フェアトレードのおかしな真実

今回は、「フェアトレードのおかしな真実」(英治出版)の読書メモを。

結構面白かった。面白いというとヘンだけど、“真実”と“事実”が異なる場合があるというのを、まざまざと感じました。

企業がフェアトレードに取り組むにあたり、倫理(エシカル)の考え方が重要になってきます。しかし、自分の正義が社会全体の正義とは限らないのです。

「このコーヒーで、アフリカの貧しい人を救えます」は本当なのか?

「このアクセサリーで、恵まれない子どもたちが学校に通えます」は本当なのか?

フェアトレードはもちろん、BOP、ソーシャルビジネス、エシカルというワードに興味がある人におすすめ。

企業はなんとなくでフェアトレード関連のマーケティングを始めちゃダメっす。

フェアトレードのおかしな真実の雑感

とにかく痛快だった。

僕は、フェアトレード的なビジネスの“エシカル”と言われる側面が大好きです。日々、そういった情報をウォッチしています。

しかし、少なくともフェアトレードと呼ばれる取引は全然「公正」なものではない、というものもある。

例えば、某NGOは日本で100万円の寄付をしてもらっても、現地の現場に届くお金は10万円を切る場合もある、という話とか。現地の人に手渡しできないので、人や組織を間に挟めば人件費・運営費で幾分か減るのはしかたないとしても、1割はさすがにないやろ、という気持ちは今でもある。そのあたりは改善されてると願うばかりであります。

そういった感じで国をまたげばとくに“ピンハネ”的なビジネスが起きるわけですよ。もちろん、すべての取引がそうだとはいいません。しかし、ビジネスやマーケティングに本質的な社会的課題は、足枷になることもあるし…。難しいところです。

イギリスの事例

本当は全部のストーリーを全コピペしたいのですが、そうもいかないので、一つだけストーリーをご紹介します。

「エコに熱心なイギリス」という項では、産業化したフェアトレードについて書かれています。もちろん、産業化すること自体は、資本のレバレッジも期待できるし良いことです。

しかし、フェアトレード認証はタダではない。これが払えないからチャレンジを諦める農家も多いと言われています。フェアトレードといっても、認証機関や卸売業者などの管理費、広告宣伝費等に多くの金額が消える。

またフェアトレード=オーガニックではないそうです。環境負荷の高い生産方式をとる大規模農家も多いのが理由の一つだそうで。そうなると、中小規模の農家なかなか契約に入らない。つまり、「正しくやる≒正しいことをやる」という構図になりかねないということなのです。

ラベル(認証)があれば、消費者にはわかりやすいです。でも、フェアトレードの最低価格というものもあり、生産者のことを考えると…ね。

ちょっとわかりにくい解説で恐縮ですが、要は「管理費(人件費含む)」がかなりやっかいであるということ。当たり前ですが、これらの間接費は生産者には1円たりとも届きません。生産者との“フェアトレード”を考えるのであれば、場合によってはラベルがないもののほうが、生産者に多くお金がいくことだってあるのです。

肩書き大好き日本人は間違いなくラベル付き商品を買うでしょう。それは間違いではないですが、正解でもない可能性が高いのです

まとめ

いかがでしたでしょうか。

フェアトレードは “良いこと”である。これは間違いありません。

しかし、マーケティングにより過ぎてしまい、本来あったであろう崇高な想いが企業になくなってしまうのは残念でなりません。これは日本企業のCSR活動全般にも言える事かなと思います。

冒頭の「このコーヒーで、アフリカの貧しい人を救えます」の答えなのですが、救えない例もたくさんあるし、実際、救われる人もいる、ということです。

身近にある「人と地球にやさしい」というフレーズ“だけ”で世界は救えなさそうなのはわかりました。

世界を良くするフェアトレードと、さらに貧困を生みかねないフェアトレード(そもそもフェアではないのだけど)があるということをまずは知っておきましょう。

「お前、ぜんぜん本の内容がわからねぇじゃねぇか!」って思ったひとは、ぜひ購入して読んで見て下さい。英治出版さん、やりおるなぁ。「CSR経営の時代は終わった?経営の未来を見つめる良書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」」という記事も書きましたが、2013年は英治出版の豊作の年な気がします。すくなくとも、僕にとっては。