SDGsの課題と問題とビジネスモデルと

SDGsの課題と問題

SDGsによるビジネスモデルの変化

SDGsによりビジネスモデルが大きく変わった企業もありますが、多くの企業はSDGsによって、バックキャスティングができるようになったりはしていません。これは本当に難しい課題/問題なのです。

MDGs時代から10年以上この界隈を見てきていますが、2020年代のSDGs推進のポイントは「パートナーシップ」や「サプライチェーン/バリューチェーン・マネジメント」かなと思うようになりました。

そこで本記事では、現状のSDGsの課題をまとめて、さらに一歩進むためのポイントを紹介します。2020年度のSDGs推進のヒントにしてみてください。

SDGsとビジネスチャンス

SDGsもですが、そもそも社会課題解決を自社事業だけで完結できることはまずありません。国単位で見ても同じです。日本だけが国家予算を全額SDGsに振り切ったとしてもSDGsは達成できません。全ての国が動がなければ、達成できません。誰も置き去りにしない、を国レベルでさえできないのに、一企業だけでできるはずかないのです。

そこで必要になるのは「パートナーシップ」(サプライチェーン/バリューチェーン・マネジメント)です。SDGsに関連する開示で、サプライチェーンに言及しない企業がいればそれは100%ウォッシュです。

SDGsを推進する人たちは、やれ数百兆円のビジネスマーケットがあるとか、イノベーションが起きるとか煽りますけど、特にイノベーションなんて9割の会社は起きないわけですよ。そもそも大多数ができることを革新とは呼びません。めったに起きない革命的なことだからイノベーションなわけですから。あまり、煽りすぎず、さすがに冷静さがなくなってきているようにも見えます。

本来のビジネスモデルとしては「社会問題解決をビジネスチャンス」にすべきなのに、「SDGsがビジネスチャンス」だと思っている人が多いのが問題なのです。社会問題の解決を収益化するんじゃなくて、SDGsをダシに口先だけで稼ごうとするから、手段と目的が逆になり、意味がわからなくなるのです。ちなみに、SDGsの17のゴールは、2030年に仮に達成できたとしても、社会が続く限り永遠に追求すべき課題です。環境や人権に対するアプローチが100%思い通りにいくことは100%ありません。ですので、色々と本末転倒になってしまっているのが残念です。

SDGsとCSV

SDGsをCSVのように経済的視点で見るのはよいですが、それだけでは構造的に不十分であり、通常のビジネスとは違う社会的側面が担保されるアプローチによって補完される必要があります。そもそも、CSRとは、企業の経済活動の中で外部不経済というか、色々な問題が起きてきたので“経済活動におけるビジネスの社会性向上”が論点だったはずです。それを、また経済合理性オンリーに戻してしまうと、結局何も変わってないじゃん、となるわけです。

SDGs推進活動において経済合理性を考えてはいけない、とは申し上げません。企業である以上、営利組織なわけで、CSRにおける経済合理性を無視することはできません。問題はバランスの話です。そもそも企業のビジネスロジックは経済的側面が強いため、SDGsで改めて経済性を主張する意味はほとんどありません。

SDGsは極端にいえば「私たちの地球と全人類を救おう」という趣旨のものです。しかし、企業を含むすべての人々が、日々の行動にSDGsを考慮した意思決定や行動をとれているかというと、それは考えられません。70億人いれば、70億人の考え方があるわけで、一つの価値観で縛ることはできません。(逆に、だからSDGsに価値があるとも言えるが)

これらの事実をふまえて、企業はSDGsに対して何ができるのかを考えなければなりません。あくまでSDGsは「経済的なつながり」ではなく「社会的なつながり」を作り出す活動に通じるものです。経済活動を重視するのであれば、そもそもSDGs推進をする必然性がありません。

そうそう、経済的価値を重視すると抜けがちなのは「利他主義の考え方」です。経済性って主語が自社なのです。自社に経済的リターンがあることを経済性があるとします。当たり前ですね。そのため経済性を突き詰めると、社会やステークホルダーの利益になることを、過小評価するようになります。これはCSR的にはNGな考え方です。

SDGsと当事者意識

SDGs推進において、企業ではなくSDGsに興味がある個人に当事者意識を持ってもらおうと、ワークショップやカードゲームを展開する事業者もありますが、当然、参加する人は全人類の人口からすれば、まったくわずかな人数でして、5年たった今でも根本的な解決には至っておりません。

なぜ一般市民の関心が高まらないのか。この理由は単純で多くの場合「個人のメリットがないから」です。企業でも個人でも、自らにメリットがある取り組みならば喜んで行動を起こします。しかしメリットがなければ「時間があればやる」「お金があればやる」と優先順位がさがり、結局、誰も何も行動が起こさなくなります。

では関心をもってもらうにはどうしたらよいか。一つはSDGsという全世界・全人類という超広範囲な概念自体ではなく、SDGsの個別目標に関心を持ってもらえる施策として捉え直すのです。SDGsは、影響範囲でいえば国単位で対応するようなものであるため、個人がSDGsそのものに関心をもつことはそもそも難しいので、そこを加味して活動をすると。

大事なのもう1回言います。SDGsはそもそも国単位でさえ対応が難しい問題であり、個人がちょっと活動をしたところで、SDGsに貢献することは不可能なのです。「ひとりひとりの意識を高める!」ことは悪いことはではありません。私も個人でできることは、多分、そのへんの人よりもたくさんしていますが、社会的インパクトはあまりにも小さいものです。

ですので、SDGsの主体を個人と考えた時には、「所属企業(組織)でのSDGsを実践しましょう」という、個人が組織を使ってどれだけSDGsに貢献できるか、という視点が重要になります。自分の行動が呼水として、より大きな組織をいかに動かせるか。こう考えると、個人のSDGsへの行動は大きな変化を生む可能性がでてきます。別に例えるなら、自分が1万円を寄付するのではなく、その1万円を使って1万円を寄付する人を10人集めたほうが、成果は大きくなるわけです。

ここでは個人を例にしましたが、企業でも同じです。自社で100万円寄付するより、業界団体にかけあい、競合他社を含めて1,000万円を寄付したほうがいいに決まってますから。この利害関係者をどれだけ巻き込めるか、というパートナーシップの考え方が、SDGsに関しては、個人でも企業でも必要になってきます。SDGs関連の企業ランキングばなかり気にしている場合ではありません。

SDGsによるゲームチェンジ

SDGs達成にはイノベーションが必要とされています。結局のところ“頑張っています”という今のレベルでは世界の課題を変えられませんよ、と。今していることで課題解決できていないから、別のやり方を考えて実践しましょうという話なのです。

ビジネスモデル自体に、ゲームチェンジやシステムチェンジが求められており、そのためには何に重点を置いて変革を進めるべきかを分析することが不可欠なのです。企業のSDGs推進を少しでも知っている人は「SDGsの認知は広がったが行動がともなっていない」と感じているはずです。

そもそも、SDGsは国連で各国政府がコミットした目標であり、実施の第一義的責任は政府にあります。営利企業が見返りなしに、SDGs推進のために数十億〜数百億円負担してくれ、って言われても出さないでしょ? そんなものですよ。本当に進めるなら政府がリーダーシップとって進め、その一部を企業が担う、くらいなのが現実です。「理想がダメ」なのではなく、相当な工夫がないと、SDGsは企業が単体でどうこうできるレベルの話ではありません、という話です。

SDGsとサプライチェーン

SDGs推進は自社だけで完結できるものではなく、サプライチェーン全体(社会全体)で進めなければ成果はでません。自社のみ、もしくは自社に近い領域で完結できる通常のビジネスモデルとは異なり、サステナビリティはその範囲(バウンダリ)が非常に大きいからです。逆に、サプライチェーン全体の共通した目標としてSDGsはもってこいです。すべての企業にとっての大義名分になりえる唯一無二の概念ですから。

だから私は、SDGs推進が実効性の面でどれだけできるかは、SDGsと事業マッピングの中にサプライチェーンの概念があるかないか、で変わると思っています。思うもなにもそれしかないでしょうが。CSRもですが、SDGs推進は特に自社が主語になっている時点でアウトなのです。

SDGsは全世界における全体最適のツールです。本来は企業単位の部分最適では使えません。SDGsは“世界の最大公約数”的な側面があり、個別にローカライズしにくい部分があるのは否めません。残念ながら日本人の多くにとっては「飢餓をゼロに」は他人事なのです。

だからこそ、SDGsはビジネスモデルに新しい意識や視点を提供してくれるのです。ワークショップやゲームをやったりして当事者意識を持とうって言っても、その場ではその気になっても、日々の生活ではそんなの感じられなくて当たり前なのです。極端な話、飢餓問題に直結している経済状況や国政などから辿っていくほうがイメージがしやすかったりします。私は、社会問題は文脈を知っている人だけが当事者になれると思っていますので。

まとめ

もうSDGsは「経営の選択肢」ではなく「経営の前提」になっています。つまりSDGsのメリット/デメリットを議論している場合ではないと。

SDGsは2030年そしてそれ以降の社会のために設定されたものです。SDGsに関するソリューションそのものもは、「持続可能」かどうかの観点が重要となります。状況の変化に合わせてもちろん途中で見直し、より良い結果を求め柔軟に対応していくことも、同時に求められます。

2003年の「CSR元年」以降に社会人になった世代を私は「CSRネイティブ」と呼んできました。いわゆるミレニアル世代がこれにあたります。最近は2015年以降に社会人になるZ世代を「SDGsネイティブ」という呼び方も増えています。もう学校の教科書や試験にSDGsが出題される時代なのです。

2020年3月以降、新型コロナウィルスの猛威によって本格的な景気後退となった時に、どれだけの企業が継続的にSDGs推進ができるかが運命の分かれ道です。CSRもSDGsも、景気の拡大とともに広がった部分もあるので…。特に、人を集めるビジネスの企業は、相当売上が落ちているので、4月からはSDGs推進のプロジェクトが保留される例も増えると思います。さてさて、どうしたものか。2020年は難易度の高い決断が必要なようです。

関連記事
SDGs企業経営の最新動向と最新調査2020
CSR/SDGs広報に必要な3つの考え方
SDGs「2030アジェンダ」から企業経営を考える


【PR】エネルギー調達による「コスト削減 + 企業価値向上 + CSR推進」の一石三鳥の取り組みについて説明会やっています <詳細はこちら

戦略的なCSR情報開示をお求めなら、私にご相談ください。


CSR/サステナビリティ情報開示を専門分野とし、経営戦略まで踏み込んだコンサル型の開示支援を行なっています。成果にこだわる情報開示をお望みの方、CSR関連報告書やCSRウェブサイトの制作・運用でお困りの方は、是非ご相談ください。

安藤光展のプロフィール
CSR情報開示の「第三者評価プログラム」

CSR/サステナビリティに関する勉強会・研究会を主催しています。これからCSR推進活動をする初級担当者、他社担当者と情報交換したい方、組織のCSR評価を一段階上げたい方、などにおすすめです。

日本最大級のCSR担当者コミュニティ「サスネット」
企業評価および情報開示を学ぶ会員制勉強会「サステナビリティ評価研究会」