女性の活躍が企業のCSRの争点となる3つの理由

女性の活躍が企業のCSRの争点となる3つの理由。

ものすごく大きなテーマだけど、2014〜2015年のホット・トピックスになると勝手に思っております。

しかしですね、この「女性活用」とか「女性の活躍」というワードは、ある意味男性的な表現なのかもしれません。だって、「男性活用」とか「男性の活躍」とか、人事戦略で聞いた事ないでしょ?そう考えると、若干気持ち悪い感じがします。

なにはともあれ、女性と経済、女性の働き方という大きく2つのポイントについて少し考えてみましょう。企業のCSRにおける「女性活用」の今後がご理解いただけるかと思います。

1、女性の社会進出

女性の社会進出をあおれば煽るほど今後も格差は広がっていく。皮肉なもんだ。ただ、そもそも昔から女性は働いていたのだし(専業主婦というのが一時期の異常な習慣だっただけだ)、産業構造の変化と先進国経済の成熟化/停滞によってその傾向は政府がなんかしなくてもますます強まるだろう。だから今後も格差は広がり続ける。
女性の社会進出は格差をあおるらしい

では、女性の社会進出は、格差を生むし、推進すべきではないのだろうか?といいますか、数字的に言えば、女性の社会進出はすでに進んでおり“数”だけみればそこまで悪くはなさそうなのです。

日本は女性の社会進出が遅れているといわれていますが、女性の就業者数は2701万人で、男性の就業者数3610万人に対して7割を超えており、それほど少ない数字ではありません。しかし賃金という点で見ると男性と女性には大きな格差があります。賃金構造基本統計調査によると、2012年の女性の平均賃金は月額23万3100円と男性の32万9000円と比較してかなり低くなっています。
女性が進出すると経済は成長するのか?

20年前ならまだしも、僕(81年生まれ)で高校生の時大学進学で、一般企業に就職する女性も多かったですから、正直、新卒の社会進出に性差は感じません。それよりは、結婚・出産・育児の期間である30代女性の話でしょうね、問題は。いわゆる「M字カーブ」の話です。

日本女性の労働力率は低くはないが、M字の左右の山の待遇格差が問題といえる。係長昇進は男女共に30歳代後半という「遅い昇進」だが、女性はそれ以前の辞職者が多い。中国都市部の企業では、雇用者・管理職・経営層の女性比率が、日韓に比べて高い。女性保護的な制度が殆ど無く、就業時間は長すぎず、継続就業者が多い。但し「男女別定年制」や「一人っ子政策」など特異な背景もある。韓国は、女性労働力率が日本より低く就業中断傾向がある。一方で女性は日本より「早い昇進」である。AA制度導入後に、就業者・管理職・経営層の女性比率は逓増している。
日本・中国・韓国企業におけるジェンダー・ダイバーシティ経営の実状と課題-男女の人材活用に関する企業調査(中国・韓国)605企業の結果

社会進出より、今の時代は社会に進出した(労働市場にのった)女性達を企業・社会はどう支援し、自分たちの業績に結びつけるかということでしょう。

制度で、女性に支援(育児休暇など)をするだけでは、企業はジリ貧です。だって、コストですから。そうではなく、女性に出産後復帰をしてもらうことで、企業にメリットって絶対あります。そこを活かせる仕組みを組み込むから、意味があるのかと。

2、ワークライフバランス

仕事と生活の調和を実現するため、企業や行政機関、労働者が目指すべき方向に関し、政府は14の数値目標を定めて進捗を図っている。2012年の在宅型テレワーカー数は930万人と、基準年の2008年から3倍近い伸びを示している。労使間協議の場を設けている事業所の割合は約6割に上り、過去4年間で1.5倍に増えている。

一方で、フリーターの数は約180万人と過去3年間おおむね横ばいで推移。若年層の雇用・生活の不安定さは解消されていない。第1子出産前後の女性の継続就業率は、正規職員では5割を超えるが、パート・派遣では2割にも満たず、不安定な立場の女性ほど継続的な就業が困難な状況を示唆している。
内閣府のワーク・ライフ・バランス調査、出産女性の就業は依然困難

拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる–経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いたのですが、働き方は多様になり、女性も男性も柔軟な制度や仕組みの中でも働けるようになってきています。

しかし、内閣府の調査でもあった通り「不安定な立場の女性ほど継続的な就業が困難な状況」なんだそうな。職場復帰を考えるなら、非正規より正規雇用のポジションが前提なのかもしれません。

友人などでも、いわゆる派遣やパートタイムの仕事をしている人もいるので、彼女らももしかしたら職場復帰は難しいのかもしれませんね。

3、女性管理職者数

内閣府「ワーク・ライフ・バランスGood プラクティス集(PDF)」、「女性部長」が多い企業はどこか?2014年版「女性部長ランキング」トップ50、などの現場のレポートもあるのでこちらもご参考までに。

女性課長は数字合わせのための各上場企業ではうなぎのぼりに増えているそうで、“女性課長”という役職は管理職か?という問題もあったりなかったりするそうな。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

僕の個人的な意見としては、女性を道具のように考える「経済成長のための女性活用」は気持ち悪いんですよ。

以前から主張しているように、女性だろうが、男性や障がい者であろうが、みんなが働きやすく、業績にもつながるような人事戦略が重要だということなんですよ。

女性を優遇すれば、他の何かが犠牲となるという仕組みでは、結局意味がありません。女性とか男性とかどうでもよくて“みんな”という考えか必要とされていると思うんですよ。

出産・育児などを含め、社会や企業がどこまで女性支援にまわれるかというのもありますが、先見の明がある人事戦略をとる企業が増えることを期待しております。

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