CSR調達とは何か
CSR調達とは何か。あなたは、ロジカルに説明することができますか?
今回はCSR調達に関する話題を事例をあわせて紹介させていただきます。グローバル・リスクの高まりに、企業は自社の取引先に、CSR推進企業を選ぶようになってきています。ロンドンオリンピックでもそうでしたが、現代社会においてある程度の規模の仕事をしようとしたら、CSRをしていないと、土俵にすら上がれない事例が増えているようですね。
というわけで、本稿では、5つの事例を含めた記事を紹介します。サプライチェーンやら、CSR調達やらの事例を見ながら、自社の取組みを振り返るきっかけになれば幸いです。
凸版印刷のCSR調達
凸版印刷は原材料の調達先など主要約3千社に対し、労働者の人権や労働環境に配慮するよう求める。長時間労働や低賃金などに関する基準を決め、訪問調査も実施する。取引先の欧米企業から健全な労働環境の確保を求める動きが強まっていることに対応する。人権への配慮を取引関係に反映させる取り組みは「企業の社会的責任(CSR)調達」と呼ばれ、欧米企業が先行している。
凸版は海外売上高比率を2015年度にも12年度比5ポイント増の20%以上に高める考え。欧米企業との取引を拡大するにはCSR体制の強化が必要と判断した。対応が遅れている取引先には訪問調査を実施し改善を促す。取引を解消する場合もある。凸版に問題があった場合に取引先が通報できる制度も新設する。国内では富士ゼロックスやイオンなどが既にCSR調達を導入している。
凸版印刷、取引先3000社調査「労働環境配慮を」
凸版印刷、富士ゼロックス、イオンはいわゆるCSR調達をしていると。イオン系列で買い物は最近してませんがイオンさんって、結構CSR絡みのアクションしているので好きな企業です。ごめんね、イオン。好きだから許してちょ。
Apple社のCSR調達
だが、ここからIPEのアップルへの猛攻が始まる。「アップルの別側面」と銘打ったレポートを発行し、アップルが部品や素材を調達するサプライヤーが中国でいかに環境を汚染しているかを描いたのだ。
IPEに追い詰められたアップルは対話を開始。部品などの調達先が環境汚染をしていないか、確認するようになった。現在公開されているIT企業ランキングで、アップルはトップ(最新のランキングは4ページに掲載)。アップルを動かしたIPEの功績は世界に轟いた。
アップルもユニクロも慌てふためいた–中国「汚染企業ランキング」の衝撃
社会貢献の世界では、「何が正しいかではなく“誰が正しいか”」みたいなことを言われますが、僕の考えは違います。「結局、何が正しいか」が世界に大きな影響を与えるのでは、と。
僕もMacユーザを10年以上していますが、昔Apple社は環境や労働における社会問題に興味のない会社でした。今は、世界のリーダーとして、CSRを推進する企業となっています。今は、人的リソースに対してのCSR活動にも積極的ですよね。
そろそろApple社の2013年分のCSRレポート(サプライヤー責任報告書)が出ると思います。そちらも注目しましょう。CSR調達はサプライチェーンマネジメント、リスクマネジメントの基本ですからね。
CSRサプライチェーン・マネジメント
CSR取組の中で最も遅れているのがサプライチェーン・マネジメントであり、中でもサプライヤーに対するCSR監査や支援である。品質・安全や情報セキュリティ、また環境の取組は進んでいるが、人権・労働問題についてはあまり認識がない。最近、日本企業の海外の現地法人やサプライチェーンにかかわるCSRリスクが実際に顕在化した事例が増えている。途上国を中心に人権侵害、労働組合、労働条件や雇用・賃金問題が多く、日本企業がほとんどリスクと考えてこなかった問題である。
事態解決に向けてレピュテーション(世論)を活用する海外NGOは、日本企業をターゲットにしだしたとも言われている。資本関係や契約関係の有無にかかわらず、最も効果的な最終発注元(最終ブランド企業)に対するキャンペーンを行うことが多い。日本企業でもサプライチェーンのCSRリスクに積極的に対応し始めたところが出てきた。
・戦略:品質確保と安定調達が主眼なるも、アジアで高まるCSRリスク(特に人権・労働、環境)の認識
・体制:コーポレートのCSR部門と資材調達部門が連携しつつ役割分担
・展開:国内のグループ企業や一次調達先から海外のグループ会社や調達先へ拡大
・監査:自己チェックシートで現状把握し改善要請の共存共栄路線、リスク高ければ現地CSR監査持続可能なサプライチェーンは企業の戦略的資産である。CSR調達・CSR監査にかかわる全社的なガバナンス構築に関する方向性は以下のとおりである。
・CSR戦略の策定とコミットメント
・ガバナンス体制(CSRリスクの発見プロセス)
・CSR(リスク)の企業文化の醸成
・ステークホルダーとのコミュニケーション
・ガバナンス・プロセスの定期的評価と報告
サプライチェーンのCSRリスク対応を、実際どこまでどのように行うのかという運用課題がある。事業や商品の重要度、リスク度合いや費用対効果から戦略的に優先順位を決定することになろう。
サプライチェーンのCSRリスクに疎い日本企業-今後、日本企業の海外調達が世界のNGOの“標的”となる!?
上記は要約文ですが、大手企業、特に製造業系のサプライチェーン問題は昨今のトレンドな気がします。サプライチェーンを押さえておかないと、暴走したら止められませんぜ、みたいな。ご興味ある方は、原文を当たっていただければと思います。
まとめ
このCSR調達は、「CSR推進企業は、CSR推進企業としか取引をしない」という状況を生み始めてまして、CSR界隈的には非常に喜ばしい状況なのでございます。
このまま、日本にある大手企業及び上場企業の1万社くらいがCSR調達に注力するようになれば、累計で数十〜数百万社がCSRをせざるを得ない状況に追い込めるわけです。
CSRをしていなかった企業は大変なことですが、日本社会全体からすれば、社会的な負荷も減り、明るい未来がやっと視界に入るのかと思います。課題はないわけではありませんが、CSR調達が起こすサプライチェーンのCSR革命を密かに期待する、僕なのでありました。
関連記事
・今年のランクインはリコー、資生堂、花王–「世界で最も倫理的な企業」(2015)
・CSR調達と46%の倫理的購入を望むエシカル消費者たち
・CSR調達を戦略的にするための、CSR活動記事9選[2014年]
・エシカルビジネスはファッションから始まる? CSR調達とエシカル消費の5事例
・CSR調達が国際ルールとなる時代-CSR部の社内課題も浮き彫りに
・CSR調達の9事例と、CSRとしての人権問題対応について