ファーストリテイリングの最新CSRレポート
ファーストリテイリング(ユニクロ)のCSR報告書の最新版が発行されたのでメモを。社会貢献・CSV・ソーシャルビジネスにも積極的に取り組む中、どんな情報開示があったのでしょうか。
先日「ファーストリテイリング・柳井氏も語る「CSV経営」」という記事にも書きましたが、社長はCSV(共有価値創造)というワードも使っているし、ブラック企業問題もあったし今後は更なる情報開示をしていくのかもしれません。
最近は僕も寄稿した『宣伝会議2015年3月号』でも、ユニクロのCSVということでフィーチャーされています。ファーストリテイリング(ユニクロ)さん、CSVで盛り上がっています。
ただ、今回のCSR報告書(CSRレポート)にはCSVという単語は出ていないみたいです。CSRでさえ誤解があるワードなのに、CSVまで登場したら、読者の誤解を招くだけなので、僕は良いことだと思います。では、拝見させていただいた雑感を以下でまとめます。
CSR情報のインフォグラフィック
CSR報告書(統合報告書)を発行で増えているデザインが「インフォグラフィック」によるデータ提示です。2014年から、本当に増えています。
当記事のサムネイル画像でも使わせてもらったような表現です。エクセルの表をそのまま貼付けました!というのは、数字が細かくて、全体像を把握するのに時間がかかります。そうすると、大抵の人は読み飛ばしてしまうので、要点となる数字だけ完結に伝える方法としてインフォグラフィックが浸透していると。
海外のCSR報告書は余白とか、インフォグラフィックとかうまく活用しているデザインが多い印象がありますが、日本のデザインはまさに国民性を反映したような、真面目で丁寧な作りが中心。
一概に悪いとは言えませんが、読み手としては、余計な情報は必要なく、だいたいどんなことをしているかわかればいいのです。だって情報量が多過ぎても覚えられないもん。何回も読むものではないし「わかりやすさ」ってすごく重要だと思っています。
全体的に写真や図解も多く入っていて、読みやすいものでした。BtoC企業の場合はこれぐらいがちょうどいいような気がします。
CSRのグローバル化とは何を指し示すのか
社会貢献活動や人材関連の情報開示もありキレイにまとまっているのですが、人権やサプライチェーンの労務問題に関しての情報がちょっと少なかった印象。
日本でも世界でも労働問題の話題が多かった企業さんなので、消費者の情報ニーズとしてもある中、ちょっと残念だったかな。
世界的にもCSR領域で注目が集まるのが「人権・労働慣行」。これは、国際的なCSR関連ガイドラインや調査機関のCSR評価項目を見れば一目瞭然。
できれば、対応企業が世界中で増えている「GRI」やCSRの国際規格である「ISO26000」などの対応表があるとよりわかりやすいものになったのかと思われます。グローバルな企業なのであれば、国際ガイドラインでの対応は必須となるでしょう。
あと、気になるのはソーシャルビジネスである「グラミンユニクロ」の動向。報告書によれば、戦略のピボットはあったものの店舗数も拡大しているとのこと。日本企業のCSR報告書で海外でのソーシャルビジネスを紹介している所は限りなく少ないので、とても素晴らしいと思います。
CSR活動プロセスの情報開示
これはファーストリテイリングだけではないのですが、プロセスの情報開示が少ない企業が多いように感じています。
「インプット」→「アウトプット」→「アウトカム」→「インパクト」という、CSRのフローやプロセスの解説がないので、ただのCSR活動紹介で終わってしまうパターンです。
なぜ、このマテリアリティ(重要項目)を選んだのか、そして、それによって生み出される社会的価値は何か、というどちらかというと定性的な情報です。ストーリーと言う人もいます。
特に株主・投資家も読者ターゲットとなれば、ESG情報の特にG(ガバナンス)の部分の情報開示は必須です。でないと、スクリーニングする時に、まっさきに足切りされますよね。ガバナンスがしっかりしていない企業経営は株が安定せずリスクが高いとみなされますから。リスク開示をしないことがリスクになるとも言えます。
このあたりは、「非財務情報(CSR情報)開示動向からみるCSR報告と投資評価」、「投資家目線の情報開示とは–投資にCSR/ESG情報は必要か」、「SRI(社会的責任投資)の浸透で広がりつつあるCSR/ESG情報開示要求」という記事にもまとめていますのでご参考までに。
まとめ
ただ、一点良く分からなかったのは「ユニクロのCSR」と「ファーストリテイリングのCSR」の差です。
検索ワード調査しても、「ユニクロ CSR」で検索する人が多いみたいだし、どこまで他ブランドも含めたCSR活動かとか、もう少しプロセスと情報の連動性をもたせていただけると読者としてはわかりやすいかなと思いました。トータルではよく考えられている内容だったと思います。
僕は1人のユニクロ・ユーザー(20年以上)として、CSRは非常に気になる所です。ちなみにワイシャツの割合は、無印良品のオーガニックコットン・シャツが多いのですが、ファーストリテイリングの人には内緒です。
あなたもぜひ、いつも着ている服のブランドのウェブサイト(CSRコンテンツ)をチェックしてみて下さい。何か新しい発見があるかもしれませんよ?
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