東洋経済CSRセミナー

企業はNPOをどう評価する?

先日「第8回東洋経済CSRセミナー:企業とNPOの上手な付合い方」に参加してきましたので、知っている方も多いとは思いますが、改めて、企業担当者(CSR担当者)が知っておくべきNPOの情報をまとめたいと思います。

CSR活動においてNPOとの連携はかかせません(やれ、という法律はないのですが)。すでにコラボレーション実績があればいいのですが、大手企業でも、新規での協業は結構ハードルが高いです。

さて、僕のNPO連携の視点は昔から一貫しておりまして、「どんなNPOと、どんな活動をして、どんな成果を見込むのか」という点です。企業はCSR活動をして、受益者(サービスを提供する人、NPOチャネルの先にいるステークホルダー)へのメリットと、支援者(企業自身)へのメリットの両方を構築する必要があります。誰のメリットにもつながらないNPO連携は、CSR活動とは言えませんので、このあたりはシビアに考えるべきかと思います。

というわけで、本記事では、企業担当者はNPOとのコラボレーションに関してどの点に注意すべきかをまとめます。

東洋経済CSRセミナー

東洋経済CSRセミナーでは、「一般財団法人 非営利組織評価センター」というNPO評価を行なう団体の代表である太田氏の講演がありました。太田さんの話は、NPOについての解説でした。ただ具体的なNPOと企業との連携などの具体例の紹介や考え方についてはまったくなかったので、個人的には、もっとCSRの話が欲しかったな…。

企業側に役に立つ情報としては、「非営利団体の問題事案」という部分でしたね。公益・認定・一般のNPOや社団法人などは日本に10万団体くらいあるのですが、すでに認証取消・解散した団体も2万団体くらいあるというのです。

ふえー。これから非営利団体はどんどん増える一方なので(競合が増えるので)、これから認証取消や解散する団体が増えてくるでしょう。日本もいよいよ、非営利団体の倒産件数が増えてくるのでしょうか。競争自体は喜ばしいことだと思います。

そして、もう1つの基調講演はCSRアジアの赤羽氏でした。赤羽さんの話は安定感のあるいつものご講演というイメージ。アジアを中心とした海外の事例が紹介されて、インパクト評価に関しても解説がありました。

国内事例としては、味の素(ガーナ栄養改善プロジェクト)、リコー(インド教育支援プロジェクト)、タケダ(タケダ-Plan保健医療アクセス・プログラム)の話がありました。

赤羽さんは、そもそもNPOとパートナーシップを組む企業側のメリットは「チャネルが増えること」としています。企業がNPOに求めることはまさにそこでしょうね。そこ以外に期待するものはない、と言えるくらいです。NPOに過度な期待をする企業もいますが、大抵のCSR活動はNPOを通さなくてもできることなので、アウトカム(成果)・インパクト(影響)をきちんとプランニングする必要がありますよね。

で、このセミナーで『「CSR企業総覧」で記載の多かった連携するNPO/NGO名』のデータは面白かったです。1位・テーブルフォーツー、2位・ジャパンプラットフォーム、3位国連WFP、というランキングでした。30位まであるランキングを見ると、色々学びがありそうですが、企業側への色々な提案ができそうな団体はやはり企業連携がうまいな、と表を見て感じました。

あと、実は数年前から“とある傾向”があるという話があり、非常に興味深いものがありました。詳細が知りたい方には、どこかでそっとお伝えします。“横並び大好き”な日本企業らいくない傾向にびっくりすると思います。

一応、有料セミナーでしたので、詳細については当記事では割愛させていただきます。

NPOとの戦略的提携

とはいえ、もっとコラボレーションのポイントを知りたいという人は多いと思うので、赤羽さんの講演から「連携を戦略的にする3つの問い」という話を。

その“3つの問い”とは、「受益者のニーズを把握しているか」、「活動の目的・目標は何か」、「どのように実施するか」という3点です。最終的なゴール(目標)を見据えた出口戦略といいますか、場当たり的な対応ではなく、企業・NPOの双方が目標に対してコミットメントをして活動を行なうことが重要なのです。

僕の戦略「どんなNPOと、どんな活動をして、どんな成果を見込むのか」と似てます。というか、ほぼ同じこと言ってます。よかった、僕は間違ってなかった。

企業の事業活動として行なうので、予算の大小は関係なく、メリットというか成果を明確にする必要があります。最終的な成果というのは、例えば、大きくいうと「企業価値向上」などのことで、具体的には「レピュテーション向上」、「リスクマネジメント」、「マーケティング効果」などです。

ちなみに、赤羽さんは、「インパクト評価」も重要だと言ってました。効果測定とか“見える化”の話です。これは当ブログでも再三お伝えしているところなのであまりふれません。

まとめ

僕としては、ソーシャルセクター(NPO)にも知人が多数いて、ソーシャルセクターでのお仕事などもさせていただくというのもありますし、NPOにかなり近い人間だと思ってますが、普通のCSR担当者では、注意点などは実感も何もないと思います。

方法論を理解しても実施にこぎ着けるには、CSR初級者では多分ムリです。成果を出すどころか効果測定すらできないでしょう。本気で取り組みたいのであれば、ある程度詳しい人(CSRコンサルタント)と一緒にする必要があるでしょうね。

今回のセミナーの注意点などを考慮し、1社でも多くの企業に、成果につながるNPOとのコラボレーションによるCSR活動の実施のヒントとなれば幸いです。

次回以降で東洋経済CSRセミナーで開催してほしいテーマなどがありましたら【お問合せフォーム】よりお待ちしております。参考にさせていただきます。

関連記事
CSR活動でNPO/非営利組織を立ち上げる5つのメリット
企業とNPOの連携・協働事例とその対策について
NPOから見る、企業とのコラボ・協働・連携の10つのポイント