CSRはただのイメージアップや金食い虫ではない
昨日、「社会貢献で儲かって、何が悪い!CSRはただのイメージアップや金食い虫ではない」という、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山さんの記事が話題になっていたので共有します。
入山さんの書籍の読書メモ「CSR経営の時代は終わった?経営の未来を見つめる良書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」」にも書いた通り、この書籍にも同様のことが書いてあります。今回はウェブメディアで初めて?このまとめしたということでしょうかね。
入山さんの記事から重要な示唆を引用させていただきながら、儲かるCSRについて考えてみましょう。
っていうか、言葉遊びではないですけど、「イメージアップにしかならないCSR活動」ばかりしているから、「CSRがイメージアップにしかならない」と外部ステークホルダーに判断されるだけな気もしますけどね…。CSRの内容としては、BtoB企業・BtoC企業どちらもあてはまると思います。一応はCSRが企業利益に貢献するのですが…。
CSR専門家(CSR専門誌・CSR専門ウェブメディア)としては、非常に気になるポイントでございます。
CSRは業績にプラス
なぜ「CSRは業績にプラス」になり得るのでしょう。経営学では、主に2つの説明がされています。
第1に、「CSR活動は、周囲のステークホルダーからの評価を高め、それが好業績に繋がる」という説明です。例えばCSRが顧客に評価されれば、顧客はその企業製品を積極的に買うかもしれません。より優れた人材を獲得しやすい可能性もあります。行政のサポートも得やすくなるかもしれません。
第2に、「CSRは自社の人材強化に繋がる」という主張もあります。CSR活動を通じて多様なステークホルダーと交流できるので、従業員や管理職の知見が広がるという意見です。また、「CSR活動をすると社会全体のことを考えるようになるので、経営者・管理職が将来を見通す力を養える」という主張もあります。こういうことが、長い目で見た企業競争力の強化に繋がるというわけです。
これは、経営学というか、CSRの現場でも同様のメリットの話が多くされているので、この視点に関して反対の人は少ないでしょう。ただ入山さんが指摘しているとおり、現実はそう簡単な話ではないのです。
そこでセルバエス達はさらに統計分析をし、その結果として、広告費を多く使うタイプのいわゆるBtoC系の企業で「CSR→業績」のプラス効果を確認したのです。逆に広告費をあまり使わないBtoB企業では、「CSR指数が高いほど、業績はむしろマイナス」という結果になりました。
私への相談でも多いのですが、CSRにおいては、BtoB主体企業かBtoC主体企業かで、見せ方が大きく変わると言われています。
特にCSR報告に関しては、BtoC企業であれば、CSR報告書でいいのですが、BtoB企業の場合は、会社案内やIRのほうにCSR報告をよせる傾向があるように思います。
顧客が一般生活者ではないので、全方位的なマス・ターゲットのCSR報告書はインパクトをなさないのではないか、という視点ですね。業種によるとも思いますが、建設・素材・部品などの業界は特にそういう傾向がありそうです。そう言う場合は、会社案内やIR報告にCSR情報を掲載するという選択肢がでるのかなと。
まぁ、業種等により偏りはあるものの、BtoB主体企業かBtoC主体企業かによって、マテリアリティ(重要項目)やコミュニケーション方法などが変わってくるのは間違いないと思います。
外部ステークホルダーとの「コミュニケーションの場」
重要なのは、本稿で紹介した「イメージ効果」「情報開示効果」「保険効果」のいずれも、「外部のステークホルダーに、自分たちのCSR活動をきちんと説明すること」が前提になっていることです。だからこそ、プラス効果が得られるわけです。そう考えるとCSRとは、企業と外部ステークホルダーとの「コミュニケーションの場」の1つと捉えるのが良いのかもしれません。
もちろん、多くの企業がCSRのような社会貢献を目指す場合、その出発点は「善意」であり、あるいは「他社がやっているから」なのかもしれません。しかし善意の結果としてのCSRで「稼げる」のであれば、それは悪いことではないのではないでしょうか。
唯一解説が不十分なのは、内部のステークホルダーの話でしょうか。
業績を上げる(売上を上げる)には、外部との商取引が必要ですが(当たり前)、CSR活動によるES向上などによる生産性アップなど、ケイパビリティ的な考え方です。
このあたりが経営学として調査されているかわかりませんが、外部ステークホルダーとのコミュニケーションが重要ということは、再認識できました。
※引用符内はすべて「社会貢献で儲かって、何が悪い!CSRはただのイメージアップや金食い虫ではない」より引用
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ただこれも「手段と目的のメタファー」なのかなと思います。だって、儲けたい“だけ”ならば、通常の営業活動やマーケティングをしたほうが、企業業績にプラスになるでしょ?「儲けること」が目的なのであれば、CSRではなく営業をすることが本来優先されるでしょ?だったらお世辞にも営業効率が良いとは言えないCSR活動で儲ける必要はないじゃん。
つまり、「儲かるCSR」の考え方の優先順位が重要かと思っています。いつも言っている通り、Whatではなく、Howなのです。「何か、儲かるCSR活動をしよう」ではなく、「どうやって、今しているCSR活動を業績に反映できるか」を考え実行しようという話なのかなと。
儲かるCSRについては、色々な視点があると思いますが、まずは以下の記事をご参考いただき、あなたの考えを深めていただければ幸いです。
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