CSR報告書

ソフトバンクのCSR

今回は、「ソフトバンク:CSRレポート2015」の感想をまとめます。

「ソフトバンクグループ CSRレポート2015」は、文字通りグループ会社の取組みを紹介するような網羅的な内容になっています。

グループ会社を複数持つ企業のCSR報告書として色々参考になると思います。

CSR情報開示概要

関連会社数が120社だそうで、連結のレポートとしての細かい部分はあまりなく、主要企業のCSR活動紹介みたいになっています。

例えば、Yahoo!JAPANは、著名な社会的責任投資インデックス「FTSE4Good Japan」に選出されているようですが(2015年版?)、グループ報告には記述がありません。まぁ、日本で2015年は176社が選出されてますし、企業価値としての優位性はあまりないだろうから別にいいんですけど。

CSRレポートは「ISO26000」による枠組みが中心のようですが、ウェブサイトには「GRI/G4」対照表が載っています。あれ、GRI/G4ってもっと項目多かったと思うけど…。標準項目だとこんなもんか。開示コンセプトは「準拠」と勘違いするかもしれないので、もう少し解説があるとわかりやすいかもしれないですね。

通信業界だと、NTTドコモのCSR報告がガチなのであのレベルを目指して欲しいですが、本レポートはグループ各社のものなので、ボリュームや内容はこんなもんだと思います。ソフトバンクのCSR報告と、グループ各社の報告との情報整合性があるともっと良い報告書になったと思います。

ただし、NTTドコモは基本的に自社のCSRレポートなので、単純比較できない部分もありますのでご注意ください。

トップメッセージ

僕が好きなのはトップメッセージです。

マテリアリティやステークホルダーにも言及があり、ミッション・ステートメントとCSRスローガンが“同じ”というのも好印象。

そもそも、経営方針とCSR方針が異なるベクトルでいいわけないし、“ブレ”はインパクト最大化の阻害要因ともなりえます。そういった意味では、ブレがないというのは非常に重要な要素だと思うのです。

プログラム事例

チャリティホワイト

「チャリティホワイト」は、ご利用料金の他に顧客から毎月10円の寄付をもらい、それと同額(加入者1人当たり10円)をソフトバンクが拠出して、1ヶ月当たり20円をNPOに寄付するもの。

報告書では9億円ですが、最近で寄付総額10億円突破したみたいです。金額もさることながら、被災地支援を震災から4年半たってもまだ継続している、というのはすごいですね。もう企業も撤退している所が多いし。

課題と対策

あとは情報動線の課題でしょうか。グループ各社の情報を載せてそちらに誘導したいのか、アンケートを収集したいのか、プログラムに参加してもらいたいのか、読者の“行動の受け皿”がないぶん、読んだ後のリアクションが取りにくくなってしまっている印象があります。このあたりはもったいないので、ぜひ来年は改善していただき、より読者視点を突き詰めていだくと、もっと良いレポートになるでしょう。

Yahoo!JAPANのCSRサイトもですが、“優等生”すぎるイメージがあります。ISO26000では「ステークホルダーエンゲージメント」が重要とされてますが、両社ともストーリーが綺麗過ぎて、ブランドのエンゲージメントまで到達できてないのかも。

じゃあエンゲージメントってどうやるの?という話は「CSRの中心概念でもあるステークホルダーエンゲージメントとは」や「CSRとステークホルダー・エンゲージメントと幸福度の関係性」という記事にまとめているのでご参考まで。

売上が数兆円レベルのグループ企業が多い企業はどこでも悩みそうな課題です。答えはありませんが、わりきって、グループではなく親会社の情報に特化する方法もあるだろうし、色々目的に合わせて戦略が考えられそうです。

グループ会社を多く抱える企業のベンチマークになるCSRレポートかもしれません。グループ会社を多く抱える企業の方は、当該ページよりPDF版をダウンロードして、確認してみてください。

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