SXの本・書籍

SXに関する本・書籍

ウェブメディアや書籍でも徐々に「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」についての情報が増えてきました。しかし、一方で、SXとサステナビリティ経営との差がわからないなど、理解が進まない方も多く見受けられます。

もちろん、SXは一つの経営手段でしかないので、サステナビリティ自体を理解していなければ、SXを活用することはできないでしょう。というわけで本記事では、SX本を含めて、サステナビリティ全体を理解するための書籍を紹介します。お時間がある時に読んでみてください!

未来ビジネス図解 SX&SDGs

2022年8月に発売となった拙著『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ、単著)です。SXをいかに実践するかをテーマにした本です。SXとは何か、という書籍はいくつかあるのですが(まだまだ類書は少ない)、多くの企業関係者が感じるのは「で、どうしたらいいの?」です。その課題に対していくつかの解を提示しました。

本書では、読者がSXの本質を理解し、何らかしらの行動を起こすための実務的なヒントを多く盛り込むことを心がけました。図解も多くあり、直感的に内容を理解してもらえる体裁になっており、情報量多くはなく、時間のないビジネスパーソンでも読み進めやすい内容です。

ちなみに、2022年10月に『戦略的人的資本の開示 運用の実務〜必須知識の体系的整理と実戦的戦略策定ガイド』(日本能率協会マネジメントセンター、共著)という、私も共著者として参加した書籍が発売になります。すでにAmazonで予約販売が始まっているのでチェックしてみてください。人的資本経営はSXの基礎となる概念だと思っています。

サステナビリティを学べる5冊

まずは前半3冊を読めば、サステナビリティ経営の大枠を理解いただけるかと思います。もちろん、他にもサステナビリティの関する名著はたくさんあるのですが、泣く泣くこの3冊に絞り込みました。そして後半2冊は、ビジネス古典とも言える究極の名著をあらためて紹介します。読書の秋(間に合わなければ年末年始休みまで積読してください)にぜひチェックしてください!

1.ESG思考

我々、現アラフォー世代のエースであるコンサルタント・夫馬賢治さんの名著『ESG思考』(講談社)。1990〜2020年の30年間のサステナビリティの大きな流れを理解することができます。まずはこのあたりからサステナビリティの大枠を理解したいところです。夫馬さんは、官公庁の委員や大学の教授職なども兼任する著名なコンサルタントです。

2.やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門

もう一人の現アラフォー世代の博識王子・泉貴嗣 さんの書籍『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門』(技術評論社)。SDGs本は事例紹介ばかりでどうにもならない書籍も実際はおおいですが、この本は実務を事例紹介に頼ることなくまとめている、超実践向きのものです。泉さんは長くサステナビリティ・コンサルタントをしていましたが、2022年度からは小樽商科大学で准教授になっています。

3.ESG財務戦略

こちらはサステナビリティ経営の専門家ではなく、ファイナンスのプロフェッショナルらによるESG経営の指南書『ESG財務戦略』(ダイヤモンド社)です。IRや経営企画などの方には、こちらのほうが実務をイメージできるかもしれません。まわりでも好評ですので紹介。
一点残念なのは「ESG/SDGs」という表現。ESGとSDGsは出自が国連というだけで、異なる概念なのでスラッシュで括るのは、私は違和感があります。というか本文でもESGとSDGsは異なると言っているのだから、ESG単体で統一すればよかったのに。

4.マネジメント

次に紹介するのは、マネジメントという概念を普及させた経営学者ピーター・ドラッカーの『マネジメント エッセンシャル版』(ダイヤモンド社)。伝説級のマネジメントに関する書籍であり、日本の経営者でもファンが多いピーター・ドラッカーの名著中の名著。英語版の副題にはレスポンシビリティズ(社会的責任)が含まれているように、実はサステナビリティに関する記述も多いのです。

現代的なサステナビリティ論ではないものの、かなり日本企業の経営哲学にも近く理解しやすいと思います。本書は従来の『マネジメント 上・中・下』という3冊からのエッセンスをまとめて1冊にしたものであり、まずはこちらのバージョをおすすめします。10年以上前から、サステナビリティを学ぶ名著として色々な方に紹介しています。改めて読むたびに学びがあります。

5.論語と算盤

最近でもテレビドラマになったり紙幣になったりでなじみもある、日本実業界の父と言われる渋沢栄一の言葉をまとめた、守屋淳『現代語訳 論語と算盤』(筑摩書房)です。論語(道徳・社会性)と算盤(経済性)の両輪が大事という、日本的サステナビリティ観念を学ぶのに良いです。

こちらもドラッカーと同じく、実務に役立つというものではありませんが、自身のサステナビリティ概念を整理するために有用です。他には石田梅岩や二宮尊徳の経営論も日本流サステナビリティとして面白いと思います。

参考情報

サステナビリティの基礎を学ぶ書籍を紹介してきましたが、やはり本家・経済産業省のSXの資料を読まずして前には進めません。こちらも確実にチェックしてください。

・SX研究会(サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/index.html

・SX版伊藤レポート(伊藤レポート3.0)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/pdf/20220830_1.pdf

・価値協創ガイダンス2.0(価値協創のための統合的開示・ 対話ガイダンス2.0 〜 サステナビリティ・トランスフォーメーション実現のための価値創造ストーリーの協創)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/pdf/20220830_2.pdf

まとめ

SXといっても従来から議論されてきたサステナビリティ経営と重複する所も多いですし、新しい概念が出てきた時こそ原点に帰るというか、自身の中できちんと整理できる軸を持ちましょう。拙著を含めバランスの良い書籍を選んだので、これらの書籍は実務的にも概念整理にも役に立つでしょう。

本記事では掲載しなかったものの、サステナビリティ・ESG・SDGsを学ぶための良書はたくさんありまして、またどこかで紹介したいと思います。

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