CSRのメリット・デメリット
CSRのメリット・デメリットとは何でしょうか。そもそも、CSRとはどんな意味(定義)があるのでしょうか。
特に新任のCSR担当者の方には「CSRとは何ですか?」と100%聞かれますので、主に見聞きする、CSR活動におけるメリット(利点)・デメリット(欠点)を挙げてみます。
改めて考えてみると、CSRにおけるメリットとデメリットと呼ばれるものは実は逆だったというロジックも存在することに気付くこともあるでしょう。
あと、文末にCSRとは何か、という点を再考できるような、CSRの意味・定義の解説記事も紹介していますので、そちらも参考にしてみて下さい。
最終更新:2016年4月
CSRのメリット
企業価値の向上・維持
・レピュテーションリスクのリスクヘッジ
・新しい風土、価値を生み出す(イノベーション)
・品性を高めることによる、社会的評価の向上
・他社との差別化が明確になる(ブランディング効果)
・ブランドイメージの構築
・社会的責任投資(SRI)の拡大
・法令違反など、社会の期待に反する行為によって、事業継続が困難になることの回避
・資金調達の円滑化(融資が受けやすくなる)
・自治体事業などの入札が通りやすい
ステークホルダーへのアプローチ(従業員含む)
・社員のモラル育成と社会的視野の拡大
・優秀な人材のリクルートにつながる
・社員のモチベーション保持ならびに強化(ESの向上)
・重要なステークホルダーである、意識ある消費者へのPR
・自社ならびにNPOによるクロスプロモーションの機会増加と好意的なメディア報道
・従業員の採用・定着、士気向上、健全な労使関係への効果
・消費者とのトラブルの防止・削減や、ステークホルダーとの関係向上
色々なCSR関係の先生たちは、上記のようなメリットがあると言っています。すべては“やり方次第”ですが、9割がたの場合、従業員のモチベーションアップとか、イノベーションとか起きないですよね。これだけ不祥事が取りざたされる中で、従業員(特に経営層)のモラルが高まっているとも考えにくいですよね。もちろん、CSRの費用対効果が高い低いはあると思います。
また、CSRガイドラインの「ISO26000」では以下のメリット(利点)があるとしています。
ISO260000
・社会の期待、社会的責任に関連する機会(法的リスクのより良い管理を含む)、社会的責任を果たさないことのリスクに対する理解の向上によって、より情報に基づいた意識決定を促進する
・その組織のリスクマネジメント慣行を向上させる
・その組織の評価を上げ、社会的な信頼を促進させる
・組織が活動する上での社会的な認可を支える
・技術革新を引き起こす
・資金へのアクセスおよび好ましいパートナーの地位を含む、その組織の競争力を高める
・その組織のステークホルダーとの関係を強化することによって、その組織は新しい視点を経験し、様々なステークホルダーと接触することができる。
・従業員の忠誠心、関与、参画および士気を高める
・女性労働者おおび男性労働者の安全衛生を向上させる
・その組織の新規採用の能力およびその組織の従業員の意欲を高め、勤続を奨励する能力にプラスの影響を与える
・生産性および資源効率を向上し、エネルギーおよび水の消費を減らし、廃棄物を減らし、価値のある副産物を回収することによって、節約を行なう
・責任ある政治的関与、公正な競争、および汚職をしないことによって、取引の信頼性および公正性を高める
・製品またはサービスに関する消費者との紛争の可能性を予防し、減少させる
経済広報センター
1、顧客満足の向上から売上げの向上につながる
ステークホルダーである「顧客」の満足度向上に向けた取り組みの実施とその取り組みの点検を徹底することで、顧客満足度が向上し、結果売上げの増加につながっていく。
2、従業員満足の向上で会社が活性化する
企業にとって従業員というのは大切なステークホルダーである。従業員のニーズを様々な角度で調査し、従業員の満足度が向上すると、愛社精神も高まり、そこから顧客満足や業務改善などの様々な効果につながる。
3、コンプライアンス体制の強化が信頼を得る基本となる
不祥事により、社会からの信用を失い、顧客離れ・売上減少となる。更に企業には積極的な情報開示が求められる。ネガティブ情報であっても、迅速に開示することは、社会からの信頼を得る第一歩といえる。
4、社会の信頼が厚くブランド価値が上がると、株主・投資家からの指示が得られる
コンプライアンス体制の強化とともに社会貢献活動などの実施などを、積極的に情報開示し、地道にCSR活動を継続することが、株主や投資家からの支持を得ることにつながる。
5、CSRの推進で企業理念を再確認し、従業員に周知・共有できる
経営ビジョン、品質方針、スローガンなど様々な方針の一部が風化していたり、第一線で働く従業員に浸透していない企業もあるが、こうした企業にとっては、CSRの推進が多くの方針を体系的に整理するチャンスとなる。
6、コンプライアンスに対する体制の確立、仕組の再確認によりコンプライアンス違反を防ぐことができる
コンプライアンスの体制確立により、従業員が社内ルールを遵守し倫理的に行動するよう促す。お客様や従業員、社会からも愛される信頼のある企業になることで、当たり前のことを当たり前にする風土も醸成される。
7、社内の部門間の縦割りの壁が無くなり、全社一体となる
多くの企業では、部門間の対立が発生し、全社最適が困難である。CSR推進の際には、部門を横断したプロジェクトの発足により、意見交換が活発にされ部門間の壁が壊れ全社最適が実現できる。
8、従業員の意識が変われば会社も変わることができる
経営トップの考えを、分かりやすく繰り返し伝え、部門横断的な全社プロジェクトの発足など、多くの従業員を巻き込んで考えさせる環境を整備することで、従業員の意識は変わる。多くの従業員の意識が変われば会社も変わることができる。
9、リスク対応を強化することができる
CSRのテーマ別の取り組みは、個別テーマの強化のみでなく、そこから事前に情報を察知し、重大なリスクの対応漏れを防ぐことにもなる。
10、ステークホルダーからの高い評価により企業価値が上がり、企業経営が安定する
CSRの取り組みによりステークホルダーから得た評価は、更なる継続と改善によりその評価レベルは高くなる。ステークホルダー、社会から「欠かせない企業」と認められれば、企業経営は安定する。
(CSRと広報より引用)
CSRのデメリット
・コストがかかる
・メリットがないという機会損失
こんなもんかな。
あとは、CSRのデメリットと言いますか、「効果測定ができない」とか「トップの理解が得られない」とか大きな課題がありますが、これらも、根本を理解すれば、案外課題解決に動けたりします。
だって、「効果測定ができない」という人たちは、大抵、“効果測定できない”CSRのプロセスを用いているからです。また、社員目線のCSRと社長目線のCSRはおさえるべきポイントが異なったりするわけでして…。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
すみません、情報操作というわけではないのですが、CSRコンサルタントだけに、メリットの項目が多すぎましたかね…。
で、本来は、グローバル・ルールとして存在感を増していくCSRですので、メリットだろうが、デメリットだろうが、すべき部分はしっかりとすべきなんですよ。
CSRで差別化するとか、CSRの基礎部分ができて初めて行えるもので、CSRにおける経営の枠組みがないうちにしようとするから大抵失敗に終わるんじゃないのですか?マジで。
最近は、企業価値向上だけではなく、SRIや社会貢献債関連の視点で「株主価値の向上」という点に注目も集まりつつあるようです。僕は「儲かるCSR」のコンサルティング業務の中で、「CSR活動のコストの削減+売上向上」という、お荷物にならないCSRの仕組み作りを提案・構築するというものがあります。
「そもそも我々のCSR活動は誰のために行っているのか」、「そもそもCSRは何のためにするのか」という2点だけでは、CSRにメリット・デメリットと比べながら、確実に明文化しておきたいポイントとなるでしょう。
CSRはCSVとか戦略的CSRとか社会貢献ビジネスとか色々な表現はありますが、まずは、根本をしっかり押さえることが重要っす。
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