ISO26000人権

ISO26000の人権問題

日本企業が苦戦しているというCSRにおける人権問題。最近はどの企業の担当者と話をしても話題となる項目です。

CSRの国際規格である「ISO26000」では、原則として7項目、中核主題として7項目を挙げており、主題の7項目にそれぞれ課題として4〜8項目の事柄を挙げています。

CSRの枠組みとして、企業の屋台骨としてのISO26000という特徴・意味もあります。また、日本企業の多くのCSR報告書では、ISO26000チェック表(CSRチェックリスト)をうまく使い、対応表を載せています。

海外を含め、最近はGRIをガイドラインとして準拠・採用したり、統合報告書の中でふれたりもしている人権の項目。企業の社会的責任として対応すべきものとはわかっていても、なかなか…。

というわけで、一般論になってしまいますが、例として今回は人権に関する考え方をまとめてみます。

ISO26000/中核主題「人権」

人権を認識し、これを尊重することは、法支配、ならびに社会的な正義および公正の概念に不可欠であり、司法制度のような社会の最も基本的な制度の基礎となるものと広くみなされている。国家には人権を尊重し、保護し、満たす義務および責任がある。また、組織は、自らの影響力の範囲内を含む、人権を尊重する責任を負う。(ISO26000[2010]より)

課題1、デューディリジェンス
課題2、人権に関する危機的状況
課題3、加担の回避
課題4、苦情解決
課題5、差別および社会的弱者
課題6、市民および政治的権利
課題7、経済的、社会的および文化的権利
課題8、労働における基本的原則および権利

まぁ、ISO26000の本読んでCSR担当者が実践できればいいのですが、これって読むだけでも難しいっす。国際的なガイドラインなだけに、とても抽象的なまとめ方となっており、少なくともCSRと人権に関するコンテクストを理解した人だけが“読める”内容なのかもしれません。

今、関わっている案件でもなのですが「人権」と「労働慣行」の差も難しい。何をどちらの項目で開示するかは、結構悩む所かと思います。サプライチェーン・マネジメントでは、両方入るし…。人権尊重が「社会正義である」ことはわかっていても、全社員が理解するには時間がかかりそうです。

人権課題の特定とアクション

■課題1、デューディリジェンス
【課題】人権リスクの特定、人権尊重 → 【アクション】人権方針作成と見直し

■課題2、人権に関する危機的状況
【課題】人権リスクの特定、人権尊重 → 【アクション】人権方針作成と見直し

■課題3、加担の回避
【課題】サプライチェーン・マネジメントの強化 → 【アクション】CSR調達推進企画の立案

■課題4、苦情解決
【課題】ステークホルダー・エンゲージメントの強化 → 【アクション】人権侵害の被害者の救済策立案

■課題5、差別および社会的弱者
【課題】 ステークホルダーの人権リスクの特定 → 【アクション】行動規範作成と社内外への浸透

■課題6、市民および政治的権利
【課題】 人権リスクの特定、人権尊重 → 【アクション】人権方針作成と見直し

■課題7、経済的、社会的および文化的権利
【課題】 人権リスクの特定、人権尊重 → 【アクション】コミュニティにおけるCSR調達推進

■課題8、労働における基本的原則および権利
【課題】強制労働・児童労働・差別の禁止 → 【アクション】人権方針作成と見直し

例えばこんな感じでしょうか。ISO26000の導入コンサルティングや、CSR報告書制作アドバイスからのアクションプラン作成などは、上記のような内容をもっとガッツリやっていきます。

ポイントは、抽象的なガイドラインをどのように解釈し、自社の行動計画に落とし込めるかです。やってないのに、あたかも対応しているように報告書に載せるのは詐欺ですから。実際、CSR推進企業と呼ばれる会社でも内部なんて……おっと愚痴はやめておきましょう。

特に人権方針なんてすぐにできるものでもないし、計画的に進めて行きたい所です。

まとめ

日本人が人権というと道徳的な配慮みたいなものがありますが、結構、CSR調達とかサプライチェーンマネジメントの領域ですよね。

ISO26000とにらめっこしながら、第三者ときちんと話をし、活動計画をまとめていきましょう。少しずつでもまとめていかないと、いつまでたってもCSR報告書等で開示できないですからね。

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