CSR報告書の未来は、統合報告ではなく会社案内にある!?

ステークホルダーエンゲージメント

統合報告ではなく会社案内なのはなぜ?

CSR報告書って、結局、誰が読んでいるんですかね?

実際、一部の企業では名称は別としても、CSR報告書が実質的な会社案内(コーポレートレポート)のようになっている企業も、現時点でいくつもあります。

そして、ステークホルダーエンゲージメントの視点でみると、CSR報告書はアニュアルレポート(財務情報)ではなく、会社案内(総合企業情報)に統合されたほうが、目標を達成しやすいのかもしれない、というわけです。特に未上場企業などは。

純粋なCSR情報は、統合報告ではなく会社案内に掲載されるべき、ということですね。詳しくまとめます。

CSR情報の軸をどこにむけるか

最近、よく考えるのが「CSR報告書は誰に見せるものなのか」という点です。

で、最近至った1つの仮説は「会社案内を見せる人・見たい人」なのではないか、ということです。

会社案内(企業情報)は、誰がよく見るでしょうか。上場会社であれば、投資家は間違いなく財務情報を含めた企業情報をチェックします。取引先の人は、まれにチェックするでしょう。

という考えでいくと、CSR報告書の読者ニーズを考えれば、アニュアルレポートとの統合ではなく、会社案内との統合のほうが、エンゲージメントが生まれやすいのかもね、と。

「情報網羅性」でいえば、非財務情報は財務情報と統合されることで、企業情報としての一貫性とストーリー性を担保できます。しかし、それはあくまで“情報の枠組み”でカテゴライズしただけの話で、ステークホルダー視点と言い切れません。

だとしたら、企業が情報発信するメディアの読者層(ステークホルダー)から、CSR報告書のあり方を考えた方が、ステークホルダーエンゲージメントにつながるじゃん?という単純な発想です。

ですので、CSR情報はIRに寄っていくのではなく、いわゆるコーポレートコミュニケーションに統合される、と。

ステークホルダーエンゲージメント

この仮説が正しいとすれば、逆説的に、CSR報告書はより“企業の総合情報を掲載した冊子”(ウェブコンテンツ)になっていくのでは、と。

国内外のCSR評価が高い日本企業はせいぜい100〜200社程度。あとは“ドングリの背比べ”レベルの差です。そういう企業はCSR報告書を「誰のために、どんな情報を届ける」ものにする必要があるのか。外部の評価機関を気にすることなく、純粋にステークホルダーを向いた時に、何を基準にすべきなのか。

よく言われる企業の主要ステークホルダーは「投資家・従業員・取引先・顧客・地域社会」の5つです。

「投資家」は、一部がESG全般やガバナンス項目をチェックするのに統合報告書(CSR報告書)を見ているとされています。一部といっても、色々な調査データ見る限り20%もいなそうなくらい。

「従業員」は、自社のCSR情報に関して潜在的なニーズはあると思います。あと、“未来の従業員”(就活生・転職希望者)も。特に労働慣行とかは気になりますよね。

「取引先」は、与信とかで軽く見るくらい?最近はCSR調達などの影響もありチェックする企業もあるとは思いますが、ほとんどチェックされない気がします。

「顧客」は、BtoC企業であれば意識されると思いますが、BtoB企業の場合、取引先と重複する場合も多く、件数としては少ないのかも。消費財メーカーのCSR報告書を見て、日用品を選ぶ人なんて日本に何人いるんですか?ってレベルでしょう。(僕はチェックしますが…)

「地域社会」は、NPOとか自治体などを指すステークホルダーですが、この層もはほとんど見ないでしょうね…。そもそも、ソーシャルセクター、パブリックセクターと言われるカテゴリーでセクターが違うので、肌感覚がわからないと思います。

となると、現実的には読者としてニーズがありそうなのは「株主・投資家」と「従業員」であり、いわゆる企業間のコーポレート・コミュニケーションというより、人を軸としたステークホルダー・エンゲージメントとしての役割がメインになるのかもしれません。

だからBtoC企業が顧客にCSR情報を届けたい場合は、CSR報告書ではなく別のメディアで、さらに別の切り口で見せないと届かないのでは、とも言えるかもしれません。

企業情報の中でもマルチステークホルダー向け情報でもあるCSRに関しては、情報の「量」が「質」を越えることはありません。例えば、CSR報告書の投資家向け情報がどんなに充実していても、消費者には関係ない情報ばかりで、エンゲージメント構築は不可能だからです。

まとめ

まとめますと、「CSR報告書と会社案内の主要読者層は近いのではないか」と、「ステークホルダーでは、投資家や従業員がメインになるのではないか」という2点の話でした。

まだ、色々な人の話を聞いたり、僕なりにまとめている最中ですが、最近そう思います。

もちろん、CSR報告書は十人十色でありまして、「上場しているか未上場か」、「大手企業か中小企業か」、「BtoBかBtoCか」、「製造業か非製造業か」などの場合分けも考慮すべきであり、唯一の絶対のCSR情報開示方法はないと思われます。

また、近い将来、現在の統合報告書が価値創造ストーリーを含めて“会社案内化”する未来も、おおいにあり得ます。

CSR情報は今後、企業情報の一部として存在感が増していくのは間違いありません。そうなった時に、ステークホルダーのニーズに答えられるメディア戦略が実施できているかがポイントになります。

というわけで、特にオチはありませんが、「CSR報告書は、近い将来、会社案内に統合されるかも!?」という大胆未来予想のお話でした。

というか、統合報告書のトレンド感がなくなる2018年くらいの次のトレンドって感じで、まだまだ小さな兆しなので、気付いているCSRの専門家すら皆無だと思いますけど。

関連記事
CSRの中心概念でもある「ステークホルダーエンゲージメント」とは
CSRとステークホルダー・エンゲージメントと幸福度の関係性
ISO26000から学ぶ、CSRコミュニケーションの7つのポイント
ISO26000から学ぶ、信頼性向上とレピュテーションリスク
CSR報告書を作ったあとすぐにすべき3つのこと


執筆者安藤光展/CSRコンサルタント
1981年長野県生まれ。CSR/SDGs経営の専門家。著書は『創発型責任経営-新しいつながりの経営モデル』(日本経済新聞出版社、共著)ほか多数。日本最大級のCSR担当者コミュニティ「サスネット」主宰。

戦略的なCSR情報開示をお求めなら、私にご相談ください。


CSR/サステナビリティ情報開示を専門分野とし、経営戦略まで踏み込んだコンサル型の開示支援を行なっています。成果にこだわる情報開示をお望みの方、良いCSR報告書・CSRウェブサイトの制作会社がいないとお困りの方は、是非ご相談ください。

安藤光展のプロフィール
CSR情報開示の「第三者評価プログラム」

CSR/サステナビリティに関する勉強会・研究会を主催しています。これからCSR推進活動をする初級担当者、他社担当者と情報交換したい方、組織のCSR評価を一段階上げたい方、などにおすすめです。

日本最大級のCSR担当者コミュニティ「サスネット」
企業評価および情報開示を学ぶ会員制勉強会「サステナビリティ評価研究会」