SDGsと企業経営の数値

先日「CSR/ESG/SDGs/サステナビリティのトレンド具合を調べてみた」という記事を書きましたが、世界的に最もSDGsが盛り上がっている国である日本ですが(最も成果に貢献しているわけではない)、政府や官公庁もここまでプッシュされると、日本企業としては進めざるを得ない状況ではあります(欧米はSDGsより社会インパクト重視の傾向あり)。

最近はESG投資の文脈でもSDGs関連銘柄が増えてきていますし(本当に貢献度が高いか疑問ですが)、日本ではSDGsにどこまで対応できるかは、大きなポイントに一つになりそうです。

というわけで本記事では、最新の調査を引用しながら、改めてSDGsの進捗や、SDGsを企業経営に組み込むヒントなども紹介したいと思います。企業担当者で諸々の企画書を作っている方は必見です。

紙メディア

日本では一般新聞でも見ない日はないというレベルで浸透してきているSDGs。しかし、現段階ではグローバルにみると“日本だけ”の現象のようです。まず、日本でトレンドを知る一つにトレンドに敏感なメディアがどれだけそのワードを使ったを調べることで、おおまかな社会の流れを知ることができます。

調査ツール「G-Search」を使って「タイトルに“SDGs”を含む」で検索してみると、過去30年間は「6,294件」で、直近1年では「3,821件」でした。SDGsというワードは2015年9月に登場しましたが、2019年で過去4年間の半分以上の露出があったとしており、2019年にはそれなりに流行ったと言えるでしょう。2019年で一気にSDGsという概念が広がってきていて、2020年はまさにその変革の過程にいるというのがご理解いただけると思います。

ちなみに「CSR」は、過去30年では「11,067件」で直近1年で「368件」でした。年間ではSDGsの1割にも満たない掲載数であり、新聞・雑誌からすればCSRなどはもう“死語”とも言えます。当ブログも運営10年目を機に、今年からブログ名を、CSRからサステナビリティに変えました。

このブログの読者はすでにSDGsを何百回と目にしていると思いますが、2019年は本当にエポックメイキングなほど浸透した年となったようです。今年はそれを超えるのかピークアウトしてしまうのか。気が向いたら定点調査してみます。

SDGs調査

UNIC(国際連合広報センター)

SDGs進捗レポート2019

CCC

・エコ・環境問題に関心がある人は8割
・エコやSDGsを意識していると思われる企業・ブランドは? 1位「トヨタ自動車」 2位「サントリー」 3位「イオン」

エコ活動・SDGsに関するアンケート調査

イノビオット

・あなたはSDGsという言葉を聞いたことがありますか?「ある」=25%
・SDGsという言葉を聞いたことがある母親の約70%が、子どもをSDGs活動に参加させたいと思っている

【SDGs調査レポート】70%の母親が「子どもに将来、ビジネスで活躍してほしい」と回答する一方で、これからのビジネスで重要となるSDGsの認知度は25%と低い結果に

クロス・マーケティング

・大学生・院生の【名称も内容も知っている】は3.8%から11.8%と約3倍、【内容は知らないが名称は聞いたことがある】は17.0%から36.1%と約2倍増加した。
・大学生・院生にとって、企業や団体のSDGsの取り組み有無も就職先の検討に影響することがわかった。

SDGs・サステナブル商品の認知度は1年で増加 企業のSDGsの取り組み有無は大学生・院生の就職先検討に影響も

企業広報戦略研究所

・一般生活者のESGの認知は「知っている」(「詳しく知っている」「聞いたことはある」計)が18.3%と昨年15.0%よりも3.3ポイントわずかに伸長しました。同様に、SDGs認知率も「知っている」が24.2%と昨年15.7% より8.5ポイント伸長しました。
・投資を考える際、企業のESGに対する取り組みをどの程度考慮するか、という質問に対して、「とても考慮する」(17.8%)、「少し考慮する」(44.3%)で、6割以上(62.1%)がESGを“考慮する”と回答しました。

2019年度 ESG/SDGsに関する意識調査

商工中金

・「考え方を経営に取り入れている」が全体の6.5%、「今後考え方を取り入れる予定あり」は10.4%だった。
・取り組みのメリットは「コストを削減できた」(42.3%) 、「企業イメージの向上」(39.0%)、「法規制順守意識の向上」(38.1%)、「経営者・従業員の満足度向上」(22.5%)という回答が多かった。

中小企業の経営課題に関する実態調査 ~BCP・SDGs対応・シェアリングエコノミーを巡る実態~

ぶぎん地域経済研究所

・県内企業のSDGsの取組状況は、全産業で「すでに実施している」が7%、「具体的な検討を進めている」が5%とSDGsの取組をしている企業は約1割にとどまっている。「具体的な検討に至っていない」が49%と半数にのぼっており、「全く知らない」が15%、「SDGsという言葉は聞いたことがあるが、内容は知らない」が12%、「関心はない」が12%と、4割の企業はSDGsに対する意識や関心度が低い状況にある。

SDGs(持続可能な開発目標)の取組調査

JTB総合研究所

・SDGsの認知度については、外国人が84.2%と高かった一方、日本人は29.8%でした。また、外国人回答者の100%が「SDGsに共感する」と回答しましたが、日本人は85%に留まっています
・外国人は、「必要だと思う」が96.7%とほぼ全員がその必要性を認識しているのに対し、日本人は75.2%にとどまりました。また、必要だと思う理由について、外国人は73.7%が「社会問題や環境問題について知る、解決につなげたいから」だったのに対し、日本人は39.4%でした。

SDGs達成に向けた旅行・観光分野の役割 ~「SDGs達成に貢献する旅行」への意識に海外と日本で大きな差~

日本リサーチセンター

・SDGsの認知度は、「内容まで知っている」はわずか4%、「言葉は聞いたことがある」との合計は15.5%にとどまる。
・民間企業がSDGsに取り組むことに3割半ばが好感を持っているが、「その企業の商品・サービスを購入したい」は1割強、就職や投資先への意向は3%ほどと、自分ごととして捉えていない様子がうかがえる。

SDGsに関する一般生活者の認知・意識調査

PR Times

某イベントで発表されたPR Timesの調査によると、プレスリリースで「SDGs」の単語を含むものが、2019年に急激に増えてたとのこと。全リリース内では1.7%程度。(PR Times 2019年検索ワードランキング)「SDGs」の検索は91位→24位と大幅に伸びているが、リリース割合は変わらず、SDGsに積極的な企業が思いつかない人が8割という認知レベルだった。

日本能率協会

・国連が提唱しているSDGsの認知状況を尋ねたところ、「知っている」が51.5%、「ある程度、知っている」が25.4%となりました。昨年度よりも比率は高まっており、産業界における認知は年々広がりつつあるようです。
・SDGsに沿った活動の取組み状況については、「具体的な目標を設定して取組んでいる」が14.2%、「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿った活動を行っている」が26.7%となり、両者を合わせると、4割超の企業がSDGsに向けた取組みをしているという結果が見られました。
・一般社員については、「あまり認識されていない」が48.0%となり、「まったく認識されていない」にいたっては14.8%と昨年度よりも増加しています。

当面する企業経営課題に関する調査  日本企業の経営課題2019調査結果

埼玉りそな産業協力財団

・「SDGs」という言葉を聞いたことのある企業は約7割、内容まで把握している企業は約4割、対応中・対応予定企業は約1割にとどまる。
・SDGsについて「言葉は聞いたことがあるが未対応の企業」に取り組まない理由を聞いた。「対応できる人材がいない」が最も多く、次いで「社内の認知度が低い」「何をどう取り組んでいいかわからない」が続いた。

県内企業のSDGsへの取り組みについてのアンケート調査

いよぎん地域経済研究センター

SDGsという言葉を「知っている」と回答した企業は53.1%と半数を超えているが、 「すでに取組を行っている」(5.7%)と「取組を検討している」(4.7%)は合わせて 1割程度にとどまる。 
社会貢献活動を実施している企業は、約9割に上る。社会貢献活動の内容はSDGsのゴールに該当するもので、SDGsを意識的に取り組むかどうかの違いはあれ、大半の企業は何らかの形ではSDGsに関連する取組を行っている。


企業のSDGsへの取り組みに関するアンケート調査結果

ソーシャルプロダクツ普及推進協会

何らかの社会的課題を解決するソーシャルプロダクツを日頃から購入している人の内、その商品がSDGsの達成に結び付いていると認識している人は10%未満。
SDGsの達成につながる商品について知っているか質問したところ、「どういうものか知っていて、購入したことがある」人は3.7%、「どういうものか知っているが、購入したことはない」人は10.1%、「聞いたことはあるが、よく知らない」人は19.0%、「聞いたこともなく、全く知らない」人は67.2%という結果が得られました。

第7回「生活者の社会的意識・行動に関する調査」

なぜここまで普及したか

2016年から2020年まででこんなにSDGsが普及したのは、以前も書きましたが答えは一つで「金になるから」です。アジェンダ・前文にあるとおり「これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。」なので、企業はトリプルボトムラインでの倫理的な経済活動を推奨されているわけです。

今では、日本政府も相当なプッシュ具合です。政府側に相当マインドの高い人がいるのでしょうか(界隈では色々と噂を耳にします)。資本主義の世界ではお金が動けば企業が動きます。SDGsが良くも悪くもお金を動かすということを知った人から、いろいろな形でSDGs推進に加わっています。これ自体は当然の流れです。企業としてもリスクと機会の両面アプローチできる便利なツールという側面もあります。

ただし、現状では、SDGsで儲ける、というよりは、すでに儲けている企業がSDGsを始めただけという話もあり(実際はほとんどがそれ)、オポチュニティ側面だけでSDGsにのっかるのは、個人的にはあまりおすすめはしません。

SDGs対応はいい。でも知って欲しいのは、SDGs先進企業と言われる所は、SDGs登場の2015年以前から、ビジネスプロセスの中で、課題解決に取り組んでいた企業なわけです。結局は実効性のあるCSRをできないと、当然SDGsに貢献しないわけです。

まとめ

2020年になり、SDGs達成まであと10年となりました。この10年は「行動の10年」なんて言われていて、紐付け・マッピングから一歩進んだ取り組みが、企業に求められています。

ですので、この5年は認知度調査などが世相を表していた側面もありますが、今後は認知が上ろうが下がろうが、行動して結果出した企業が評価されるという“正直者が報われる”世界にやっとなってきたかなと。

いずれにしても必要なのは、行動ですね。これは5年経ってあらためてわかりました。認知度調査などを紹介しておいて申し訳ありませんが、認知度が高くても低くても、企業がSDGsに取り組むのは必然であり、とにかくやってみましょうよ、という話です。上場企業であれば夢の「SDGs銘柄」を目指してがんばりましょう!

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