CSRの攻めも守りも学べる入門書

「経営学を学ぼう」(中央経済社)を読んだので読書メモをしておきます。随分前に著者の1人である駒沢大学の山下祐介先生から献本いただいていたのですが、今読みました。先生ごめんなさい。

本書は「経営とは何か」という至上命題を様々な事例を交えて解説しています。

経営という括りの中で、「CSR」「環境経営」「非営利組織論」など、「企業経営は、CSRそのものである」僕の持論を見事にまとめたようなCSR解説書ともなっています。ここまで、社会性を加味した経営本ってあんまり見ないので中々新鮮な視点で読めました。

ここでは、CSRや企業倫理(ビジネス・エシックス)などの山下先生の執筆領域を中心にメモしておきます。山下先生、穏やかな方なのに、書いてあることは結構情熱的なんですね。むふ。

CSRという価値転換

ペイン氏(「バリューシフトー企業倫理の新時代ー」著者)の経営者がCSRや企業倫理に注目する5つの動機(理由)について引用してます。

1、危機管理
企業の不祥事・犯罪を未然に防ぐという動機

2、組織機能
CSRに取り組むことが企業自身の肯定につながり、組織文化形成につながるという動機

3、市場での地位確立
顧客の求めに誠実に対応し、評判を高め、市場において競争優位に立つという動機

4、社会での地位確立
企業市民としてCSRに対応し、社会との良好な関係を持つという動機

5、よりよい方法(a better way)
倫理的な価値観自体に価値を見出し、目的としながら、正しい事をすることに意味を見出すという動機

現代の企業経営において、CSRとは、表面上は5番なのですが、コンプライアンスやガバナンスなどは、1番・2番あたりの価値観が中心なようにも思います。

このあたりは経済的価値に結びつくものもあるし、そうでないものもあるし、それを踏まえた上で、どうやって企業経営をしていくかということなのでしょうね。

企業倫理

「企業倫理」論とCSR論は別物であるという解説が本書でされていますが、経営学的にはそうであっても、現場としては企業倫理ひっくるめてCSRな気がします。

また、この項では、CSR云々より、企業倫理について詳しく記述されています。こういう書き方見ると、先生はコンプラとかビジネス・エシックスとかからCSRに入った人なんだなぁとわかりますね。だからどうしたということもありますが。

「CSRとは何か」を学びたい人には、ちょっと物足りないですが“企業の倫理観”のあらすじを知るにはとてもよいと思います。

企業倫理の定義、企業倫理の内部制度化、法的責任と企業倫理などにも触れています。

先日書いた記事[MBA的なCSR(社会規範・道徳・倫理)を学べる本「10日で学ぶMBA」]でも触れたのですが、企業倫理を学ぶにあたっては、「相対的価値(相対主義)」がキーワードの一つになると思ってます。

相対主義とは、経験ないし文化の構成要素やそれに対する物の見方が、その他の複数の要素や見方と相互依存関係にあるという考え方です。経営と企業倫理はどのような相対的関係にあるのか。

詳しくは、本を読んでねってことで。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

僕らが企業倫理から学ぶものは何か。一言でまとめられないくらい様々な要素があるのですが、軽めに言えば、「誰と誰との約束」なのかって感じかな。企業と法なのか、企業と社会なのか、企業と個人なのか。

そのあたりの相関を知ることがまず一歩なのでしょう。もっとざっくり言ってしまえば「まっとうな企業経営をしましょうよ」ってのが企業倫理かなと。

ちなみに、駒沢大学の講義でも使われてるんですかね?僕も大学時代(9年前)にこういうテキストに出会っていたら、経営学の授業が楽しくなったのかな。そもそも履修したことがないんですけどね。

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