サステナビリティ経営

「株価」と「採用」に効く人的資本経営

本日の読書メモは、先週発売の市川祐子『有力投資家が明かす 「株価」と「採用」に効く人的資本経営』です。市川さんは2022年に、拙著『未来ビジネス図解 SX&SDGs』と同時期に『ESG投資で激変!2030年 会社員の未来』を発売されて、一緒にオンラインで出版記念セミナーをさせていただいたことがあります。

さて、本書ですが、日経BPのWebサイトの連載が書籍になったものです。私は連載から見ていたので、記事を読みながらメモをよくとっておりました。インタビュー内容も興味深いのですが、市川さんの視点というか、見えている世界が学びになります。改めて書籍化されたものを読んでます。

本書はインタビュー集なのですが、投資家サイドの方はよくお見かけする人が多いのですが、切り口がユニークだからか話は新鮮なものでした。サステナビリティ推進担当者を含め、経営企画やIR以外の部門は投資家と直接的なエンゲージメント(コミュニケーション)もなく“又聞き”の情報で制度設計や活動推進を進めることがほとんどですので、こういう話を聞きたかった!と思うことでしょう。

こういう現場感のある投資家の視点はサステナビリティ推進担当者の役に立つものと思います。情報を得るという視点では、難解なファイナンスやIRの書籍ではなく、本書から読み始めてみてはいかがでしょうか。上場企業のサステナビリティ推進担当者、IRや経営企画、人事、広報の方から、サステナビリティ領域のコンサルタント、サステナビリティ関連レポートの制作会社関係者まで、多くの方にお読みいただきたい本です。

なお、手元の本は、著者の市川祐子さんから献本いただいたものです。ありがとうございます。2026年春に出る私の本をお礼に送ろうと思います。(迷惑か…)

概要

タイトル:有力投資家が明かす 「株価」と「採用」に効く人的資本経営
著者:市川祐子
ECサイト:https://www.amazon.co.jp/dp/4296208462/
出版社:日経BP
発売日:2025/10/10
目次:
第1章 投資家はなぜ「人的資本」に注目するのか
第2章 「人材ポートフォリオ」の構築
第3章 「価値創造ストーリー」
第4章 「サクセッションプラン(後継者計画)」
第5章 「投資家との対話(エンゲージメント)」
第6章 「ダイバーシティ経営」
第7章 「人的資本経営フレームワーク」
第8章 「PBR改善」

内容

本書は、17人の有力投資家と専門家へのインタビューをもとに、「企業はなぜ、どのように人に投資すべきか」を解き明かす一冊。投資家が人事・人材をどう見ているのか、どんな情報開示を求めているのかを、実例とともに紹介します。従来、投資家は短期的な利益を追求する冷徹な存在と思われがちでした。しかし登場するのは年金や投資信託を運用する長期投資家ばかり。彼らは「人は価値の源泉」であり「企業の未来を決める最大の資産」と考えています。実際に株価や採用力を左右するのは、人材戦略とその実効性だと語ります。

本書の対談は「IRの疑似体験」とも言える内容。投資家が評価する「人的資本開示の好事例」とは何か、経営層や人事・IR担当者が今取り組むべき課題は何かが具体的に見えてきます。経営戦略と人材戦略をつなぎ、株価を動かし、採用力を高める。人的資本経営の最前線を知りたい経営者、人事・IR担当者、そして次の成長を模索するすべての企業人に必読の書です。

引用:https://www.amazon.co.jp/dp/4296208462/

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