女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
8月25日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称:女性活躍推進法)が成立しました。
女性活躍推進法の成立によって2016年4月1日から、女性活躍推進のための行動計画策定、届出、従業員への周知・公表などが企業に義務づけられます(従業員301人以上の企業が対象)。情報開示まで義務化されているのもポイントです。
CSRにも影響を与える法案ですので、企業に与える影響についてまとめてみます。法案まわりの詳細については以下のコンテンツを参考にどうぞ。
・首相官邸|人材の活躍強化 ~女性が輝く日本!~
・厚生労働省|女性活躍推進法特集ページ
・男女共同参画局|女性の活躍「見える化」サイト
法案ができたばかりですが、どこまで実効性のある法案として機能するのか。もちろん、一定の効果は間違いなくあるのでしょうが、もともと女性が少ない業界は戦々恐々でしょうね…。
企業に与える様々な影響について
法案は誰のためのものか?
政府は女性の活躍を推進し、企業は表面上はワーク・ライフ・バランスを掲げ、企業は共働きの増加をビジネスチャンスと捉えます。しかし、働く母親たちと話していると現状に疲れている人、怒っている人が少なくありません。彼女たちが直面する問題のほとんどが解決されていないからです。
<活躍法成立>働く女性冷ややか「そこじゃない」の声
誰のための「女性活躍」推進なのか。法案化による恩恵を受ける人、受けない人に分かれるのはしょうがないとしても、多くの人の課題が解決できていなければ意味がありません。国が相当動いての法案化だし、企業もこれからの行動計画や数値目標策定など、やらなければならないことが山積みです。
非正規雇用の女性は対象じゃない?
「新法は、非正規の人にとっても大きな意味を持つ」と強調する。任意事項ながら、「非正規から正規への転換」を問う項目も盛り込まれている。積極的に取り組む企業は、任意事項の中で開示を進めることで、非正規雇用者への姿勢をアピールできる。もしも再就職を考える人なら、非正規関連の項目を挙げている企業をチェックして、今後のキャリアアップの道を探るといいという。
「女性活躍推進法」でアナタの会社はどう変わる?
表現が難しいですが、女性管理職を増やすことだけが目指すべき所ではなく、僕もこの記事で指摘されているように、いわゆる派遣や非正規雇用の女性にどのような対応を取るかが非常に重要だと思います。
すでに、大手企業のダイバーシティ推進などの担当者は情報収集に動きだしているみたいですし、まずは同業他社や競合同士で情報の探り合いが進むんでしょう。
長時間労働の削減につながる?
1つ目は、女性管理職増加に向けた企業の取組みの拡充です。政府は、指導的地位を占める女性の割合を2020年までに30%にするという目標を設定していますが、平成25年版の男女共同参画白書によれば、平成24年の女性管理職比率は11.6%であり、目標の達成にはまだ大きな隔たりがあるのが現状です。
2つ目は、長時間労働削減に向けた企業の取組みの拡充です。独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば、日本の平均年間総労働時間は、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスといった諸外国に比べて長いことが示されています。
女性活躍推進法が企業に与える変化
日本総研のオピニオン記事です。この法律ができることで、女性管理職増加はもちろんのこと、結果的に、長時間労働改善にも着手する企業が増えるのでは、という話です。
もちろん、2つのポイントともこの法律の目指す所だと思うのですし、男性従業員の労働環境改善も間接的に進むとなれば、非常に喜ばしいことですね。企業としては、更に事業効率化しないと、対応人件費も含めて、結構なコスト増になるのが気がかり。
加えて言えば、女性活躍推進は単体で存在する“キャンペーン”ではなく、企業の重要な経営戦略です。それを半年で作り上げるのは不可能だとしても、今後の開示に向けてまずは社内の対応体制を作る必要はあります。
法案の実効性とは?
子育て支援の取り組みを認定する「くるみん」制度のような、女性活躍企業の認定制度の導入や、事業入札で受注機会を増やす優遇策も盛り込まれている。つまり、この新法で、各企業の女性活躍の見える化を進めたうえで、女性活躍企業を認定したり公共調達で優遇したりすることで、政府が女性活躍企業を支援することを明らかにしているのである。
この法律には罰則規定がないため、実効性を危ぶむ声も一方ではある。このステークホルダーへの「見える化」という仕組みそのものが、いい動機づけとなると政府は見ている。
女性活躍推進法が成立、1万5000社に課される数値目標の作成
CSRにおける情報開示は、毎年範囲が広がっている印象です。アウトサイドのステークホルダーとしては、情報開示をしてくれないと企業評価をしようがないので、情報開示へのプレッシャーは高まることはあってもなくなることはありません。
ただ、半年たらずで適切な開示が必要ということは、ほぼ現時点の数字が反映される形になるため、ヒドい数字の企業は本当にヒドいだろうし、企業担当者は胃が痛くなる思いなのかもしれません。
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あとは、内閣府男女共同参画局の『「女性の活躍」に関する情報開示先進企業によるCSR・統合報告書における記載』(PDF、2015)のデータも興味深いので、参考資料にどうぞ。
まとめ
女性従業員に対して、様々アプローチが求められる企業。ますます、CSR部門と人事部門の“統合思考”が重要になってきそうです。
また、現場としてそれが実践できたとしても、義務とはいえ、どのようにCSR報告書や統合報告書で情報開示をすればいいか悩みますよね。今のタイミングでの法制化なので、2016年発行の各種報告書にも記載されるだろうし、前例がないので制作サイドにも悩ましい問題であります。
従業員が300人未満の会社にもそれなりに影響がでるだろうし、形骸化させず実効性を担保させた取組みとなるのは、もう少し先の話なのかもしれませんね。