CSR広報

CSR/SDGsと広報

今年は何回か「CSR/SDGsと広報」についての講演をご依頼いただき実施しました。セミナー参加者の方をお話をさせていただくと、上場企業でCSR専任担当者がいない場合は、経営企画・社長室・広報あたりの部門の方が担当することになるのですが、多くの場合はCSR活動というよりも、どのように広報(情報開示)していくかが問題になっていたよう感じました。

企業規模や業種に関わらず、様々な場面でサステナビリティという概念の認知は広がっているとも実感していますが、CSR活動自体のマネジメントをあまりしない広報(PR)部門の方がどうなのか、というのは情報開示の側面を含めて、CSR活動の重要なポイントになります。

本記事では改めてCSRと広報の関係についてまとめたいと思います。

CSRと広報

CSR活動は社会/公共およびステークホルダーとのリレーションを形作るものでもあり、自社をより理解していただき信頼を獲得する行為でもあります。広報はPR(パブリックリレーションズ)でもあるので、そこはCSRとかなり近しい領域であり「PR ≒ CSR」という図式が成り立ちます。

あと「SDGs広報」というワードも出てきているようですが、これはごく一部の例を除き「SDGsウォッシュ」なことが多い印象です。「CSR広報」ならまだわかります。SDGsは“What”でありCSRは“How”であるので、SDGs自体が広報どうこうと表現するのは厳密には間違いかと。ただ言いたいことはわかるので、その場合は「SDGsに貢献するCSR広報」みたな表現が現実的でしょう。

CSRでは、ステークホルダー・エンゲージメントといいますが、活動自体はPRとかなり近い領域ではあります。みなさんも一度は目にしているかと思いますが、企業のCSR報告書や統合報告書ないしはCSRウェブコンテンツをご覧いただければ、大抵の会社はステークホルダー・エンゲージメント(ステークホルダー・リレーションズ、ステークホルダー・コミュニケーション、ステークホルダーダイアログ、ともいう)という項目を確認できるはずです。

コンテンツの広報と必然性

では届けるべき情報(コンテンツ)は、そもそも読まれる“必然性がある”ものなのでしょうか。ここはかなり重要でして、必然性を作ることがエンゲージメントにつながる要因となります。

例えば、SDGsにおけるストーリーテリングとは「必然性をデザインすること」でもあります。自社が、なぜCSRをしているのか、なぜSDGsに向かって動いているのか、ということを発信し続けることで、少なからずイメージで理解しやすくなるからです。

特にCSRやSDGsの概念は広範囲すぎて当事者意識を持ちにくいので、「なぜ今この話をしているのか」という背景・文脈を省略すると、誰にも伝わらない情報になってしまいがちなのです。また機能的説明よりも登場人物(人)を中心にした情緒的説明のほうがわかりやすいことが多いので、意識してみてください。

CSR活動は短期で成果を創出しにくいからこそ、ストーリー立てて、価値創出までの道筋を明確にし、直近ではコストになるということを、ステークホルダーに説明しなければなりません。壮大な言い訳であり、夢希望をまとめたものとも言えます。

3〜5年後、もっといえば10〜20年後をイメージして企業経営が行われていく中で、CSRを通じ「どうなるべきか」「どうなりたいか」を具体的な言葉で語らなければなりません。広報担当者こそ、自社のビジネスモデルをよく理解していなければならないというわけです。

参考事例

何はともあれ、今一度SDGsについて色々振り返っていただくことがよろしいかと。以下の記事を参考にしてください。SDGsの書籍等には書かれていない、現実的な課題や対応策、調査事例もまとめています。

SDGsへむけて日本企業が取るべき行動とは
SDGsの企業経営で参考にすべき調査事例とレポート7選

広報と企業価値向上

さて、CSRをビジネス成果でみると「企業価値向上」という表現がよく使われます。CSRにおける企業価値とは、手段でもなく目的でもなく、CSR活動を通じて実現した“成果”です。しかしCSRの文脈で企業価値向上というワードが使われると、CSR活動の目的を指す場合がほとんどです。これでは、CSR活動で適切な結果を求められるはずがありません。努力の先にある成果が尊いのであり、努力自体が尊いのではありません。

CSR/SDGsの広報となると、本来のCSR的な意義よりは「ブランディング」「マーケティング」「プロモーション」などの要素がでてきてしまうことがあります。それ自体が悪いわけでではないのですが、それらが業務遂行上の指標になってしまうと、ステークホルダーの中でも顧客の方に視点が行きすぎて、本来すべきだったすべてのステークホルダーへの開示がなくなってしまいます。

ステークホルダーへの“ラストワンマイル”が重要。情報を届ける最後の一歩の工夫ができる部署こそ広報PR部門だと思います。そこは組織としての広報が必要になってきます。コンテンツ自体はCSR関連部門と連携することが必要になってくると思いますが。

では、これを広報的側面、つまりステークホルダーとのリレーションの視点で考えれば、広報活動で企業価値を高めるには何をすればよいか、という設問が成り立ちます。ただ「CSR/広報で企業価値向上」というお題は非常に深い話になるので、関心がある方は以下の記事なども参考にしてみてください。

CSR/サステナビリティ・ブランディングにおける価値と戦略
ステークホルダー・エンゲージメントと企業価値向上の話
CSRはなぜ企業理念/経営理念の浸透に貢献できるのか

まとめ

話が色々とんでしまいましたが、私がいいたいのは、CSR部門と広報部門の真の融合が、今後のサステナビリティ経営に必要な最重要要素の一つであるということです。CSR的には“統合思考”というものです。

CSRはまだまだニッチな部署ですが、上場企業の広報がもっとCSRよりになるだけでも相当社会は変わると思います。CSR担当者の方は、広報部門との連携をより強化して、社内外のステークホルダーと積極的なコミュニケーションをしていきましょう。もちろん、社外だけではなく社内のステークホルダー(従業員)とのコミュニケーションも重要ですよ!

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