ビジネスと人権に関する指導原則
「ビジネスと人権に関する指導原則」とは、“ラギー・フレームワーク”と言われている、「企業と人権」に関する国連の枠組みを具体化するための“原則(Principles)”のことです。
国際的な人権に関するフレームワークやガイドラインとしては、「世界人権宣言」、「国際人権規約」、「ILO中核的労働基準」、「グローバル・コンパクト」、「ISO26000」、「OECD多国籍企業行動指針」などがあります。
これらの「企業と人権(人権CSR)」に関する枠組みを初めて聞いたと方も多いと思います。
ちなみに、ISO26000(CSRの国際規格)を元にして、日本の独自企画「社会的責任に関する手引 JISZ26000」というJIS規格が2012年に作られました。
CSRって、しっかりとした国際規格も国内規格も存在するんですよね〜。これ知らない人が多いんですよね〜。知ったからといって何も起きないのが残念な所ですが。
先日書いた、以下の記事を合わせご覧くださいませ。
▶CSRにおける人権問題とは何か?対策実施のための4つのポイント
▶ラギー・フレームワーク「ビジネスと人権に関する指導原則」
▶ISO26000発行から丸二年ーーISO26000のトレンド再考
人権擁護とは何をすることなのか
CSRは本来得るべきでない利益を是正する意味もあるという、話しもあります。つまり、事業に伴って発生する生態系への負荷や、社会的損失コストを負担しているのは、企業ではなく政府や市民である、ということです。自分たちの負の側面を丸投げしているだけだと。
人権を無視した企業活動により従業員・ステークホルダーを苦しめ、病院行きになったりしたときのコストも企業が全額負担してないでしょう。「個人のコストを企業は負担できないよ!」というのはわかりますが、その原因が企業にあると明確なのに、それを無視するのってどうなんでしょ?って話し。
(CSRにおける人権問題とは何か?対策実施のための4つのポイント)
結局そういうことです。
人権擁護っちゅうのは、結局「個人を尊重する」ということなんですよね。偉い先生や国際基準(ガイドライン)の指針とか色々なフレームワークがあるわけですが、正直実務的ではないんですよね。
日本政府も動いているような、いないようなってレベルですから、各々の企業が主体的に取り組まなければ何も改善しないわけです。
イギリスの事例
イギリスに目を転じると、2013年9月、外務連邦大臣が『グッドビジネス:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践』という文書を国会に提出しました。これは、同指導原則を受けて官民一体で人権擁護を推進する活動の第一歩と位置付けられています。
「個人の自由の尊重が経済発展につながる」、「企業が人権について責任ある行動を取ることが、従業員、顧客、コミュニティ等との良い関係を通して市場の持続可能性をもたらす」など、人権擁護が市場や経済のためになる、というメッセージの明快さに驚かされます。
(イギリス政府による「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践)
イギリス政府の見解は、「人権擁護は経済貢献でもある」と。広い意味での“儲かるCSR”のような姿勢ですね。
上記の引用記事のなでは、人権尊重を巡る様々な企業の取組み事例が紹介され、企業の評判やブランド価値の向上、顧客基盤の強化、優秀な従業員の確保、業務継続リスクの軽減(社内のストや紛争等の回避による)、人権侵害による法律違反リスクの軽減、機関投資家へのアピールなどに効果があったとまとめています。
2013年5月に国連「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」は日本政府に対して行った37の勧告のなかで、「過重労働による死及び職場における精神的嫌がらせによる自殺が発生し続けていることに懸念を表明する」と述べました。
(イギリス政府による「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践)
そうそう、そんなことがありましたね。ブラック企業に対しての警告なのですが、それもあって、9月に政府もブラック企業の摘発に乗り出したって感じでしたもんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本は企業の人権意識(人権CSR)が弱いと言われていますが、難しく考えず、「個人を尊重する」という点にフォーカスし、何かしらの行動を取ればよいだけなのかもしれません。
「個人を尊重」という意識が組織に浸透すれば、“仮に”労働時間が長くとも、会社には配慮してもらっているみたいな意識を持つ従業員が増えるのではないでしょうか?
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