サステナビリティ経営

サステナビリティ

上場企業を中心にサステナビリティの概念が浸透してきて、社会全体にも浸透してきています。これは素晴らしいことなのですが、企業としては、サステナビリティの概念を経営に取り込むことによってすべての経営課題を解決できるわけではありませんので、そのバランスが求められている側面もあります。

最近、サステナビリティ・コンサルタントとして、経営戦略に関わらせていただくことも多く「サステナビリティ経営とは何か」という命題に正面からぶつかることも多いです。

そこで本記事では、私の最近の気づきを共有したいと思います。同じ課題を感じている人には、何かしらのヒントになれば幸いです。

サステナビリティが広がった理由

まずはそもそも、なぜこんなにサステナビリティやESGという概念がビジネスセクターに広まってきたかをお伝えしますと、大きく3つの理由があると思っています。

1. “金の匂い”がし始めたから
2. 政府/官公庁が“オススメ”を始めたから
3. “ステークホルダーからの圧力”が大きくなったから

それこそ「CSR元年」と言われた2003年からもう20年がたちます。最近の人は「CSR元年」という表現すら聞いたことがないと思いますが、日本で初めて企業にサステナビリティ部門ができた年で、日本のサステナビリティはこの年から本格的に始まったという趣旨の話です。サステナビリティの概念がビジネスセクターに広がりめたのは2000年代前半からですが、2000年代は先進企業の数十社以外は、社会貢献や環境活動などシングルイシューに近い活動が多く、総合的なアクションをしている企業はほとんどありませんでした。

しかしもうCSR元年から20年。日本はいつも欧米と比較されダメダメ言われてきて、なかなかポジティブな話がなかったわけですが、2010年代後半からの政府サイドの活発化した動きや、投資家サイドのESG投資の盛り上がりなどがあり、ステークホルダーが見る企業の側面も変わりました。

企業側も「こりゃ儲けのネタになるぞ」と、まさに“ゴールドラッシュ”が起きているのが今です。(ゴールドラッシュは採掘者より採掘支援側が大きく儲けたとかなんとか。今でいえばコンサルが儲かる時代?)

私は2008年に独立して「CSRは(企業側も支援側も)儲からない」と散々言われて育ったクチですが、いまや「サステナビリティは儲かる!」と言われて育つ若手が多いわけですから、時代って変わるんだなぁと思うわけです。まぁ、私からすれば、「ずっと前(10年以上前)からサステナビリティ重要って言ってましたよね、私!」という感覚なので、業界でも中堅になれたのかなと勝手に思っております。

意思決定の強さ

さて昔話はさておき、ここ数年ですっかり変わったビジネスセクターにおけるサステナビリティの捉え方ですが、とはいえ、全上場企業をみても、これから本格的に進めますという企業のほうが多いわけで、これから起こる数千社単位でヨーイドンで始まるサステナビリティの大航海時代は、並大抵の船(組織・人・スキル)では隣を走る船に勝てないわけです。

その時に、まさにそれが2022年の今のわけですが、どんな要素がサステナビリティを進めるポイントになるかというと、その一つは「意思決定力」だと思っています。これは経営者のサステナビリティへのコミットメントでもありますし、取締役会でのマネジメントもそうだし、まさに組織として大海原に出るぞと決意する行為だと思うのです。

しかし大企業でも、JTCと呼ばれる“ザ・日本企業”などは、組織が大きすぎて高いレベルでコミットメントできないんですね。ですので、たとえば、未来についていくら精度の高い情報と分析を手にできる状況にあったとしても、社長が意思決定できるかはまったく別の話しで、というか論理的思考力とはまったく別の能力で必要になります。

コミットメントできずに、ズルズルと惰性でせいぜいできるのは「関連法令やルールに最低限従えば良い」という受け身の話くらいです。ただ今の時代、上場企業経営者は、組織が社会動向(ESGなど)に沿っているかをステークホルダーに激しく問われ、強いプレッシャーを受けています。

たとえば、金融庁・経産省・東京証券取引所が「TCFD重要!」といえば、TCFD対応をしなければ投資家などの評価が下がってしまいます。そもそもの課題設定の是非はともかく、まずはゲームのルール変更に適応するしかありません。どうしてもESG対応に意味を見出せないのであれば、上場をやめるしかないので。ルールというのは、それだけ、そのマーケットにいる企業に強制力を持っています。

ですので、つまり何が言いたいかというと「社長、社会は常に変化しています。貴社も変わるべきだと思いますが、その覚悟はできましたか?」ということでしょうか。2020年のコロナ蔓延からのウクライナ紛争で、世界はより不安定になり、2020年以前の社会と同じ状況には2度と戻りません。こんな不安定なビジネス環境だからこそ、パーパスやミッションが求めまれるし、そこに向かうトップの強い意思決定が求められるのかなと。

柔軟な戦略の価値

さて、そんな変化の大きい時代にいる我々ですが、時代がサステナビリティを進化させ、今や経営戦略はより複雑化してきています。国内外の社会動向も情報開示ガイドラインも複雑になる一方ですよね。つまり、今の、サステナビリティ対応で結果を出すためには、他社よりも、一つでも多くを学び、それを実践するという「試行錯誤のできる組織」が上に行く時代になったといえます。

実はこの“変化するサステナビリティ経営”を拙著「創発型責任経営」という本でまとめていたのですが。複雑化し、かつ変化し続けるサステナビリティ課題に対応するには、社会変化の予測精度よりも、半歩先のトレンドを取り入れ実践するための、戦略と実践の柔軟性が重要だと考えています。これが創発型責任経営でまとめた柔軟性のあるマネジメント手法です。

これは自慢ではないけど、5年前の2017年ごろから書き始めて2019年に出版した創発型責任経営は、まさに現代のサステナビリティ戦略のモニュメントになるような概念だと思っています。ちなみに創発型責任経営で言っていることは、戦略も重要だけど、企業が最も重要視すべきは価値創造の起点となる「人」であると。変化が大きい時代では、戦略は作った瞬間から陳腐化が始まります。だから戦略も必要だけど、価値創造の起点を戦略ではなく人にしようという話です。

戦略は事業環境などの前提条件が変われば効力の大半を失ってしまいますが、人(従業員)はケイパビリティというか、社外の要因の影響は一定数受けるものの、優秀な人は優秀というか、人としての存在価値の効力がなくなることはありません。人的資本が重要というけど、難しいこと言わず「従業員」が重要です、でいいと思うのですよ。

社会もビジネスも、1年先すら見通しにくい時代に必要なものは何か。変化が大きい時代に価値を生み出し続けるものは何か。少なくとも、この10年の企業のサステナビリティ動向を見た限り、戦略ではなく人であった、いう事実なのかなと。逆にいえば、人と戦略がマッチしたら、とんでもない成果が生まれる可能性大です。

ですので、小手先のサステナビリティ戦略ではなく、パーパスやミッション・ビジョン・バリューの最上位概念と人という、変化がほぼない要素に注目が集まるのではないでしょうか。変化が多い時代こそ、変化しない要素(変えてはならない要素)にフォーカスし、他の要素は社会の流れに逆らわず変化させ続ければいい。

戦略を“こじらせて”はいけません。価値創造の源泉をもう一度見直しましょう。貴社の価値の源泉は、理念か、戦略か、人か、はたまた別の要素か、どこになるのかを知り、それをステークホルダーに伝えるべきです。少なくとも、私は貴社のそういう側面を知りたいです。

まとめ

サステナビリティ経営に、すべての企業に成果がでる再現性ある要素なんてないし、あったとしても国際的に大きなゲームチェンジがおきればそれで終わりだし、文字どおりの正解のない取り組みを続けるのは相当にしんどいです。

変化というものは、基本的にストレスです。企業経営において変化はないほうが楽ですよ。でも、社会が変化しなかったことなんて有史以来ないわけですので、諦めて変化に対応するしかないと思いますよ。ですので、やはり「学び続ける組織」はとても強いし、高い評価を受けながら変化もできる組織なんて最強すぎます。

あとはこれは私の体験ベースなので一般的かわかりませんが、担当者も経営陣も新しい考えを取り入れようとしている組織は高い評価受けますよ。月1回くらいは上場企業の取締役会などで外部講師させていただきますが、社長自身が社会のトレンドを受け入れようと努力するか、「私はやっぱりサステナビリティっていまだに信じらないんですよね」から発言する程度の結局変化しようとしない方なのか、で前者の方がESG企業評価が上がっています。明確に。

新しい考えを取り入れるということは、一旦自分の過去の成功事例を否定することにもつながるし、必ずしもポジティブにはなれないものです。これは人間だからしょうがない。そこで、きちんと意思決定をし、経営層も変わるのだとコミットメントをすべきなのです。

私の言っていることは理想論であることは承知していますが、理想的な社会を作るという概念自体がサステナビリティそのものであるため、私の話も少しは聞いていただけるとありがたいです。

というわけで、拙著「創発型責任経営」(日本経済新聞出版)は、Amazonや楽天で購入できますので、ぜひお願いします。CSR経営の先駆者である神戸大学の國部克彦先生らとまとめた、人にフォーカスしたサステナビリティ経営本です。要チェックやで!

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