CSR報告書の読書感想文
先日、某所で担当の方にお会いし、CSR報告書をいただきましたので、読書感想文を。
まず、僕がCSR報告書を読む時には「社長メッセージ」と「編集方針」を見ます。それで、だいたいの内容がわかるからです。
あとこれは僕以外もそうだと思いますが、CSR報告書は各ページ一言一句を読むメディアではありません。だからこそ、特集や「想定ステークホルダーにどのページを読んでもらいたいのか」は意識する必要はあるでしょう。
マンダムのCSR
まず評価したい点は、連結子会社で起きた火災事故(死傷者あり)の報告ページ(別途書面)。
事業活動における死傷者を出すことはもちろん褒められるものではありませんが、報告書制作後の事故発生にも対応しようという企業の情報開示姿勢は評価に値します。
上場会社は特にネガティブ情報の発信を嫌がる傾向にありますが、適切なネガティブ情報の発信は逆に、透明性やレジリエンス(柔軟な対応)がある企業として評価が上がる側面もあることに留意すべきです。
あとは、CSR報告書の女性活躍推進(女性活用)分野でしょうか。数字を見る限り、非常に進んでいるというわけではないようですが、報告書の社員登場部分に女性が多く、イメージは非常に良いですね。
アニュアルレポートも出しているので、今後は統合報告に移行するのでしょうか。また、CSR推進部門が2015年4月にできたということで、環境面だけでなく、より多くのステークホルダーを意識した事業活動に期待です。
あと、僕の好みですが、マンダムのように、オリジナルのCSR報告書タイトル名は好きです。「サスティナビリティ・レポート」などは、わかりやすは抜群なものの、オリジナリティとなると評価が難しいです。特にBtoC企業は、オリジナリティあるタイトルでもいいと思いますけどね。
余談ですが、僕の使うヘアワックスはギャツビー(マンダムのブランド名)です。
アオイネオンのCSR
次は静岡の中小企業のアオイネオン。まず評価したい点は、「トップメッセージ」です。
上場企業や大手企業になるとステークホルダーの枠が大きくなりすぎて、ありきたりなメッセージになりがちな所ですが、アオイネオンの場合は、非常に等身大というか、作りすぎてない文面が好感を持てます。まさに理想的なメッセージかな。
トップメッセージのポイントは「トップが本気でCSRを進めようという空気感を持っているか」、「伝えたいキーメッセージが盛り込まれているか」の2点があると思っています。この事例でいえば、社長の本気度は伝わってくるし、トップメッセージが「リーダーシップのCSR」というワードに集約されるなど、2点とも満たしています。
あと、中小企業とはいえ、CSR委員会(CSR推進部門)を設置し10年経つそうですし、ISO26000対照表もある点はいいですね。日頃からコツコツとCSRを進めているのがわかります。「CSR特設サイト」もありますし、情報開示に積極的な部分も高評価。
社員数十人の中小企業は、まずアオイネオンをベンチマークしたらいかがでしょうか。
まとめ
正直、世界的なCSRガイドラインを起点と考えると、2社のCSR報告書の評価は厳しいでしょう。より情報を網羅すべきだろうし、改善すべき点は山ほどあります。
ただ、外国勢(海外勢)がどうあれ、CSR報告において自分たちが「何を、誰に伝えるか」が一番重要です。伝わらなければステークホルダーの評価にはもちろんつながりません。そういう意味は両社とも良質な報告書でしたね。勉強になりました。
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