SXサステナビリティ

SX銘柄がついに登場!?

先日、経産省が「SX銘柄」なる新しい枠を作ると発表しました。

>>「SX銘柄」を創設します~長期的かつ持続的な企業価値創造を進める先進的企業を選定・表彰する事業を開始します~

近日中に発足予定の「SX銘柄評価委員会」において、SX銘柄の審査基準などの詳細を策定の後、2023年7月頃から、「SX銘柄2024」の公募を開始し、2024年春頃に選定結果の公表を行う予定としています。個人的には普通にESG銘柄?でアピールすればいいと思いますが…。

ESG的なものは、2014年度から始まった「健康経営銘柄」などがあります。SXというサステナビリティど真ん中の銘柄選定はこれが初めてです。ESG評価機関の上位評価企業と同じになるわけでもないでしょうし、どんな企業が選定されるか楽しみですね。というわけで、最近のSX経営について、少しまとめたいと思います。

ちなみに、2022年発売の拙著『未来ビジネス図解 SX&SDGs』でもSX経営に関する具体的な内容をまとめてますので、こちらもぜひよろしくお願いいたします!

SX銘柄とは

経済産業省と東証は、投資家等との建設的な対話を通じて、社会のサステナビリティ課題やニーズを自社の成長に取り込み、事業再編・新規事業投資などを通じて、長期的かつ持続的な企業価値の向上に取り組んでいる先進的企業を、「SX銘柄」として、選定・表彰し、変革が進む日本企業への再評価と市場における新たな期待形成を促す事業を開始します。
SX銘柄の公表を通じて、①企業経営者の意識変革を促し、投資家との対話・エンゲージメントを通じた経営変革を期待し、②その上で、国内外投資家に対して、こうした日本企業が向かう変革の方向性を知らしめることにより、今後の日本株全体への再評価と新たな期待形成につなげていきます。

経産省によるSXの定義は「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取組」です。こうやってみると、いわゆるサステナビリティ経営の定義そのものであり、この10年で行われてきた議論と差はほとんどありません。あるとすれば「企業価値向上を図る」という視点です。そこが重要と言えばそうなのですが。

SX自体は、2020年に経産省の研究会で提言されたものです。2021年になって少し関係者が使うようになってきて、2022年8月に「SX版伊藤レポート(伊藤レポート3.0)」が発表されてからは一気に盛り上がってきています。(界隈の一部では、ですが)

例えば、SXをタイトルにする書籍は2021年から出版され始め、2022年には私の本を含めて数冊出ています。2023年も何冊か出版されるでしょうが、SDGsほどは盛り上がらないでしょう。それくらいまだまだこれからの概念と考えています。2024年発表予定のSX銘柄をきっかけに、2020年代後半はもうすこし概念が整理され、使われるようになるとは思います。

組織規模を問わず、SXを冠にした支援サービスを発表するコンサルティング企業は急激に増えています。サステナビリティ関連の新しい概念もまずコンサル側から盛り上がります。ただ内容を見ると、SXを「サステナビリティ」と置き換えても意味が通る物ばかりであり、なんとも言えない徒労感を感じることはあります。

引用および参照:経産省|「SX銘柄」を創設します~長期的かつ持続的な企業価値創造を進める先進的企業を選定・表彰する事業を開始します~

SXの現場の課題

問題は、SXをどのようにサステナビリティ経営戦略に組み込むか、です。サステナビリティ経営は、一部が開示義務化となっていますが、SXは特に規定もなくグローバルでは言及されないガラパゴスな概念ではあります。SDGsも世界の中で日本だけが盛り上がっているなどとも言われますが、SXも基本的にはガラパゴスに分類される概念であり、開示情報を英訳する時には気をつけたほうがいいですよ、と。

日本(政府)は「表面上のトランスフォーム」が大好きです。日本人大好きなSDGsも原題は「Transforming our world : the 2030 Agenda for Sustainable Development」であり、革新を求める概念であります。まぁ、2016年1月から始まったSDGsから7〜8年たつわけですけど、SDGsがあったから経営革新が起こった企業はどれくらいあるかというと…まぁ察してください。

いずれにしても、我々人類が目指す理想的な世界は、少なくとも現在の延長線上にはないことは確かであり、企業も何らかの形で変化しなければなりません。これはサステナビリティ経営の話でよく言及されてきていますが、SXがその潮流をどこまで加速させられるかは、今後の経産省の動き次第です。

経産省は、SX銘柄のリリース記事の中で「国内外に向けたSX銘柄の大々的なアピールを検討しています」としています。これだけ世界でESGやサステナビリティの定義が揺れている中で、SXでそれらがまとめられるとは思えません。この動きも非常に注目しています。

トランスフォームすべきは何か

本当にトランスフォームを目指すなら、SX選定委員に40代の有識者をいれるとか、将来の国を代表するであろう人の意見も取り入れるべきです。サステナビリティ界隈は、ベテランの大先輩たちが、実績・知見が飛び抜けすぎていて、この5年くらいはいつも同じメンバーしか見ません。

これサステナブルなのでしょうか。サステナビリティは“次の世代”を今の主役にするムーブメントであります。そして、企業も同じです。特に上場企業でも経営層の年齢が高い会社は多いですよね。性別だけではなく、年齢のダイバーシティも期待しています。

というわけで、企業っていうほど、変革って望んでいないような気もしていまして、大企業病といいますが、現場は変化したいけど経営層が変化せず、組織として変化できない。だからビジネスモデルも社会の変化に合わせて改革ができないという。

私は、昨今の人的資本の盛り上がりもですが、SXは最終的に何を変えるべきかというと、組織なんだと考えています。組織が変わればビジネスモデルも変化させられます。だから元VRF「統合思考原則」では、パーパス(経営理念)やカルチャー(組織風土)が重要だと言っているのですよ。組織をトランスフォームできずに何を変えられるのですか?と。組織も変えなられないくせに、社会を変える!なんて大喜利ですよ。

では何をトランスフォームすべきか、といえば拙著『未来ビジネス図解 SX&SDGs』で超実践的フレームワークとして、以下のようなステップを紹介していますので、ぜひチェックしてみてね!(宣伝)

sx_sustainability

関連資料

■安藤光展著『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ、2022年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4295203645/

■SX版伊藤レポート(伊藤レポート3.0)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-a.pdf

■価値協創ガイダンス2.0(価値協創のための統合的開示・ 対話ガイダンス2.0〜サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)実現のための価値創造ストーリーの協創)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-b.pdf

■SX研究会(サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/index.html

■サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ〜サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_kigyo/pdf/20200828_3.pdf

まとめ

SX銘柄の説明から、SX全般の課題と現状をまとめましたがいかがでしたでしょうか。ちょっと厳しい意見も書かせていただきましたが、まずSXすべきは組織であり従業員のマインドです。

ただ、まぁ、私が言っていいのかわかりませんが、政府の文献でも有名コンサルの書籍でも「SX」を「サステナビリティ」と置き換えても99%意味が通ってしまうのですよね。10年以上前にあった「CSRとCSVの差」の議論に似ていて、もちろん単なる表面上の言い換えなので、こちらはすぐに廃れました。SXはこうならないように、経産省にきちんとハンドリングしていただきたいです。「SXウォッシュ(見せかけだけのSX)」だけは避けたいのです!

SXは経産省がSX銘柄を作って盛り上げていくようですが、企業サイドとしてはトレンド表現に惑うことなく、サステナビリティ経営のど真ん中をやっていけば、SXに到達できるわけですから、トレンドを取り入れながらも、地に足をついた取り組みをしていきましょう。そして拙著「SX&SDGs」があれば鬼に金棒です!(また宣伝)

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