CSRやSDGsで本当にイノベーションは起こせるのか

CSRとイノベーション

イノベーション。あなたはこの単語についてどのようなイメージがあるでしょうか。

SDGsが2015年に登場してから、CSR/ESG文脈でもイノベーション創出の話をよく聞くようになりました。事例は少ないものの、CSR文脈でも実際にイノベーティブな取り組みもあるわけで、そこを目指したくなる気持ちはわかります。また、多くの業種でビジネスモデルが飽和し頭打ちになっている状況で、生き残りをかけてイノベーション創出に投資するのは、正しい選択でも言えるでしょう。

できるのであれば毎日でもイノベーションを起こしたいものですが、そもそも革新的なビジネスモデルはそんな簡単に生まれません。そんな簡単に生まれたらそれはイノベーションというより「カイゼン(改善)」というべきでしょう。

イノベーション論が専門というわけではありませんが、最近乱暴なロジックも見聞きするようになったので、私なりの考え(多分世間的にも正しいロジックだと思ってます)をまとめたいと思います。

イノベーションの定義

イノベーションの定義は、十人十色といいますか、イノベーションの“成功”の定義と同様に難しいとされています。

辞書的な意味では、イノベーションの定義を「革新」「刷新」と訳されることが多いでしょうか。あと、いくつかの辞書によればインパクトの規模(社会全般に大きな影響を与える変化・開発)も、定義に入るようです。もともと経済学や経済発展の分野で用いられており、昨今では広義の意味で活用され、一般的なビジネスシーンでも見聞きするようになっています。言説としては、シュンペーターやピータードラッカーなどの名前がよく挙がる(wikipedia参照)ようです。

CSRの文脈で使われる時は、革新的なビジネスモデル創出のような意味で登場します。CSRには非常に重要な要素として「リスクと機会」があるのですが、CSV的な発想といいますか、機会創出の場面が多い印象です。リスクマネジメントのカテゴリでイノベーションという単語は、あまり見たことがありません。

CSR的な活用では、どちらかというと「オープンイノベーション」や「ソーシャルイノベーション」「パラダイムシフト」に近い概念だと思います。何かを生み出すというより、何かを大きく変えるというか。

イノベーションは「ステークホルダーの役に立とう」「社会に大きな影響を与えよう」という目的のもとにビジネスを突き詰めた“結果”として起こることであって、売上拡大や企業成長といった下心が動機で「イノベーションを起こそう」といってる人や企業には難しいんじゃないかな、ということを感じています。

よくある手段と目的の入れ違いで「イノベーションを起こすことが目的化してしまう」ことがあります。本来はイノベーションの先にある、社会・ステークホルダーへの価値創出が優先されるはずなのですが、多くの場合は自社の利益創出に優先順位があるようにも感じています。

SDGsやCSRでイノベーションが起きている例がゼロとは言わないけど、イノベーションを目的や手段にしたらだめです。アジェンダセッティングをゼロから勉強しなさいって感じ。そもそもイノベーションは結果であり手段や目的ではありません。また、イノベーションの種は、組織的対応からではなくアグレッシブな個人から生まれると思っている派です。

SDGsとイノベーション

SDGsを推進することでイノベーションが起き、新しいビジネスモデルが生まれると本気で考えている人がいて(ごく一部は実現できると思いますが)、さすがにどうかなと感じてしまうこともあります。

SDGsのフレームワークを使うことで社会に貢献できるアイディアは色々でてきます。でもそれを実現に向けて、何年も結果がでなくても、継続的な投資をし続けてイノベーションを起こせるのかというと、現実的には難しいです。赤字プロジェクトは、事業整理がセオリーですから。また、イノベーションが本当に起こせるのであれば、SDGsがあってもなくてもすでにやってるって。

SDGsを進めるにあたりかかるコストが年間約770兆円(5〜7兆ドル)とされ、年間約1,300兆円(約12兆ドル)を新規で生み出すと試算されてるけど、私は、それらの多くはSDGsがあってもなくてもうまれたマーケットだと考えています。

SDGs支援企業は市場創出の金額で煽るけど、現実的には年間で770兆円も集まるわけがないし、コストを利益で先食いしたら、結局いままでのビジネスモデルとかわらないし、ましてはイノベーションなんて……。どうしたらいいのでしょうか。難しいですね。

アウトサイドイン思考

短期的(長くても中期)な結果を求められる上場企業で、本当の意味でのサステナブルなイノベーションは難しいのではないでしょうか。海外ではイノベーションは「イノベーションを起こしたベンチャーを買収する」で成立させる場面もたくさんありますよね。それならかなり現実的な感じがしますが、自前主義が好きな日本企業だと…。

イノベーションでさえ、サステナブルな社会では「手段」に過ぎません。イノベーションがビジネスの手段となってしまい、社会・ステークホルダーへ貢献するという目的を見失っている大企業があるのも事実です。極端な例でいうと、組織として目指している事業目的を達成できるのであれば、イノベーション以外の手段でもいいと。技術的にイノベーティブであっても、価値創出や課題解決と繋がらなければ意味がないです。

「イノベーションを起こそう」として「実際にイノベーションが起きた」例はあまりみませんが、社会課題や生活の不便さを解決しようと新しいことをした結果としてイノベーションが起きた例はいくつもあります。イノベーションに必要なのはアイディアではなく、そもそものアジェンダセッティング(課題設定)と地道な活動でしょう。R&Dの要素がCSRにあると以前から言っていますが、これも行きすぎると、イノベーションの目的化を助長しかねません。

これはCSRも同じです。ほとんどの企業は「CSR活動をすることが目標」という状況になっていますが、本来は自社の企業理念の実践や、ミッション・ビジョンを達成する手段の一つがCSR活動であり、それ自体が目標であってはならないということです。

まとめ

素人ながらイノベーションについてまとめてみました。CSR文脈における使い方を再考していただける視点は提供できたかなと思います。

SDGsなどでは特にイノベーションだといって、一時期のCSVみたいな経済合理性を説く人もいますが、一旦落ち着いて、その方法論や成果を今一度見直したほうがよいでしょう。

そして、本来のCSRのスタイルであるべきアウトサイドイン思考で、よりイノベーティブな視点でビジネスモデルを俯瞰できるようになると、ロジックや成果がまとまりやすくなるのかもしれません。ご参考までに。

関連記事
プラスチック製ストローは本当に悪者なのか
なぜCSRにアジェンダセッティングが必要なのか
CSRにおけるブランディングとパーパスの関係性



■お知らせ
・国内最大級のCSRコミュニティ「サスネット」次回は(7/24) 詳しくは→【こちらをクリック】