CSRとアジェンダ
最近のCSR/サステナビリティ界隈では「アジェンダセッティング」の重要性が高まっています。
アジェンダセッティングは「課題設定」と訳されますが、CSRや社会貢献の文脈でいえば「課題提起」に近い意味だと考えています。たとえば、SDGsが「2030アジェンダ」ともいわれますね。これは「2030年までの課題提起」というニュアンスです。
アジェンダを決める。業務プロセスでいえば「マテリアリティ特定」などで必要になる概念です。多くの企業では、アジェンダの主語が自社となっていますが、本来は社会が主語になるものです。CSRとはアジェンダセッティングそのものであるとも言えます。
このアジェンダセッティングに関しては、いくつか重要な視点がありますので、本記事でまとめたいと思います。
アジェンダセッティングの本質
最近の日本のCSR活動は、社会課題“解決”に偏り過ぎている気がします。SDGsや気候変動関連はイニシアティブとして確立・認知され、課題が明確になっているように見えますが、それはマクロな視点での話であり、自社の課題と必ずしも重なるものではありません。しかも、社会問題とは基本的に解決できることはなく、どれだけ緩和できるのかが現実的な焦点となります。
それもあり、日本企業はもっと、社会課題“発見”に力を割くべきでしょう。例えば、SDGsには日本固有の社会課題はほぼ含まれていません。海外の貧困支援をするより、国内の貧困支援をしたほうがいいのでは?と考える日本のステークホルダーもたくさんいるでしょう。日本のステークホルダーにとっては、日本の社会課題に当事者意識を感じやすいです。
このあたりのステークホルダーのニーズとSDGsなどの社会的要請をバランスよく考える必要がありますです。このあたりが実務でいうアジェンダセッティングです。課題を解決する前に本当に自社それに対応すべきが見極めるのです。目の前の「困ったこと」と「根本的な課題/現実と目標のギャプ」を一緒に考え、問題箇所の認識を間違えると絶対に正しい解決策を導き出すことはできません。
日本企業はアジェンダセッティングが弱い。つまり、八方美人なCSRではなく、どんな社会課題を解決するためにCSRをしているかというアジェンダ(課題)へのフォーカスが弱いということでもあります。マテリアリティがこれだけ重要と言われているのに、アジェンダセッティングが弱いんじゃあ評価に値する企業にはなれません。
慈善活動のアジェンダ
私の持論ですが、社会貢献活動(慈善活動)は、特にアジェンダセッティング思考であるべきだと思っています。誰にとっての課題かというと、社会・ステークホルダーにとっての課題(注目すべき・議論する価値のある社会課題)です。
企業単体の社会貢献活動で何十億円を使かおうが、社会課題になんて解決しないんです。できたら、もの世の中には問題なんてなくなっているはずです。企業が本気で「社会的インパクトの最大化」を目指すのであれば、本業と直接的な関係性の薄い社会貢献活動(慈善事業/フィランソロピー/メセナ)の意味は、まさにアジェンダセッティングのためにあると。すべての社会課題をビジネスで解決できるわけではありません。しかしビジネスで解決できない課題は対応しない、ではいっこうに社会は良くなりません。
この「理念の実践における社会貢献活動」は、CSR活動の中でも非常に意味のあるものなのではと感じています。社会貢献活動は、社会的・経済的インパクトをKPIにするのではなく、理念が実践できているかどうかが、ポイントになるかも、と。
CSVの文脈でCSR活動が本業とのリンクを求められて(それはいいことではあるのですが)、長期的なアジェンダセッティングが活動の手法に縛られ明確にできていない場合もあります。本業とは、あまり関係のないカテゴリでも長期的に本業にリターンがあると思えば、アジェンダセッティング思考でやればいいんですよ。
まとめ
まとまりのない話で恐縮ですが、要は「活動を始める前に課題設定を明確にしておきましょう」ということです。
最近の統合報告書では、アジェンダの設定がとてもうまくできている(ように見える)ものが増えています。解決すべき社会課題が明確になっているからこそ、CSRもそうですし、存在意義が生まれるわけです。極端な話、社会の課題をしない・できない企業は、社会に必要な存在ですか?ということです。
SDGsなどはまさに、自社のアジェンダセッティングに有用なフレームワークです。ぜひ、うまく活用し、社会に自社の存在意義を存分にアピールしてくださいませ。
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