統合報告書ガイドラインのガイドライン
統合報告書制作において、ガイドライン(IIRC 統合報告フレームワーク)だけ従えば良いと思っていたら間違いです。
各種ガイドラインは“それっぽい”ことは書いてありますが、汎用的なものを想定されているため具体的な指示が少なかったりします。ですので、実際に制作する段階となって目次構成に入った時に、色々と揉めたりするわけです。
そう考えるとエビデンスというか、フレームワークを使って考えることで、一気全体イメージができたりするものです。というわけで、書籍「スチュワードシップとコーポレートガバナンス」(北川哲雄、東洋経済)を読み返していて、ハイスペックなフレームワークを見つけたのでシェアします。
書評:CSRはIRとの融合が必要!? 「スチュワードシップとコーポレートガバナンス」
新アニュアルレポートの作り方
1、企業理念・哲学
2、産業・企業の特性
3、歴史的経緯(過去と現在)
4、自己分析(強み、克服すべき弱点)
5、中長期戦略の課題と目標
6、ビジネスモデルとポートフォリオ
7、CEOメッセージ
8、研究開発の重点
9、マーケティングの効率性
10、従業員のモチベーション
11、ダイバーシティ&インクルージョン
12、地域社会との関係
13、環境への取組み
14、コーポレートガバナンス・システム
15、財務データ
16、財務政策
17、全体のストーリー性
引用:「スチュワードシップとコーポレートガバナンス」(北川哲雄、東洋経済)
統合報告書における統合思考と読者視点
書籍では「新アニュアルレポート」と書いてありますが、そのまま統合報告書にあてはめて考えることができます。この注意点は非常によくまとめられていますので、僕も次統合報告書制作のアドバイザーのお仕事があればパクって“我が物顔”で使いたいと思います。というか、CSR報告書も、細かいCSR関連データ開示はさておき、こうあるべきですね。
あと、北川氏があわせて指摘しているのですが「投資家はアニュアルレポートをさかのぼって見ない」ことを前提に作るべきという、趣旨の発言をしています。
これはCSR報告書や統合報告書制作に関るとわかるのですが、企業は去年発行分も知っているため「マンネリの回避」をしようとストーリーテリング(コンテクスト)箇所を次年度は省こうとする場合があります。
CSR報告書もそうですが、わざわざ去年のを見てから今年発行したものを見る人はそう多くはないのかもしれません。実際、僕もCSR評価をするときは、最新版だけしかチェックしません。
ユーザビリティといいますか、読者の行動やニーズを読み、自己都合にならないCSR情報開示にしたいものです。
まとめ
統合報告書には、「オクトパスモデル」や「6つの資本」など、従来のCSR報告書にはなかった概念が盛り込まれています。
当ブログでも再三お伝えしている通り、CSRコミュニケーション(ステークホルダー・エンゲージメント)にはコンテクスト(ストーリー、文脈)が非常に重要な要素となります。
今は今年度発行分の統合報告書やCSR報告書の制作に追われているCSR担当者の方も多いと思いますが、読者視点(ユーザビリティ)だけは絶対に忘れないようにしてください。読者視点がない読み物ほど、つまらないものはありませんから。
もちろん、「統合思考」と呼ばれるCSR以外の部門との意識・活動の統合や、価値創造プロセスのストーリー作り、マテリアリティ設定も重要です。詳しくは以下のまとめ記事もご参照ください。
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