「CSV経営」NTT出版(赤池学・水上武彦)

NTT出版から、「CSV経営」(赤池学・水上武彦)の書籍を献本いただいたので、
書評と雑感をまとめます。

水上さんは、CSR業界でも著名な方です。まさか、発売前に読めるとは思わなかったです。(普通に買うつもりだったので)というわけで、本の簡単なまとめと、僕の意見を。

大先輩の一人ではありますが、あえて、同じ職のものとして、厳しめに、色々な角度から考えながら読ませていただきました。

CSV経営

本書は、海外・国内企業の様々なCSV事例を上げながら、CSV経営とは何かを論じています。CS(従業員満足)を超えて、HS(人間充足の実現)がCSVであると。

CSVに関しても、エビデンスばりばりの解説書というよりは、赤池さん、水上さんの考えるCSVとは何かという話が多い印象。

オピニオンの内容としては、経営学より、経営思想的な話が多いです。ですので、CSVとは何かを学ぶなら、マイケル・ポーター教授の論文や、ハーバードビジネスレビューの論文の日本語訳などを参考にしてみて下さい。

CSV経営の雑感

もったいなぁ、と思った点を2つほど。

多分そういうコンセプトだからだと思うのですが、身内のCSR/CSVの話ばっかりで、自画自賛して終わりみたいのが気持ち悪かったです。

CSRコンサルタントの大先輩の水上さんを非難しているとかじゃなく、CSV経営を勉強したい人にはちょっと偏りすぎたサンプルなのかも、ということです。

以前、CSR経営についての記事を書きましたが、
CSR経営の時代は終わった?経営の未来を見つめる良書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」

内生性等の複雑に絡み合う要因を加味して判断しないと、独断に陥ってしまい危険なのでは、という話です。もう少し多角的なCSV論が読みたかったです。僕はですけどね。

あとは、例えば「キリンフリー」がCSVだとする点。ちょっと乱暴過ぎません?キリンは素晴らしいCSR活動をしているのは確かです。

ノンアルコール飲料の開発から、飲酒運転根絶にロジック飛躍し過ぎかも。ノンアルコール飲料が発売される前と後で、どれだけ日本の飲酒運転検挙率が変わりました?事故死とノンアルコールビールの関係性は?そもそも飲酒運転って根絶できないでしょ?

時々、「えっ?どういうこと?」というロジックがあったのでびっくりしました。水上さんらしくない、短絡的な表現かなと。これを読んで、これらはCSVだとされると、僕は納得できない。ただでさえ勘違いちゃんたちが多いのに。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

別に大先輩たちに文句をとかではないのですが、僕もそれなりには知識・経験があるので思う所をまとめました。

誤解がないようにいいますが、この本をCSVのまとめとしてではなく、ぜひ、CSVの事例集として読んでいただきたいです。事例が多く、参考になるかと思います。

で、今日時点ではまだ買えないのかな?多分そろそろ発売するはず。CSVの事例をお探しの方はぜひ、書店やネットショップでご購入くださいませ!NTT出版さん、献本いただきありがとうございました。

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