NPOと企業のコラボレーション
昨今、企業がNPOとの協業を考えている(実施している)例がポツポツで出ているようです。
今ままでのスタイルでいえば、寄付して終わりとか、予算出して丸投げとか、協業というか、自社の社会貢献活動を発注しただけのようなものが多いイメージがありました。NPO法(1998年施行)から少し時が立ち、2000年代からは、徐々に、企業の社会貢献活動のパートナーとしてNPOとのコラボが進んできたみたいっす。
で、2011年の東日本大震災以降、その動きが加速していくわけですが、言語が異なる企業とNPOとのコラボは想像以上に難しく、見据えていたゴールまでたどりついたプロジェクトはほとんどないのかもしれません。
というわけで、今回は、僕の視点ではなく、NPO側が企業についてどう考えているか、を学んでいきましょう。ピックアップさせていただくのは、NPO育て上げネットの工藤さんと、NGO PLASの門田さんのご意見です。
NPOから企業へのご提案
その1
1、企業側の実情は無視/考えていない
CEOや社長、意志決定権を持っている個人とお話する場合は異なるかもしれませんが、どの企業にもビジョンやミッション、社是など大切なものを持っております。大きな企業はCSRレポートなどを出されているか、Webサイトで発信しています。これをまったく読むことなく話をされるのが困るそうです。これは企業に限らず、一般的なコミュニケーションでも同じだと思います。2、何を欲しているのかよくわからない
お金の話はしづらいかもしれませんが、プロボノ的に人材資源を提供いただきたいのか(この場合は専門性を含む)、場所の提供なのか、いいづらいかもしれませんが、お金の話はしづらいかもしれませんが、最後の最後まで話がでないまま、「よしこれでいけるか」と思ったところで、いきなり新しいニーズや変更があるとご担当者も困ります。3、企業側のニーズも聞いて欲しい
企業のご担当者としても、多かれ少なかれ、自社にとってNPOと協働してよかったと思うポイントがあります。そしてご担当者のみならず、上司や部下、同僚、株主など多様なステークスホルダーがいますので、短期的に利益を求められることはほとんどない(僕の経験的に)ですが、協働するプロセスや協働した結果として「こうなったらいいな」というのはお持ちです。
(NPOから企業へのご提案 より抜粋して引用)
工藤さんが日頃様々な企業担当者と話をする中で感じたことをまとめてます。なるほど。勉強になります。
ぶっちゃけ、内容はさておき、CSR活動ってNPOを挟まなくてもできるんですよ。自分たちの存在ありきでNPO担当者が話を進めてしまうと、企業担当者も困ってしまう、という話は僕も聞いた事があります。
これは営利企業でも非営利企業でも関係なく、相手にメリットやバリューを提供できるよう、ヒアリングする必要があります。企業側もNPO側も、相手は何を欲してるのかを見る必要があるでしょう。恋愛と一緒ですよ。
相手が嫌がることはやらず、相手がしてほしいと思う事をしようと、さりげなくヒアリングしまくるのです。まぁ、僕は恋愛経験が豊富ではないのでイメージですが(笑)
その2
1、広報/IR
やはりというべきでしょうか、できれば何かしらの媒体に掲載されることで、取り組みが知られることを期待されることは多いです。ただし、先方はプロですので絶対に、ということはおっしゃりません。しかも、自社企業が一般的に知られるということよりは、思った以上に「社員やそのご家族に知ってもらいたい」というのがあるなぁというのが印象的です。2、マーケティング
マーケティング的にどう活用できるかということはまったくありませんが、実際にプロジェクトに参加されたたくさんのステークスホルダーの気持ちや意識がどう変化したのかに興味を持たれることが多い印象があります。特に数値/定量化にこだわられることもなく、ひとりの参加者の「コメント」や「感想」なども熱心に読まれています。3、社長さんや企画/戦略系
いまは社員さんが(本業に負担なく)参加できることを望まれることがとても多くなってきたように思います。どのような形が負担がないのか、また、専門性や思いを生かせるのか、というお話/議論は毎回勉強になります。特に、対峙/解決を目指す社会課題(ひとであれ、ものであれ、無形のものであれ)にタッチするということをとても大切にされています。
(NPOから企業へのご提案2 から抜粋して引用)
ご存知の方も多いと思いますが、企業とNPOとのコラボと言っても、担当部署に大きく性質が異なります。CSR関連部署が窓口になったとしても、今回のプロジェクトは企業側でどの要素が強いのがを先にヒアリングする必要があるということでしょう。
企業の対応としても、営利企業に発注するのと同様に、目的・目標や達成したいビジョンなどを明確することで、よりインパクトにつながるプログラムが作れるのかもしれませんね。
その3
1、ビジョンなど
いろいろな企業のご担当者とご相談をさせていただき、結果としてご一緒することも、結果としてご一緒させていただけなかったとしても、盛り上がるのはビジョンの話ですね。「夢」「ビジョン」「ストーリー」何でもいいのですが、例え、目の前のアイディアがたった一人の誰かのためであっても、それが広がっていったら、何かを変える一穴になったら、次はどのような展開ができそうか、という話はすごく盛り上がります。2、ネットワーク
企業にも素敵なネットワークがありますし、特に非営利組織だからということもないと思いますが、とは言え、さまざまな会話や議論のなかでネットワーク(つながり)の強みが語られます。一団体で取り組める範囲(受益者数)が少なくとも、横のつながりで展開できれば大きな力になります。3、スケールアウト(展開可能性)
1,2ともかかりますが、小さな成功を横展開、縦展開、斜め展開、時空を超える展開をする際には、自団体と企業との協働を構築するときから、展開可能性が少しでも高くなるような枠組みを知恵を出し合って考え、実行していくことが大切だと思います。
(NPOから企業へのご提案3 から抜粋して引用)
そもそもCSR活動や社会貢献的な活動は、単発でやってもたいした結果は出せません。それこそ、サスティナビリティが大事って言っておきながら、自分たちの活動がサスティナブルでなければ意味がありません。継続的な展開を意識しながら、最適解を求めていきたいものです。
企業とNGOの連携のためのガイドラインとは?
連携の際にもっとも重要なこと、それは「何のために連携するのか」という目的を明確にし、相手の連携目的を理解することです。当たり前のことですが、出来ていそうで、出来ていないのが、この「目的の明確化」。NGO側では連携を通した「組織強化」や「ノウハウの獲得」を期待しているかもしれません。本質的な目的に加えて、この副産物への期待も含めて共有できると、お互いへの理解が深まります。
NGO側でも企業側でも、連携の際の考え方やスタンスを伝えられるように、それらが資料やウェブサイトにまとめられているとよりわかりやすいでしょう。たとえばプラスでは、「企業のみなさまへ」※というページをサイト上に作り、連携の種類や私たちの方針などをご紹介しています。
また、担当者同士で腹を割ってしっかりと話をすることも大切です。私は、企業さんから連携の提案があった際、エイズ孤児問題の解決という目的を確認することに加えて、場合によっては、「(社会課題の解決だけでなく)連携に御社が期待することをざっくばらんに教えてもらえますか?」とストレートにお聞きしています。
(企業とNGOの連携のためのガイドラインとは?より抜粋し引用)
PLASでは「企業のみなさまへ」というページを作り、企業担当者に自分たちは何ができるのかを明文化し伝えています。コンバージョンがいいのかどうかわかりませんが、少なくとも企業担当者としてはわかりやすいし、社内営業用の資料を作る手間も省けるので、非常によろしいかと思います。
寄付が欲しいとか、親和性が高い〇〇系企業とコラボしたいとか口でいうのは簡単ですが、こういったコンテンツをまずは持つ事で、その第一歩となることは間違いないと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
日本には、企業とのコラボ実績がNPO団体も多いと思いますが、NPO側からノウハウを開示(発信)してくれる人は数人程度しかおりません。CSR担当者(関係者)であるあなたも、こういうNPOの人の声に耳を傾けるべきです。NPOとのギャップも小さくなることでしょう。
ファンドレイザーで適当なCSRを語る輩も中にはいますが、それらはさておき、自分たちのことは最低限自分たちで明文化し、発信をしていくよう心がけましょう。ウェブ系のプロボノの人は多いと思うので、相談してみるというのが現実的なファーストステップかもしれませんね。
以前、NPOと企業のコラボについて書いた記事もありますので、実施を検討している企業の担当者の方は参考にしてみて下さい。
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