ

“何か社会的なコミュニケーションやキャンペーン”の定義が、CSRでも社会貢献でもソーシャルグッドでもソーシャルデザインでもいいですが、企業はゴーイングコンサーン(事業継続)が前提にあるため長期的視点は重要です。ソーシャルグッドやCSRは長期投資が前提となるため、経営効果を短期回収できる事業スキームとの時差は少なからずあります。

本来は、すべての事業活動がソーシャルグッドにつながる活動である、というのが理想。その事業活動の結果、ステークホルダーからの信頼を勝ち取れるわけです。

広報・マーケティング系の方で当ブログを読む方は少ないと思いますが、CSR担当者もカンヌライオンズの動向を考慮しながら、CSRのコミュニケーションやキャンペーンを、軸のあるCSR活動として自社に根付かせていきましょう。

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