統合報告書の事例と、制作現場の悩ましい課題

統合報告書

統合報告書制作

国際統合報告評議会(IIRC)による国際統合報告フレームワークが2013年12月に発行され、もうじき丸1年となります。

その前からパイロット・プログラムとしていくつか企業がすでに発行したのですが、丸1年を迎え、2015年発行の統合報告書が本格的に浸透していきそうな気配がしております。実際めっちゃ増えてます。

そんな中、統合報告書の発行は実際どの程度なのか。また統合報告書の課題・メリット・デメリットは何か。僕自身のメモがてらまとめてみます。

統合報告書制作の現状

2014年は134社以上

ESGコミュニケーション・フォーラムの『「国内レポート情報」企業リスト』によれば、統合報告書発行社数は、2012年・61社、2013年・95社、2014年・134社、ということのようです。2014年は10月末のデータというこでもう少し伸びるのかもしれません。

2010年ころから毎年1.5〜2倍くらい発行者数が増えていますが、千数百〜二千社といわれるCSR報告書発行社数を超えることはないでしょうね。リプレースがほとんどだろうから。

先日発表された、KPMGの『未来を拓くコーポレートコミュニケーション 第11回 Integrated Business に向かって -第4回IIRC年次総会の報告』という資料も興味深いものでした。

ただ、サスティナビリティとかESGもそうですが、世界とくらべて日本どうなの?みたいな議論は一旦置いておくべきかなとも思います。

世界の先進事例やレポートを見てきた関係者たちは簡単に言えるけど、現場で制作するスタッフでそれらは体系立てて理解している人間なんてごく少数なんだから。そもそもCSR報告書を作っている制作現場の人たちでさえも、CSRがよくわかっていない人いっぱいいるから。

いわゆるリサーチャー系の方は知識はあるんでしょうけど、現場の、例えば営業担当とか特に、CSRすら理解していないことが多い現状のなか、試行錯誤をし続けた企業が最終的に高評価を得られるのかなと思います。やんなきゃわからない部分だって正直ありますもん。

統合報告書制作の課題

制作現場に何社か顔出したのでその印象を。

まだまだ新しい概念だし、実施する企業数が少ないということで、製作担当会社にノウハウがあまりない、というのがあるようです。

営業力のある制作会社(コンサルティング会社)はどんどん受注しているようで、この2〜3年は業績うなぎのぼりでしょうね。実際、求人を結構かけている所もいくつかありますからね。

企業側としても同じで、制作ノウハウがないとか、IRや経営企画との連携がうまくいっていないとか、そもそも担当者が情報をキャッチアップできていないとか、そんな課題もあるようです。

他にはCSRコンサルティング会社は“CSR報告書より”の統合報告書になるし、IR支援系の企業が作ると“アニュアルレポートより”の統合報告書になりがちです。あとは、企業の担当者の好みとかもあるんでしょうけど、悩ましい課題です。

他にも具体的な課題はたくさんあり書こうと思ったのですが、あんまり書くとネタバレ(守秘義務的なアレとかね)しちゃうんで…。本とかウェブで適当に調べて下さいな。

ただ一つだけ言えるのは、コミュニケ—ションやマーケティング視点などのツール制作の基本(クリエイティブ・ノウハウ)は、手法がCSR報告書から統合報告書になっても役に立つことは間違いない、ということです。

統合報告書の事例

人気な企業はいくつかあるのですが、オムロン、ソニー、武田薬品、トヨタ、日本郵船、日東電工、ファミリーマート、三菱商事、三菱重工、リコー、ローソン、あたりのようです。

Googleのキーワードツールで調べたんで、かなり実質的なものだと思います。

発行企業については『「国内レポート情報」企業リスト』に134社書いてあるんで、調べたい方は片っ端から検索かけて、PDFでもダウンロードしてみて下さい。

まとめ

統合報告は、そうは言ってもここ数年で盛り上がってきた話で、本丸は2015年発行版からでしょうね。すでに、いくつかの制作担当会社では問合せが増え続けていて、中の人がアップアップで、「ウチはブラック企業じゃないよ」って報告書をブラックな労働環境で作っているとかいないとか…。

とはいえ、CSR報告書をすで出している企業が統合報告書を出す例の方が多いだろうし、日本全体のCSR報告書・統合報告書の発行社数が伸びるというわけでもなさそうなんですよね。

上場会社・業界大手が中心に統合報告やCSRが盛り上がっているだけで、なんかそれでいいのかなと思ったり。統合報告が盛り上がる分、ますます中小企業のCSR論は置き去りにされそうだし、CSRコミュニケーションにおいても、二極化がさらに進みそうな懸念もあります。

2015年・2016年の統合報告書はどこまで認知され、制作されるようになるのでしょうか。今後も注目していきましょう。ちなみに、今年に入って何冊か統合報告書関連の本を読んだのですが、「CSRを含めた潮流を丁寧に解説する本「統合報告書による情報開示の新潮流 」(宝印刷)」が一番よかったかな。どのフェーズの方でも読みやすいと思います。ご参考までにどうぞ。

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