トップのCSRの理解
今回はCSR・サスティナビリティにおけるリーダー論について興味深い記事をメモしておきます。
CSRの社会浸透云々の話はありますが、結局、社内にCSRの概念を浸透させるには、経営者と経営層がCSRを理解している必要があります。
CSR活動の多くがボトムアップでもトップダウンでもいいですけど、見せかけだけではない、覚悟をもったトップの行動が必要です。トップが理解していないものを社内に浸透させるのは不可能でしょう。
CSR報告書などでは、CSRトップメッセージ(CSRトップコミットメント)などが書かれてますが、机上の空論も多いのが残念なところ。
いくつかの調査データを踏まえながら、リーダーはどうあるべきか、改めて考えてみましょう。
経営の長期志向性
ロングターム・オリエンテーション(Long-term Orientation以下、LO)とは、「経営の長期志向性」すなわち「かなり先の将来まで考えた経営の意思決定・投資をする姿勢」を指します。カナダHECモントリオールのダニー・ミラーらが2006年にET&P誌に発表した論文でこの概念を打ち出して以来、多くの経営学者が同族企業のLOに着目した分析を始めています。
同族企業の方が、むしろ社会に貢献する
引用記事では、経営学において、同族企業(創業家一族の関与が高い経営スタイル)が注目されているとのこと。
同族経営には、プラス面もマイナス面もあるけど、CSRの領域に関しては同族経営だからこその考え方などが影響し、高いパフォーマンスを得る事ができるのではないか、としています。
先ほど申し上げたように、創業家一族は会社を自らに重ねがちですから、「目先の利益」よりも、「企業(=創業家)が長い間安定して繁栄すること」が重視されがちです。すなわち、同族企業の方がLOを持ちやすいことが予想されます。
そして、LOを持った企業の方が社会問題への投資に積極的な可能性も主張されています。なぜなら、そういった企業は「長い目で見て社会が良くならなければ、企業も長い間安定して繁栄できない」と考えるからです。
同族企業の方が、むしろ社会に貢献する
この記事を書いた入山さんの著書の書評記事「CSR経営の時代は終わった?経営の未来を見つめる良書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」」も合わせて、興味深い論考ですので気になる人はチェックしてみて下さい。
リーダーの思考が“サスティナビリティ的”であること。当たり前のようでいて、CSRの現場ではあまり語られない話です。だって、CSR部スタッフでは、社長にサスティナビリティ(CSR)の素地があるかどうかを質問できる人はいないでしょ?
家族経営
家族経営で有名な企業の一つである「レゴ社」。
レゴってブロックを組み立てるアレです。1932年創業の世界トップクラスの玩具メーカー・レゴ。現在もレゴは上場しておらず、いまも創業者の孫がオーナーだということ。家族経営ならではの温かい社風はいまも変わらず、食事会や誕生日会などを開いては、社員同士で交流を図るという。
上記の経営の長期志向性という意味では、経営再建のために外部からCEOを招聘したこともありますが、オーナーの方針がブレないし、ケイパビリティ戦略(人材戦略)も筋が通っているようです。
こういう事例を見ると、確かに同族経営というか、創業家の力はプラスに働くと、ブレがない分強いなと思うのです。創業家の力がマイナスに働くと、ガバナンスもきかないし、クソみたいな企業の仲間入りとなってしまうという…ね。
同社のサスティナビリティ戦略については、「レゴ|社会的責任」(日本語)をご覧下さい。
参考記事
・ソーシャルグッドということ・・・レゴのブランディング
・グローバルな“家庭的企業”あの「レゴ」の本社に行ってみた
まとめ
いかがでしたでしょうか。
CSR・サスティナビリティのリーダーについて、3つの方向からまとめてみました。
企業としてどうサスティナブルであるか、なんて唯一の正解はないのですが、共通点があるとすれば、軸があるというか、社風が整っているというか、企業の根本となる部分にリソースをしっかり使っているということでしょうか。ブランディングというか。
やっぱり、トップの考え方次第です。オーナー社長だろうが、創業家2代目だろうが、雇われだろうが、CSR部が試行錯誤してどうこうではなく、バシっとトップが軸を打ち出す必要があるかもしれませんね。
まー、トップがCSRを理解する気がないのに、なんとなくでCSR進めようとするから、現場が大変なことになるんでしょうなぁ。改めてトップ・コミットメントが重要だと感じた、今日この頃でございます。
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