若年女性の貧困問題解決はCSRなのか?

世の中には、女性の働き方を支援する仕組みが整っている「ホワイト企業」なるものがあるらしい。

ホワイト企業だからってブラック要素がないわけでは決してないのですが、女性としては働きやすさや福利厚生などの“女性支援の仕組み”があるほうがいいと思うでしょう。それは何も間違いではないし、ビジネスパーソンとして、職場環境がより良いと思われる企業を求めるのは当然のことです。

で、最近ウェブで話題になっているのが「貧困女性」というワード。女性は、出産・育児を含めて、男性よりキャリア形成が難しいとされています。

メディアに出てくる「仕事も家庭も両立しています!」というスーパー・キャリア(最近はバリキャリともいうらしい)の女性は、全体のほんの一部。

ブロガーのちきりんさんがいう、“キャリアを捨てざるをえない”という「普通の門とピンクの門」の話もありますが、いびつなキャリアパスが存在するのもの事実です。

そして、キャリアを積む働き方、キャリアではなくパーソナルライフを重視した働き方、のどちらにも入れない「貧困女性」がいると。企業は「貧困女性」に対して何ができるのか。ちょっとまとめてみます。

貧困女性

Aさんのケースは典型例だ。何か一つの原因で食べるものにも事欠くほどの貧困状態に陥ることは少ない。仕事が低賃金過ぎてあまり貯金できない中失業した、虐待やDVなどがあり手元に資金のない中逃げてきた、病気や高齢の家族に援助していたら自分も共倒れに…など、いくつかの要因が運悪く重なりどうにもならない貧困状態に陥る。
若い女性が貧困に陥るワケとは? ハマると脱け出せない2つの”貧困スパイラル”

貧困状態になりたくてなる人なんていません。でも、ちょっとしたきっかけで日本でも貧困になりうる、という現実もあります。

先日書いた映画レポート「テレビ東京のCSR活動! 息子介護を追った映画「和ちゃんとオレ」で思った事」にも書いた様に、親の介護をすることになり、仕事をやめる人も。

仕事がしたくてもできない。そのような状況の人たちに、企業は何かアプローチはできないものでしょうか?

さらに深刻な状況に陥っているのが、10代20代のシングルマザーです。20代のシングルマザーのうち、およそ80%が年収114万円未満の貧困状態に置かれているといいます。

そんな中で、VTRで紹介されていた風俗店の話が衝撃的でした。風俗店で働く女性の中には、店側が提供する住まいや託児所などに惹かれて、やむなく風俗店で働くケースが多いというのです。公的なセーフティネットではなく、風俗店が提供する住居や託児所に頼るというのは、皮肉な現実と言わざるを得ません。
貧困女性のセーフティーネットとなる「風俗産業」。宿・食事・託児所付きの風俗店が増えている

ニュース番組「クローズアップ現代」(NHK)が、この貧困女性の問題を取り上げたのが、ウェブで話題になった発端です。

企業としてできるのは、制度整備はもちろんの事、従業員のニーズをまず知るべきなのかもしれません。

例えば、お偉いさん方は、自社従業員が会社に何を求めている人が多いのか知らないのかもしれません。そもそも、知ろうともしないし、そこまでして従業員の求めるものに応える必要はないと思う人も多いかもね。

しかし、レピュテーション・リスクとして「自社の女性雇用の仕組みが貧困層を生み出している」なんて叩かれることも現実的にありそうですね…。

女性のワークスタイル

貧困とは違いますが、最近気になった女性の働き方についての記事を紹介します。

仕事に全力を尽くしていれば、きっと誰かが認めて昇進させてくれる――。これは「ティアラ・シンドローム」と呼ばれ、多くの有能な女性たちが抱える思い込みであるという。経営層へと上り詰めるには、それ以上のもの――「スポンサーシップ」が必要であることをヒューレットは改めて強調する。
女性の昇進を妨げる「ティアラ・シンドローム」を解消するには

上記の記事で、女性に必要なのはビジネスの結果だけではなく、人脈も重要であるとしています。キャリアを目指す女性は必見です。日本の話ではありませんが、企業の女性の扱い方がわかるでしょう。

生涯未婚にとどまるであろう者の割合は,職業によって大きく違っています。医師などは,男性と女性の差がスゴイです。男性はわずか2.8%ですが,女性は35.9%にもなります。男性は36人に1人ですが,女性は3人に1人です。高収入ということがあるでしょうが,激務なので,家庭生活との両立が難しいという事情もあるかと。

また,ある方が教えて下さったところによると,大病院の医局などは,妊娠した女性医師へのマタハラがすさまじいそうです。仕事か家庭か。医師は,こうした選択を迫られる度合いが高い職業でいえるでしょう。生涯未婚率のジェンダー差,さもありなんです。
職業別の生涯未婚率

これは生涯未婚の話題。キャリアか、非キャリアかの二択しか存在しえないような現場がいくつもあるのが事実。組織体として、こういう課題を放置してきたのでしょう。

言わずもがな、人生において絶対結婚しなければならないということはありません。ただ、したくてもできないという人の支援が少しでも進めば、このあたりの数字が少しは変わるのかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる–経済のモノサシと社会のモノサシ』にも書いた通り、世界標準まではほど遠い、日本の女性管理職数の少なさを指摘しましたが、女性のキャリアを考える女性役員がそもそも日本に少ないのが大きな問題でしょう。

そして、企業は女性支援が“コスト”だと言っていないで、それによる業績への良い影響も考慮すべきでしょう。言い方は少々雑ですが、女性支援がコストにしかならない仕組みで企業経営をしているから、そもそもこういった話題が出てくる部分もあると思うのです。

僕としては、女性活用とか女性支援とか、なんか女性が道具みたいで気持ち悪い表現なのですが、男性も女性も障害を持つ方も性的マイノリティの方も皆が働きやすいという、人事戦略が社会的に求められています。

企業は体裁を整えるCSR活動ではなく、自社従業員に対してのCSR活動を進めることも必要だよなって思った話題でした。

あなたの会社は女性が働きやすい人事制度となっていますか?

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