ESG投資サイドの調査
ここ数年でさらに盛り上がりが加速しているESG投資。一般のビジネスニュースでも、よく見聞きするようになりました。そのせいか、民間調査も活発に行われるようになり、またESG企業評価も増えてきた印象です。
さて、私の専門がファイナンスやESG投資ではないのですが、だからこそ、投資家はどういう視点で企業のESG側面を見ているのかなどをできる限り調べるようにしています。そのアンテナに引っかかった調査やランキングを本記事にまとめて紹介します。
ESG投資家の調査、ランキングで見逃しているものがあれば一度チェックしてみてください。
投資家調査
シュローダー
・世界の投資家のうち約半数が、コロナ禍でサステナビリティに関する課題の重要性が高まったと回答しました。環境問題の重要性が高まったと考える投資家は55%、社会的課題の重要性が高まったと考える投資家は57%でした。
・更にサステナブル投資が進むためには何が必要なのでしょうか?サステナブル投資を増やす動機となる要因のうち、最も多くの投資家が挙げたのは、「サステナブル投資により投資リターンが向上するという実績」(53%)でした。「投資が社会と地球環境に与える影響を示す定期的なレポート」(40%)、「運用商品提供会社自身による、サステナブル投資であることを示す認証」(36%)がそれに続きました。
シュローダー、日本を含む世界の投資家2万3千人以上を対象とした意識調査結果を発表
デロイト トーマツ グループ
・ESG、SDGs、社会的価値の関連ワードの記載率は銀行、電力・ガス、エネルギー資源を筆頭に17業種中8業種が50%を上回り、比較的、高い割合で記載される傾向が見られました。
・SDGs、ESG、社会的価値が経営テーマとして示される中、パーパス(存在意義)のワードの記載をしている企業も2020年の98社から2021年の159社まで増加しました。パーパスを経営方針や経営戦略と紐づけて具現化する動きは今後も広がっていくことが期待されます。
・パーパスと同様に今後注目するキーワードとしてWell-being が挙げられ、2020年は7社でしたが、2021年は17社に増加しました。
デロイト トーマツが企業の経営テーマの動向を投資家向け開示情報から分析、DX、SDGs、カーボンニュートラルなどの記載が急増
PwC
経営方針、経営環境および対処すべき課題等における2017年と2021年との比較においては、「SDGs」「DX」「脱炭素」「ESG」「社会課題」「サステナビリティ」といった単語の増加が目立つ。中でも特に「脱炭素」「DX」は、2020年から2021年にかけて大きな増加を見せた。
有価証券報告書から読み解くコーポレートガバナンスの動向2021―テキストマイニングによる分析
MSCI
・機関投資家のほぼ3分の1(31%)は、気候リスクが今後3~5年間の組織の投資方法に最も大きな影響を与えると述べています。これに続き、投資家の約5分の1(19%)が人工知能などの破壊的技術を挙げており、14%がESG評価の精緻化が最も大きな影響を及ぼすと考えています。
・政府系ファンド、保険会社、運営基金・財団、年金基金を調査した結果、投資家の4分の3以上(77%)がCOVID-19に対応してESG投資を「大幅に」または「適度に」増やしています。
MSCIの調査結果:世界の投資家はパンデミックに対応してESG投資を加速、相互関連するリスクが課題に
野村アセットマネジメント
・ESG投資に関する意識調査で、全体の3割が関心ありと回答。年代を問わず、関心ありとの回答が3割を占め、世代を超えたESG投資への関心が見て取れる。
・ESG投資関心層はESGのうち、特に環境問題に注目している。
ESG投資に関する意識調査 ~世代を超えた、ESG投資への関心の広まり~
スパークス・サーベイ
・「普段のくらしの中でサステナビリティを意識することがある」投資経験者の75%
・「ESG ファンドに興味がある」は56%と半数超、一方「ESGファンドへの投資を行ったことがある」は僅か15%
・サステナブル社会の実現に向けてリーダーになってほしい歴史上の人物1位「徳川家康」2位「坂本龍馬」3位「織田信長」4位「渋沢栄一」5位「豊臣秀吉」
スパークス・サーベイ ESG 投資に関する調査 2021
QUICK ESG研究所
・収益(リターン)よりESGを重視して投資する人々は、人権など社会課題に関心
・リターン次第でESG要素に配慮する「ESG投資検討群」では、水が1位、次いで森林、生物多様性と主に環境関連課題が上位となった。
・ESG投資に関心のある人の理由は、「環境や社会にとって良いことをしたいから」と「自分のお金が悪いことに使われたくないから」の合計が56.2%で、リターンにつながることを理由に挙げたのは15.6%にとどまった。
QUICK ESG研究所、 初の「サステナビリティ意識調査2021」を公表
ESG企業ランキング/アワード
私はあまり好きではないのですが「ESG投資銘柄」ってありますよね。投資家サイドからの色々な意見はありますが、よりサステナビリティ視点ということで、以下のESG格付け・ランキングを紹介します。
日経BP
ジャパンタイムズキューブ
東洋経済新報社
最新「ESGに優れた企業ランキング」トップ200社(2021)
環境省
[環境サステナブル企業部門]
金賞:キリンホールディングス株式会社
銀賞:コニカミノルタ株式会社、積水ハウス株式会社、ダイキン工業株式会社
銅賞:アサヒグループホールディングス株式会社、味の素株式会社、大阪ガス株式会社、大和ハウス工業株式会社、富士通株式会社、富士フイルムホールディングス株式会社
特別賞:JFEホールディングス株式会社、ユニ・チャーム株式会社
ESGファイナンスアワード2021
Gomez
[最優秀企業]
伊藤忠商事、資生堂、丸紅、三井物産、リコー、丸井グループ、コニカミノルタ、三菱重工業、双日、ライオン
ESGサイトランキング(2021)
そのほか
東京証券取引所
[中長期的な持続可能性向上に向けた取り組みについて]
・サステナビリティ課題に関する「議論の活発化」や「対応活動の活発化・向上」に結びついている企業が多く、これらの企業においては、「戦略や計画の策定・見直し」や「取締役会で審議」に取り組んでいる。
・これらの取り組みに結びついている成功要因として、「中期経営計画への反映」や「経営トップのコミットメント」を挙げる企業が多い。また、「サステナビリティ委員会の設置」や「CSOの設定」を成功要因とする企業もある。
「上場企業のコーポレートガバナンスの取組と効果に関する調査」調査結果報告書の公表について
HSBC
・ HSBCが実施した2021年サステナブル・ファイナンスと投資調査によると、世界の資本市場で資金調達する企業の94%は、今後5年以内に環境面や社会的に問題があるビジネスモデルからの転換を図ることを計画している。
・投資家の88%が投資先企業が気候変動の影響に備えることが「重要」あるいは「非常に重要」であると回答した。調査によると、これら投資家の4分の1近くは、信頼に足る計画を持たない企業から投資を引き上げると考えている。
・投資家はグリーンウォッシング、すなわち環境に配慮しているように偽る行為も危惧しており、懸念事項とする回答者が全体の69%にのぼった。なかでも南北アメリカ大陸では64%が「深刻な問題」と回答している。
企業の94%、ESG考慮しビジネスモデル転換へ<HSBCリポート>
まとめ
上場企業のサステナビリティ推進担当は、IRや広報でもないのに、これらのデータを考慮して投資家向け情報開示に日々取り組んでいるという方も多いでしょう。私としては、もう、ご苦労様ですとしか言えません…。
今回紹介した調査やランキングの情報やランキング上位企業の動向など、まだまだ学ぶべきところはたくさんあります。とくにランキング上位企業の取り組みは、業種に関係なく「これらの活動と開示をすれば評価される」というような、いわゆるベンチマークになるでしょう。
ESG投資といっても、ESGを重視する投資家もたくさんの属性や視点の方がいて、一括りにできるものではありませんので、IR部門の方と協力して、ステークホルダー、特に投資家サイドにきっちりアピールしていきましょう。参考になれば幸いです。
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