東洋経済「社会貢献支出ランキング」
先週発表された、東洋経済の「社会貢献支出ランキング」の話題をシェアします。2014年6月時点(2013年度データ)の数字となっています。
■社会貢献支出の多いトップ50社とは?トヨタ224億円、サントリー81億円etc
記事では、復興支援の取組みも合わせて紹介されています。昨年のまとめ記事「最新CSR系ランキング「有給取得率300」と「社会貢献支出50」(2014)」もご参考までにどうぞ。
今回のランキングも「社会貢献・支出額」と「社会貢献・支出率」という2つのランキングとなっています。やっぱり「社会貢献度が高い企業」ってカッコいいですよね。
社会貢献・支出額ランキング
2015年のトップ10
1位、トヨタ自動車(224億円)
2、サントリーホールディングス(81億円)
3、アステラス製薬(80億円)
4、JT(78億円)
5、NTTドコモ(71億円)
6、キリンホールディングス(70億円)
7、日本生命保険(57億円)
8、三菱商事(39億円)
9、キヤノン(39億円)
10、ソニー(35億円)
(社会貢献支出の多いトップ50社とは?トヨタ224億円、サントリー81億円etc)
今年もトヨタ自動車がダントツとなっております。小規模な上場会社の年商くらいの金額ですよね…。記事でも触れられている通り、事業規模が大きい超大手企業がこのランキングに入るため、CSRの総合評価としてのランキングというわけではありません。
2014年のトップ10
1位、トヨタ自動車(137億円)
2、NTTドコモ(83億円)
3、冨士フィルムホールディングス(83億円)
4、キリンホールディングス(63億円)
5、JT(62億円)
6、資生堂(54億円)
7、三菱商事(50億円)
8、キヤノン(46億円)
9、日本生命保険(40億円)
10、武田薬品工業(40億円)
(企業の社会貢献支出「トップ50」)
ちなみに上記が、去年のランキングです。トヨタ自動車、NTTドコモ、JT、キリンホールディングス、日本生命保険、三菱商事、キヤノンの7社は今年もトップ10入りですね。素晴らしいっす。
2014年のデータと比べるとわかりますが、上位企業の支出額のレベルが今年は上がっています。2016年はどうなってしまうのか…。
社会貢献・支出率ランキング
2015年のトップ10
1位、エステー(13.3%)
2、ファンケル(12.5%)
3、HIOKI(10,8%)
4、ヤマトホールディングス(7.5%)
5、資生堂(7.3%)
6、森永製菓(6.9%)
7、ライオン(6.3%)
8、日本マクドナルドホールディングス(5.8%)
9、大日本印刷(4.9%)
10、キリンホールディングス(4.7%)
※(%)は、経常利益に対する社会貢献額の割合
(社会貢献支出の多いトップ50社とは?トヨタ224億円、サントリー81億円etc)
ふむ。「社会貢献・支出額」トップ10も、「社会貢献・支出率」トップ10にも入っているのはキリンホールディングだけになっちゃいましましたね。
2014年のトップ10
1位、JUKI(169.8%)
2、イナリサーチ(100%)
3、アドバンテスト(26.1%)
4、蝶理(21.3%)
5、エステー(13.54%)
6、ファンケル(11.73%)
7、マツダ(9.4%)
8、川崎汽船(9%)
9、資生堂(9%)
10、HIOKI(8.7%)
(企業の社会貢献支出「トップ50」)
昨年に引き続き、今回のトップ10に入っているのは、エステー、ファンケル、HIOKI、資生堂の4社。昨年は、赤字でも社会貢献支出をやめない企業が上位にランクイン。
株主としては、納得できない人もいるとは思いますが、利益がでたら支出を増やせば良いという、本来の趣旨とはことなる予算配分を行なう企業が現実的には多いです。
本来、何かしらの目的があり社会貢献支出しているはずです。さすがに赤字だったら支出が難しいというのはわかりますが、芯がないというか、まさに「富の再配分」的な価値観だけが一人歩きしているようにもみえます。
社会貢献支出の本質とは?
雑感
もちろん、単純に社会貢献支出額やそのその割合が多ければ優れているというわけではありません。マクドナルドは優れた社会貢献活動を以前からしているものの、不祥事などにより信頼の失墜を招いており、社会貢献活動のゴールの一つでもある「信頼される企業になる」が達成できてないように思います。
インパクトの大きさを考えれば、サプライチェーンマネジメントによる取引企業の実態把握を含めて、人の支援よりまずは自分たちの足場を固めることに予算を使ったほうがよかったのでは?とも見れます。
CSRは「リスクと機会(オポチュニティ)」や「守りのCSR、攻めのCSR」という区切り方をしますが、社会貢献活動は「機会(攻めのCSR)」、リスクマネジメントは「リスク(守りのCSR)」への対応となり、そのバランス感覚も考えるべき、という教訓と捉えるべきでしょう。
東洋経済の記事では、復興支援の取組みと合わせて活動紹介をしていますが、集中復興期間が終わる2016年以降は、一部の企業を除き、社会貢献活動としての支援は徐々に落ち着くのではないか、と僕は予想しています。
売上の一部を社会に還元する「富の再分配」的な社会貢献だけではなく、事業や経営効果のあるCSRの取組みに更に注目が集まるでしょう。このあたりの考え方は、皆大好きなCSV的価値観とも言えるかもしれません。
CSRと社会貢献の違い
CSRと社会貢献の違いとは何か、という類いの質問はよくされますが、CSRとCSVの差と似たような感覚だと僕は考えています。CSVの社会的価値や社会的責任はとは何かを考えるとわかりやすいかもしれません。
CSR関係者がいう社会貢献とは、ざっくりいうと「慈善事業・フィランソロピー・メセナ」などと定義されることが多いです。そしてCSRとは、社会貢献活動も含みますが、もっと広い領域(ステークホルダー)における企業の社会的責任を指します。
CSVは経営戦略なので、社会的責任論とは厳密には異なりますが、イメージとして「CSRと社会貢献」の違いは、「CSVとCSR」の違いを理解することでその差がわかるかなぁと。
CSVに関しては、以下の記事もまとめていますので参考にしてみて下さい。
・三方良しとは、現代的解釈をするとCSVの意味になる?
・社会的責任(CSR/CSV)の意味・定義って結局なんなの?
・マイケルポーターのCSV(共有価値創造)を再考するための良記事8選
・CSRコンサルタントが選ぶ、CSR/CSVのおすすめ本・書籍45冊
・CSVとCSRとマーケティングの絶妙な関係について
まとめ
社会貢献支出をどう社内外へのインパクト(影響)につなげられるのか。そこが一番のポイントになるのかもしれません。
事業活動である以上、社会貢献活動やCSRにも戦略性は必要だし、そうでなければステークホルダーも納得できないと思うんです。
今後も、CSRや社会貢献領域の情報開示要求は高まる一方です。支出額や支出率が素晴らしい企業の方々は、ぜひそのインパクトを世の中に知らしめるべく、情報開示にも力を入れていっていただければ、より企業価値向上につながるかと思います。
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