CSRとSDGs

2017年はCSR界隈でもSDGsが大盛り上がりの1年でした。2018年も継続してトレンドとなるでしょう。

なぜSDGsがこんなに盛り上がっているかといえば「グローバルスタンダードだから」です。ビジネス・セクター以外でもグローバルでも通じる数少ない“CSRの共通言語”の1つです。はっきりいって、現代のグローバル化された社会において、SDGsに対応しないのはダウンサイド・リスクはあってもメリットは皆無です。

先日、SDGインダストリーマトリクス(産業別手引き)の最新公式日本語版「ヘルスケア・ライフサイエンス産業」「運輸・輸送機器産業」が公開されて、来年はいよいよ様々な業界で実務的な話も進むでしょう。

さて、そんなSDGsですが課題や問題点も合わせて確認できていますでしょうか。様々な動きがあったSDGsに関して、企業が取り組むべきポイントをまとめみたいと思います。2017年のSDGs対応を振り返りながら、2018年のCSR活動のPDCAに生かしていただければと思います。

サステナビリティの本来の意味

サステナビリティ(持続可能性)には大きく2種類ありまして、企業が主語になる「コーポレート・サステナビリティ」と社会が主語になる「ソーシャル・サステナビリティ」があります。サステナビリティというワードを使った時、どちらを指すのか注意して文脈を探る作業が必要になります。まぁ、企業サイドの人がサステナブルという単語を使った場合、たいていは自社(企業)が主語になりますけど。

SDGsの「S」のサステナブルはまさに社会の持続可能性についてです。特定企業の“生き残り(≒サステナブル)戦略”についてのフレームワークではありません。このあたりを混同している企業事例もあり、結構問題なのではと思っています。

極論、企業がなくなっても社会はなくなりませんが、社会がなくなれば企業は存続できません。この大前提を理解していればいいのですが、企業は自らのエゴを無理やり社会価値に変換しようと試みているだけで、社会に存在させてもらっているという謙虚な姿勢はあまり見られません。

私もそうですが、ステークホルダーからみれば、多くの企業はなくなっても構わないのです。多少、不便や困惑があっても代替となる企業がありますから。だからこそ余計にSDGs対応が空虚に見えてしまうのかもしれません。

SDGsを言い訳に使わない

SDGs対応が安全な所からの啓発のみで終わってはなりません。それらは“平和ボケ”といわれる無責任な行いです。

これまでは自社の事業や活動とSDGsの関連性を整理する「事業対照表方式」の考え方は、それそのものが新しい価値を生み出しているわけでもないし、SDGsのどの課題解決にどれだけ貢献できるというものでもありません。以前から言っているとおり、結局は「具体的にどれだけSDGsに貢献しているのか」という成果(価値創出)が問われています。多くの日本企業は「SDGsに対応します!」とは言っていても「SDGsに貢献しています!」とは言わないですよね。

去年今年とSDGsの“サポート側”は沢山増えましたがプレイヤーはそれだけ増えましたでしょうか。これは企業担当者が真摯に考えるべきだと思うのです。SDGsに関しては、CSR支援の企業による勉強会・研究会・フォーラムなどのコミュニティの立ち上げが増えています。どこもそこまで差はないどころか、劣悪なSDGsコミュニティがあるのも事実で、企業担当者としては見極める目がないと無駄なリソース活用になってしまうかもしれません。

「SDGsへの企業活動、採択から2年で停滞か」という記事にもありますが、SDGsはそれ自体の盛り上がりはあるものの、成果にコミットメントしている企業はまだまだ少ないです。この“踊り場”の状態で2020年後半にいってしまうのでは?という懸念もあります。この事実を報じる人はほとんどいませんが、企業側も現実をもっと見ましょうよ。何か・誰かに踊らされすぎです。

SDGsの課題

SDGsの根本的な課題として感じているのは、「ローカライズ」と「予算」でしょうか。

課題としてはグローバルな指標の多くはローカル(それぞれの国や地域の現場)では役に立ちません。グローバルで通用させるために定義も指標もある程度の幅をもたせているからです。海外のステークホルダーと日本のステークホルダーでは、抱える社会課題が異なって当然。解決する方法も異なって当然。(一方は人口増加が問題で一方では人口減少が問題、など)

他の課題として、SDGsのゴール同士の関連性や達成のための資金不足なども世界で協議されているようです。目標達成するための予算は2030年までに年間500兆円以上の投資が必要ともいわれてます。年間ですよ?単純に国連加盟が200の国と地域としても、それぞれ2兆円以上負担しなければなりません。そうでなければ70〜80億人で「誰も取り残さない」は達成できないようです。それだけ大きな話なので、自分たちがどこまでできるかを明確にする必要があるでしょう。

もちろん、推進側は「SDGsにより新しいビジネスが生まれ利益が創出されるはず」という反論もあるでしょう。たしかにその“可能性”は大いにあります。私個人としても期待せざるを得ません。

実際に一部の企業ではSDGsによるイノベーションを生み出せるでしょう。でも一言いわせてもらうと、そのイノベーションの多くはSDGsがなくても起こっていたと思いますよ。理由は簡単です。SDGsは文字通り「目的(ゴール)」であり手段ではないですから。そうするとSDGsと新規ビジネスの“因果関係”の証明は難しいのかなぁ。

ゴールは決めたが、具体的な活動はほとんどできない。国内でも上辺だけの啓発活動がほとんどです。啓発や普及の活動はとても重要です。でも本来すべきは「ゴールに近づくための“行動”」が一番重要です。

べき論はMDGsで終わりしたはず。SDGsを叫ぶなら覚悟が必要です。それは私も例外ではありません。私は年齢的に“あがり”ではなく、2030年は40歳後半です。現役バリバリです。今後13年間、ガチで推進していきます。

SDGsの戦略的対応

いま日本企業の多くは「事業活動 × SDGs」でCSRを考えています。ファーストステップとしてはいいのですが、“後付け”ではアウトカムやインパクトは何も生まれません。未来志向の正しい方法としては「経営戦略 × SDGs」とか「マテリアリティ × SDGs」「リスクと機会 × SDGs」というような考え方が必要です。どうやったら成果を創出できるか、という視点です。

本来のCSR活動は企業価値創造のために実施されているはずです。ですのでSDGsに対応することがどのように企業価値向上に貢献するのかを考えなければなりません。

企業担当者にヒアリングをさせていただくと「SDGsにどう対応したらいいでしょうか」と、とても多く質問を受けます。来年はさらにそんな話を聞くことになると思いますので、さらなる戦略的対応も検討する必要があるかもしれません。このあたりは一言では語れないので、2018年中には書籍や論文の形でまとめて紹介させていただく予定です。

関連記事

CSRとSDGsを考える上でヒントとなるであろう過去記事も紹介いたします。情報量が多いのでお時間あるときにチェックしてみてください。

0、日本企業のSDGs表彰「第1回ジャパンSDGsアワード」(2017)
1、SDGsへの企業対応事例増加による、CSRの3つの課題
2、SDGsの日本企業対応事例と進捗レポート
3、SDGsの企業対応事例(面白ネタあり)
4、日本企業におけるSDGsの情報開示のポイント
5、SDGコンパスより使いやすい!? 「SDG Industry Matrix 日本語版」
6、政府も進めるSDGsはCSRとして成り立つのか
7、SDGsが企業CSRに与える影響は、意識高い系のそれと同じ?

まとめ

SDGsは、17のゴール(目標)、169のターゲット(課題)、232のインジケーター(評価指標)で構成されています。これをすべて覚えなさいということはありませんが、先を見据えて適切に対応する必要があります。

キーワードとしては「ミクロからマクロへ」「短期から長期へ」「部分最適から全体最適へ」というのがあるでしょう。かなり長くなってしまうので、また別の記事でこの辺りはまとめます。

SDGsに関しては、課題はたくさんあります。でも、だれかが実行し解決すべき課題ではあります。難しいと思いますが、私も含めて、みんなで解決していきましょう。

2018年はより多くの企業のトップコミットメントでSDGsに言及があります(色々あってどことは言えませんが)。ビジネス・セクターでは、来年も話題に事欠かないでしょう。二度手間や無駄足にならないよう、あなた自身の考えもきちんと明文化し整理しておきましょう!