CSR調達

CSR調達と労働・人権問題

CSR調達は、素材の問題よりも「労働・人権」に関する問題のほうが多い気がします。

CSRではサプライチェーンマネジメントやCSR調達が、リスクマネジメントの本流であり一番事業リスクが存在するにも関らず、なかなか直接的な対応がしにくい(現場が見えにくい)ものであります。つまり難易度が高いということです。

というわけで、CSR調達4事例と、最近ウェブでよく検索される企業のピックアップをします。これらの事例や企業の活動事例から、最新動向や事例を学び、自社の取組みに活かしてみてください。

富士重工業のCSR調達

特別リポート:「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者

ロイターのスペシャルレポートとして、スバル(富士重工業)の劣悪な労働環境のルポが掲載されています。長いですが、興味がある方はどうぞ。

先日、Amazonの労働問題をNew York Timesが掲載しました。日本語では「Amazonの労働環境を非難するニューヨークタイムズの記事にジェフ・ベゾスが「全くの誤り」と猛反論」という形でCEOの反論が掲載されています。

業績を伸ばしているという企業の多く(すべて?)は、こういった労働問題を抱えています。その程度や範囲は大きく企業差がありますが、特に工場等の劣悪な労働環境は労働・人権問題の一番有名な例です。

僕は、報道を見ているだけなので真実はどうなのかはわかりませんが、大手メディアがルポを掲載するということは“火のないところ煙は立たない”こととも見えます。NGOやメディアにバレるとレピュテーションに大きく影響します。

事件・事故はなかなか報告や公表しにくいとは思いますが、叩かれる前に対応をしていきましょう。「隠してバレる」と被害は倍増しますから…。そんなのみんなわかってるでしょ…。なぜこういう話題がなくならないのか…。まぁ、そんな簡単な話ではないのは重々承知でございます。

富士ゼロックスのCSR調達

ベトナムで調達先企業に環境や労務状況への配慮など社会的責任に関する取り組みを求める「CSR調達」を月内に始める。中国で既に取り組んでおり、ストライキによる生産ラインの停止時間などを大幅に削減した。年度内にベトナム工場の生産量を倍増させるのに対応して、ベトナムでの現地調達のリスクを低減する。
部品メーカーに対し、月内にも労働状況や法令順守、環境対応などのセルフチェックを依頼。それに基づき、ゼロックスが訪問診断し改善を促す。
富士ゼロックス、ベトナムでCSR調達 月内に開始

日経新聞の記事です。富士ゼロックスが、取引先のCSR調達教育といいますか、調達リスクに対し積極的なアプローチをしているようです。

製造業は、できる限り、一次サプライヤーへの訪問診断すべきでしょうね。大手や上場企業となれば、世界中に何千・何万社というサプライヤー(取引先)があるんでしょうけど、計画を立てて数年で全社まわるくらい見るのがベストだと思います。

CSR調達にうまく対応できると、この例のように実務上のメリットも生まれます。まさにリスクマネジメント(守りのCSR)から、事業メリット(攻めのCSR)に転嫁できた例と言えるでしょう。素晴らしいですね。

パタゴニアのCSR調達

米アウトドア衣料品メーカーのパタゴニアは17日、アルゼンチンの生産者グループ、オービス21から羊毛を調達するのを中止すると発表した。米動物愛護団体PETAが公開した動画に、インナー衣料・防寒衣料用のメリノウールを生産する農場で、現地の労働者がナイフで子羊を切りつけたり突き刺したりする様子が映っていたため。
動画を見た消費者のソーシャルメディアでの反応は、パタゴニア製品を2度と買わないと誓うものが多かった。
米衣料品パタゴニア、動物虐待を指摘された農場から羊毛調達中止

ロイターの記事です。パタゴニアの決断は素晴らしいのですが、すでに、ソーシャルメディア上では、風評被害というかブランド毀損(イメージダウン)が起こり始めていたみたいですね。

サプライチェーン上のリスクで怖いのはこういった、まったく感知できない場所での不祥事というかリスクでしょう。発見できれば取引中止や訴訟という対応ができるでしょうが、もしかしたら一生気付かなかったかもしれません。原材料調達はホント気をつけないと。

CSR調達でよく検索される37事例

以下が、ウェブ上でCSR調達関連でよく検索される企業名(ワード)です。よく検索される、ということは注目度が高い証拠です。良い意味か悪い意味か、までは言及しませんけど。

エプソン、オムロン、大林組、花王、キリン、キヤノン、クボタ、コニカミノルタ、コマツ、サントリー、シャープ、昭和電工、住友化学、住友電工、ソニー、大成建設、武田薬品、帝人、東芝、凸版、トヨタ、ナイキ、ニコン、日産、NEC、日立製作所、富士ゼロックス、富士通、富士フィルム、ファーストリテイリング、ホンダ、三菱電機、三菱重工、ミネベア、リコー、ローム
(選定はGoogleサジェスト・Googleキーワードツールなどによるピックアップ、正式な社名でない場合もあります)

メーカー、BtoB、製造業などのカテゴリーとなる有名企業たちです。上記の企業だと「月間数百人以上」が検索していると思われます。あなたが上記企業の方であれば、CSR調達に関するページを設ける(ブラッシュアップする)よう、手配をしたほうがいいと思いますよ。

実際、キチンと対応していても、情報開示を怠っていると第三者に評価されないし、へたしたら叩かれるきっかけになってしまいますよ。

まとめ

最近は、CSR調達に力を入れます!というようなニュースリリースや取組みをよく見聞きします。CSR調達の問題点や失敗事例なんかは、企業不祥事という形で表面化することが多いので、皆さんもよくご承知かと思います。

前から何度も指摘しているとおり、事業上のリスクの多くはサプライチェーン上に存在します。ここの対応が疎かで、リスクヘッジなんてありえません。CSVとか戦略CSRとかどうでもいいので、まずは最低限のリスクマネジメント対応を必ず徹底してください。

CSVで売上数億円上げることより、リスク対応不全による数百億円規模のリスク(損失)のほうが致命的です。CSVや「本業でCSR」の論調は大賛成なのですが、企業へのインパクトが大きい方から対応するのがセオリーです。そのためにマテリアリティやバウンダリの設定(ステークホルダーの特定)が叫ばれているんです。

CSR調達をPDCAの実務的ラインに乗せるには、トータルのCSR戦略を固める必要があるでしょう。“灯台下暗し”です。足腰の強化は、人間でも企業でもとても大切なことであることを、お忘れなく。

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