SROI(社会的投資収益率)とは
NPO界隈ではボチボチ話題になっているのですが、CSR界隈ではイマイチなリアクションであるSROI(Social Return on Investment、社会的投資収益率)という概念。
SROIとは、社会的投資収益率と訳され企業活動の社会的リターン(ソーシャルリターン)を定量化する考え方です。社会的インパクト評価ってやつです。ざっくりいえば、社会における最小単位(人など)にフォーカスし、その変化を数値化することで社会の変化を計測するというもの。
今回は、そのSROIを企業ではどう使っているのか、という事例を紹介します。
どのCSR担当者と話をしても必ずといっていいほど話題に上がる「CSRの評価方法と効果測定」。定量化しにくい社会的インパクトをどうのように評価し測定していくのか、という課題は誰もが興味関心のある所でしょう。
昨年『ここテストにでますよ!SROI(社会的投資収益率)を理解するための3つのポイント』という記事でもまとめたので、事例より概要ももっと知りたいという方は参考にどうぞ。
SROIの考え方と使い方
SROIのインパクト評価手法
こうした社会的投資の動きを支えるのが、社会的インパクト評価の枠組みである。通常の財務概念では赤字の非収益事業でも、実際には外部価値とされる公的負担等を含めれば、トータルの価値では大きな社会的便益を生み出すケースも多い。欧米では、例えば「社会的投資収益率」(Social Return on Investment, SROI)等のインパクト評価手法が普及しつつある。
社会的投資が生み出すイノベーション 行政コスト減らす「投資」に世界が注目
SROIに詳しい伊藤氏の解説です。元記事にもSROIを使った事例がいくつか紹介されているので参考までにどうぞ。社会的投資をするには、そもそもどれくらいのインパクトが出せそうなのかを考慮する必要があります。社会的投資を呼び込むためにも、SROIの考え方は重要なポイントとなってきますね。
あと、これはCSR全般にも言えることですが、実施した活動の社会的意義のみで語られるCSR活動も多く、その社会的インパクトでCSR報告がされない例もたくさんあります。
KPIなどの指標や測定方法を決めないで実施するんだから、そりゃ、CSRの評価方法も効果測定もあいまいなままになってしまうわけです。
SROI事例:マイクロソフト
マイクロソフトが実施した若者UPプロジェクトでは、若者への就業支援プログラムへの参加者数というOutputではなく、それにより生まれた実際の就業数を成果とし、その社会的便益を給与向上、社会保険料の増加、税収の増加などの視点で貨幣換算を行い、SROIの数値を算出しています。【実施報告】SROI勉強会を開催しました
この手の勉強会ではたいてい紹介されるマイクロソフトの事例。それだけマイクロソフトが先駆的で実践的だったというのは言うまでもありません。
『社会的投資収益率6倍! SROIを活用した若者UP評価を公開しました!』という、育て上げネット・工藤氏の紹介記事も参考になりますのでどうぞ。
SROI事例:損保ジャパン
株式会社損害保険ジャパン(社長:櫻田謙悟、以下「損保ジャパン」)および日本興亜損害保険株式会社(社長:二宮雅也、以下「日本興亜損保」)は、株式会社公共経営・社会戦略研究所(社長:明治大学経営学部教授 塚本一郎)および株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ(代表パートナー:熊澤拓)の協力のもと、生物多様性の保全活動を行う「SAVE JAPAN プロジェクト」の社会的投資収益率(以下「SROI」)分析※を用いた社会的価値の算出を行いました。
国内初、環境保全プログラムにおける社会的価値の算出~「SAVE JAPAN プロジェクト」の3年間の活動成果を見える化~
注目したいのが、この「イメージ図(PDF)」です。非常にわかりやすいインフォグラフィックとなっており、CSR活動プロジェクトの全体像が数字で理解できます。さすが、熊沢さんですな。
リサーチに強いCSR支援をする会社がいくつか出てきており、今後も増えてくると一気に概念が浸透するんじゃないかなぁ、と勝手に想像しております。
ただし、ここまでしっかりしたレポーティングにするには、それなりの費用と時間がかかります。CSR関連の予算があまりない多くの企業では、そのままの形で導入することは難しいでしょう。もっと簡略化した、SROIのフレームワークが現場には望まれます。どなたか作って下さい。
まとめ
細かいことはさておき、CSRのフロー「インプット →アウトプット →アウトカム →インパクト」はきちんと測定していきましょう、ということですね。IIRCオクトパスモデルでいえば「インプット →ビジネス →アウトプット →アウトカム」です。
CSR活動に、どれだけのリソースを投下して(インプット)、どれだけ直接的な影響が出て(アウトプット)、それによるステークホルダーの変化があり(アウトカム)、ステークホルダーの変化で社会がどう変化したか(インパクト)、という流れです。つまり、「いくら投資したら、どれくらい社会が良くなるのか」のプロセスを算出しましょう、ということです。
第三者は企業のCSR活動において、そのプロセスを知ることは開示された情報からしか知ることができません。
株主を含めたステークホルダーへの説明責任を果たすために、このSROIという考え方を積極的に活用していきましょうね。
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