統合報告書アワードランキング

統合報告書アワード・ランキング

2025〜2026年の統合報告書評価が出揃いましたので、とりまとめて記事にしました。結果から言うと伊藤忠商事と味の素の統合報告書が国内最高評価を得ている形になりました。

統合報告書の評価って面白いですよね。本来的には投資家向けのメディアなのですが、最近は従業員や大学生に向けても活用する企業が増えています。会社案内パンフレットよりも、経営理念、ビジネスモデルや長期視点、などが細かく書かれており、企業を知るためにちょうど良いのだと聞いています。確かにそれはあります。とはいえ、本来的な投資家向けのメディアであることを前提にする必要があるので、投資家等の評価が高い統合報告書事例も常にチェックしておきたいところです。

というわけで本記事では、WICI・日経・GPIFにおる統合報告書およびサステナビリティ情報開示の高評価企業事例をまとめました。チェックしている方も多いと思いますが、確認漏れがあるものは忘れずにチェックしておきましょう!

WICI統合リポート・アウォード

■Gold Award(優秀企業賞)
イトーキ、荏原製作所、TDK

■Silver Award(優良企業賞)
味の素、伊藤忠商事、富士フイルムホールディングス

■Bronze Award(準優良企業賞)
デンソー、ニチレイ

■Special Award(審査員特別賞)
MS&ADインシュアランスグループホールディングス、住友金属鉱山、東京海上ホールディングス

出所:https://wici-global.com/index_ja/2025/12/03/4847/ (2025年12月発表)

日経統合報告書アワード

■グランプリ
味の素、伊藤忠商事、富士通

■サステナブル大賞
ANAホールディングス

■ガバナンス大賞
三菱UFJフィナンシャル・グループ

■準グランプリ
旭化成、J. フロント リテイリング、住友林業、積水ハウス、高砂熱学工業、東京エレクトロン、東京応化工業、富士フイルムホールディングス、三井不動産

■新人賞
ハーモニック・ドライブ・システムズ

■レジェンド賞
伊藤忠商事、大和証券グループ本社

■優秀賞
IHI、アサヒグループホールディングス、池田泉州ホールディングス、イトーキ、INPEX、荏原製作所、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、大林組、花王、鹿島建設、亀田製菓、九州旅客鉄道、栗田工業、神戸製鋼所、小松製作所、Sansan、塩野義製薬、十六フィナンシャルグループ、積水化学工業、双日、TIS、T&Dホールディングス、TDK、デンソー、東京センチュリー、南海電気鉄道、ニチレイ、NISSHA、日清食品ホールディングス、ニッスイ、日東電工、日本ペイントホールディングス、野村総合研究所、パーソルホールディングス、BIPROGY、ブリヂストン、マツキヨココカラ&カンパニー、三井住友トラストグループ、三菱倉庫、ミネベアミツミ、ミライト・ワン、森永製菓、森永乳業、UACJ、横河ブリッジホールディングス、横浜フィナンシャルグループ、りそなホールディングス、レゾナック・ホールディングス

出所:https://ps.nikkei.com/nira/jushou25.html (2026年2月発表)

GPIF

■GPIFの運用機関が選ぶ「マテリアリティの観点から『優れたサステナビリティ開示』 」
アサヒグループホールディングス
味の素
マツキヨココカラ&カンパニー
旭化成
レゾナック・ホールディングス
積水化学工業
野村総合研究所
アステラス製薬
中外製薬
エーザイ
日本ペイントホールディングス
リクルートホールディングス
荏原製作所
ダイキン工業
日立製作所
富士電機
富士通
ソニーグループ
TDK
トヨタ自動車
HOYA
アシックス
イトーキ
伊藤忠商事
三井物産
東京エレクトロン
三菱UFJフィナンシャル・グループ
みずほフィナンシャルグループ
東京海上ホールディングス
三井不動産
三菱地所
九州旅客鉄道
ソフトバンク

■GPIF の運用機関が選ぶ「マテリアリティの観点から『改善度の高いサステナビリティ開示』」
大成建設
エムスリー
三越伊勢丹ホールディングス
コーエーテクモホールディングス
花王
富士フイルムホールディングス
TDK
ウシオ電機
良品計画
第一生命ホールディングス
東日本旅客鉄道

※2機関以上の運用機関から高い評価を得た企業(必ずしも統合報告書ではないが統合報告書が評価の大多数)
出所:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20260313_sustainability_report_jp.pdf (2026年3月発表)

企業に充実してほしい内容

GPIFのレポートは厳密にはアワードやランキングではないものの、高評価企業を抽出しているので、事実上のアワードとして機能していると思います。GPIFの評価に対しては、投資家サイドからの一部コメント(企業に充実してほしい内容や企業と対話していてギャップを感じる事項)も掲載されています。こちらから一部ピックアップ(抜粋)させていただきます。

・サステナビリティの取り組みについて、現時点の説明にとどまっているケースもあるかと思います。できれば、課題となっていること、今後の取り組み予定など含めてより良い取り組みにつながる開示に期待します。

・マテリアリティを重視したサステナビリティ開示において最も重要なのは、企業にとって真に価値創造につながる取り組みを特定し、開示することだと考えています。

・有用なサステナビリティ開示を実現するためには、企業価値向上と ESG要素の両方にとってポジティブな影響をもたらすマテリアリティを特定することが不可欠だと考えます。

・企業は、自社の事業ラインに最も重要な指標を特定し、投資家が最も重要なサステナビリティの影響やトレンドを理解し、関連する進捗を時間軸で把握できるようにすることに注力すべきです。

・財務と非財務の統合的なアプローチこそが、企業の持続可能性と収益性を両立させ、意味のあるサステナビリティ開示を実現する鍵となると考えていますが、現実は一般的な項目の羅列にとどまっており、個々の企業にとって重要だと考えるマテリアリティの特定がなかなか為されていないところにギャップを感じております。

・対話を通じて特にギャップを感じるのは、①マテリアリティと事業戦略・KPI の接続が不十分である点、②重要課題への取り組みが成果指標(定量 KPI)まで結びついていない点、③取締役会の関与度や監督体制が十分に説明されていない点、④マテリアリティ見直しプロセスの説明不足(社会変化をどう反映しているか)です。

・1枚ものの価値創造プロセスにとどまらず、しっかりと自社の差別化されたビジネスモデルをエビデンスとともに文章で説明してほしいです。

・マテリアリティに沿った開示が今後有価証券報告書の開示事項となっていくと認識しています。

・ここでいうマテリアリティとは企業価値つまりキャッシュフロー創出力を判断する資金の出し手にとって重要か否かという観点で議論される必要があります。そのためには経営陣はもちろん取締役会において各企業の経営戦略およびコーポレートファイナンスに関するスキルが十分に供えられていることが必須です。

・マテリアリティが列挙されている一方で、それが不確実性下の意思決定や「選択肢を残す戦略」とどのように結び付いているのかが十分に語られないケースが多く、この点にギャップを感じています。

出所:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20260313_sustainability_report_jp.pdf (2026年3月発表)

全体の傾向

今回から「マテリアリティを重視したサステナビリティ開示」を軸に評価するようになったGPIFは素晴らしいですね。有価証券報告書でサステナビリティ開示が義務化になり、サステナビリティ開示が統合報告書のみではなくなったこともあるでしょう。私は、サステナビリティサイトの第三者評価をさせていただくことも多いのですが、昔から統合報告書/サステナビリティレポートとサステナビリティサイトなど、情報開示の一貫性・整合性から開示内容の棲み分け含めて総合力を今後求められるよ、という話をさせていただきてますが、まさにGPIFがそういう視点で評価してきているということです。

普通に考えれば、統合報告書だけ良くても意味がないのは誰でもわかるのですが、賞レースというか、評価されるための統合報告書みたいな方向性があるのも事実。どの統合報告書の制作会社でも、WICIや日経の評価視点を制作に盛り込んでいますよね。これ自体は悪いことではないのですが、そもそもの価値創造や経営戦略とサステナビリティの統合などの議論をせずに、開示にテクニカルに走る企業を増やす要因にもなっているため、私の気持ちとしては複雑なのも正直なところです。

WICIと日経の評価は、評価項目が毎年大きく変わることもないし、評価をする(仕切る)人も変わらないし、また高評価企業も改善に努力し続けるという側面もあり、その結果、毎年同じような顔ぶれが入れ替わりで登場する状況にはなっています。色々なコミュニティにいると賛否両論聞くので、引き続き動向を注視していきます。個人的には、主宰者は変わらなくて良いですが、評価担当者は定期的に変わったほうが良いと思います。

参考データ

統合報告書発行企業一覧(宝印刷D&IR研究所、2026年2月)

AIフレンドリー統合報告書ランキング(サステナブル・ラボ、2025年12月)

まとめ

統合報告書の発行企業評価、いつも興味深く拝見しております。今年の評価がとても高い味の素の統合報告書は、今後多くの企業のベンチマークになるでしょうし、毎年発行のピークとなる7〜9月ころの統合報告書にも活かされるでしょう。

また、コンサルティング会社や制作会社の方も、本記事の企業や評価コメント等をよく読んで、お客様のサステナビリティ情報開示支援をしていただきたいと思います。私も勉強し続けます。統合報告書やサステナビリティ情報開示に関わるすべての企業の方は、ぜひ詳細をチェックしてみてください。

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