日本企業の統合報告書とESG情報開示の最新動向(2015)

統合報告書

統合報告書とESG情報開示の最新動向

統合報告書の浸透が着々と進んでいるみたいですね。

KPMGより「日本企業の統合報告書に関する調査2014」というレポートが公開されていたので、引用しながら僕のほうでも解説いたします。また、ESG情報開示と個人投資家に関する調査も引用し、最新動向をまとめます。

期待を良い意味でも悪い意味でも越えるようなデータではありませんが、現状の把握とエビデンスということで。

日本企業の統合報告書に関する調査

142社のうち、東証1部の企業が130社、売上ベースでみると1千億円以上の会社が85%と、比較的大規模な企業が取り組んでいることがわかります。
統合報告書の発行に伴い、75%の企業がCSR報告書を発行しませんでした。これは、統合報告書の発行を契機に統合報告書に一本化した企業が多いためとみられます。一方で25%の企業は、より詳しいCSR情報を提供するCSR報告書やデータブックを発行しています。

そもそも株主・投資家を意識した報告書ですので、上場会社の大手が多いようです。BtoC企業も発行しているし、CSR報告書や会社案内などとの棲み分けも今後どうなるのでしょうか。

統合報告書も報告書なので「誰にどんな情報を届けるのか」という考え方が必要です。いわゆる、コミュニケーションにおける“ステークホルダーの特定”ですね。

142社のうち、59社(42%)が、統合報告書においてビジネスモデルの説明をしています。IIRC統合報告フレームワークにおいても、ビジネスモデルの説明は統合報告書における重要な構成要素だと述べられていますが、実際に少なくない企業が開示を試みていることは、ビジネスモデルの説明が企業活動を体系的に説明し、価値創造の全体像を示すために有効であることが理解されつつあることを 示しているものと考えられます。

例の「オクトパスモデル」の話ですね。そのまま書く必要もないのですが、事業プロセスの明確化は、企業価値を示すのにとても重要な項目ですので、今後ブラッシュアップが急速に進む気もします。

参照:日本企業の統合報告書に関する調査2014

投資家を意識したESG情報の開示

開示:59.5%(574社)
非開示:33.9%(327社)
予定:1.8%(17社)
検討中:3.6%(35社)
その他:1.2%(12社)
合計965社
(出所:CSR企業総覧2015 東洋経済「第10回CSR調査」業種別集計結果)
投資家を意識したESG情報を開示している会社は59・5%の574社

東洋経済の調査によれば、全体的には意識レベルが高いものの、各社のレベル感はわからないとのこと。ちょっと意識しているレベルなのか、IRや経営企画の部門担当者も入ってリレーション実務をしているレベルなのか。

上場企業であれば少なからず、投資家・株主の動向は気になるでしょうし、CSR報告のステークホルダーとして最重要と言ってもいいグループだと思います。

ただ、これも良くある話ですが、「統合報告書」って、本当に投資家サイドにニーズはあるんですかね?見てないという人も多いし、ソーシャルマインド(社会貢献意識)が高い人が多いわけではないし…ね。これは、IRのエンゲージメントを深めていく時に意識差が埋まっていくと考えればいいのかもしれません。

個人投資家にとっての統合報告書

次いで「統合報告書」に絞って尋ねたところ「知らない」46%、「聞いたことがある」40%。そして、少ないながら「内容についても知っている」との回答が14%あり、関心が高い個人投資家も少なからず存在することがわかった。
また、「統合報告書を読んだことがありますか」との問いには「読んだことがある」26%、「読んだことがない」74%と回答。関心はあるものの読まれるようになるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
更に「今後、投資しようとする企業の統合報告書を読みたいと思いますか」との問いには「あるのならば読みたい」と80%が回答。個人投資家の投資先企業に対する潜在的な関心の高さがうかがえる。「特に読む必要はない」は20%だったが、先の設問で「統合報告書を知らない」との回答が46%あることを勘案すると、今後の報告書の認識が高まることによる変化が期待される。
「統合報告書」の認知度は低いものの、8割の個人投資家が「読みたい」と回答!

ジャパニーズインベスターの調査レポートです。予想通りといえば予想通りの結果です。お世辞にも現状よく読まれているとは言えないし、CSR報告書みたいに浸透するのに10年とかかかるのかな…?

社会的意識が高い個人投資家もいるようで、今後は機関投資家でなくても統合報告書の閲覧が増えていきそうですね。「CSR報告書はほとんど読まれない」と良く聞きますが、統合報告書は“読者と目的”が明確で、存在の認知が広がれば、CSR報告書より“有効な”CSR情報発信ツールになる可能性はあります。

CSR活動だと「ステークホルダーの特定」(バウンダリー)をするのに、コミュニケーションとなるとステークホルダーの特定をしないとか、愚の骨頂だと思うのですがいかがでしょうか?

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まとめ

投資家サイドが統合報告書の「気候変動への対応」の項目を読んで、即、買いに動くかというとそうでもないと思われますが、非財務情報のトータルとしてESGというくらいなのである程度重要視することは間違いないでしょう。

また、今年もコーポレート・ガバナンス不在による大型企業不祥事が起きて、ESG情報の必要性の認知も広がったでしょう。

今後、統合報告書関連のランキングや賞(アワード)なども、調査会社やシンクタンクから発表されていくと思いますが、「そもそも統合報告書ってなんで必要なんだっけ?」と自問自答できる仕組み作りに、注目が集まりそうです。

元々、CSR/ESGに興味を持っていなかった投資家も多いでしょうし、まずは市場が盛り上がるというより、機関投資家を含めた投資サイドへの概念の浸透のフェーズかと思われます。僕も引き続き動向を注視してまいります。



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