戦略的CSRという歴史
先日、マイケルポーター氏のインタビューを日経がしていて、
それを読んで感じた事をメモがてらまとめてみます。
そのインタビューでは、
CSVのアイデアはどのように発想したか、
ファイブフォース分析(Five Force Analysis「Competitive strategy」1980)から、
バリュー・チェーン(Value Chain「Competitive advantage」1985)を経て、
CSVに至る戦略の思考変遷を振り返ってました。
目新しい話しはでてきませんが、
CSVに興味がある人には必見な記事だったと思います。
ちなみに、僕のブログに検索して来るワードで人気なのもCSVなんです。
ほんと皆さん興味ありますねぇ。
必読:マイケルポーターの戦略的CSR、CSV(Creating Shared Value)を考察するための良記事16選
CSV(creating shared value)
ファイブフォース分析とバリューチェーン理論
ファイブフォース分析(=FFA)は産業に視点を置き、バリュー・チェーン(=VC)は企業に視点を置いた理論でした。CSVはVCのコンセプトの一部から生じた概念で、ビジネス環境に多大な影響を与えます。
(参照サイトより)
ファイブフォース分析とは、
業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法のこと。
マイケル・ポーター氏の著書『競争の戦略』で広まったフレームワークだそうで。
「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、
「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因の、
計5つの要因から業界全体の魅力度を測る手法。
個々の企業分析に使うフレームワークではありませんので注意。
バリューチェーン理論とは、
マイケル・ポーター (1985) が著書『競争優位の戦略』の中で用いた概念。
直訳の“価値の連鎖”ですが、イマイチよくわかりません。
ざっくり言うと、購買した原材料等に対して、
各プロセスにて価値(バリュー)を付加していくことが、
企業の主活動であるというコンセプトに基づいたものであるってこと。
その価値を生み出すのがCSVってことなのでしょうか。
CSVは市場の発見という視点を持つ
CSVの根底にはこういった全体的な働きがあり、私の研究はCSVの発想には企業が現在見落としている市場があるという前提から派生します。私は日ごろから多くの企業経営者と出会いコンタクトを取る機会があります。その対話を通じて、CSVは寄付やCSR(企業の社会貢献)ではなく資本主義に基づいていて、社会問題は巨大市場を生み出す可能性があり、それは企業が従来の顧客や市場を見直すことで獲得されるということに気付きました。
(参照サイトより)
CSVとは、資本主義的アプローチによる社会問題の解決である。
マイケルポーター氏はインタビューの中でそう語っています。
CSVの本質とはどこにあるのか。
僕は以下の考え方だと思ってます。
社会問題解決の従来の手法は、効果がなく事態は悪化する一方だったからです。政府もNGOも富を創り出すことはできません。政府は疲弊し、こういった問題に効率的に取り組む十分な資金や術も持っていません。
(参照サイトより)
つまり、政府もNGOも資金を投入できるが富を生まない、と。
予算を使うだけなので、必ずいつか疲弊する。
そうじゃないでしょ。
だったから富を生む(経済価値を生む)必要がある。
その思考の出発がCSVという話し。
勘違いCSVジャンキーが辿っていない思考の出発点を、
今一度確認する必要があります。
CSVを共有価値創造ともいいますが、
共有価値がなぜ必要か論理立てて理解しておかないと、
「誰と何を共有する価値」のことなのかわからないと思います。
個別のCSVだと謳うプロジェクトの否定はここでは避けますが、
勘違いCSVジャンキーの話しを鵜呑みにするのではなく、
概念を提唱した本人の話しをまずは理解することが重要です。
って、僕もか。てへ。
いやいや、僕は“CSVしましょう”なんてクライアントに言った事はありません。
その概念の重要性はもちろん伝えた事はありますが。
必読:世界のCSR / CSVの先進事例を振り返る「Social Innovation Highlights
CSVという機会
では、CSRをビジネス・オプチュ二ティー(ビジネスチャンス)と捉えるには、
何に注意すればよいのか。
マイケルポーター氏はこう言っています。
「経済的な成功という一つの問いについて考えればいい」と。
そのCSRは経済的価値を生むのか?
その寄付は経済的価値を生むのか?
その問いのみを指標としろ、と。わかりやすいですねぇ。
そしてマイケルポーター氏はそのためにマーケティングを学べと言っています。
「CSRの呪縛から脱却し、「社会と共有できる価値」の創出を」より引用
必読:今年のまとめ!CSR・コーズマーケティングの事例・記事12選
ソーシャルビジネスとCSR
CSVと近い概念ではあるが、
ソーシャルビジネスとCSV、CSRとCSVは大きく異なるとしています。
そして、NGOを自身で立ち上げることに対して反対しています。
まぁ、全否定しているわけではなりませんが、
ソーシャルビジネス、CSR、NGOなどはダメっていってますね。明確に。
僕が思うにCSVって何が何でも一番優れている概念とは思いませんけど。
ソーシャルビジネスやCSR、NGOの中で“共有価値”を生み出すってことだし。
ちなみに、若者のNGO志向については以下のように否定しています。
ところが残念なことにそういった若い人たちは貢献する手段は、NGOを始めることだと思いこんでしまっている節があります。例えばプリンストン大学の学生が目指す進路として最も人気なのはティーチ・フォー・アメリカというNGOです。非常に頭のいい優秀な若い人たちが都市部の公立学校に出かけて行って、ボランティアで教えるということをやっているところです。もちろん、その意識、その気持ちは素晴らしいと思いますが、これでは世界は変わりませんし、教育における根本的な問題も解決されません。
(参照サイトより)
こういうNGOの活動は“きっかけの誘発”であり、
すべてのアクションを否定しても何も始まらないのかなぁ。
でも、社会変革に貢献しているかというと、
何とも言えないという主張もわからんでもないけど…。
必読:社会貢献はビジネスなのか?社会貢献が“儲かる”のか考えてみた
まとめ
いかがでしたでしょうか。
素晴らしい概念だと思います。
が、実行するにあたり、「じゃあ何したらいいの?」感はあります。
今している企業活動がCSVなのか、
CSRなのか、ソーシャルビジネスなのかフィランソロピーなのか。
自分たちの考えを整理する必要はありますが、
概念をこねくり回しても誰もハッピーにはなりません。
あなたはCSVをどう考えますか?
そして、それをどう行動に落とし込もうとしてますか?
参照サイト
社会問題の解決と利益の創出を両立 企業に新たなビジネス機会をもたらすCSVとは(上)
社会問題の解決と利益の創出を両立 企業に新たなビジネス機会をもたらすCSVとは(下)